開発好明 ART IS LIVE ―ひとり民主主義へようこそ

都内美術館初となる開発好明(1966-)の大規模個展「開発好明 ART IS LIVE―ひとり民主主義へようこそ」展を開催します。開発はそのキャリアの最初期となる1990年代より、日常生活や社会現象など身の回りの出来事への関心を起点に、コミュニケーションを内包、誘発する表現活動を継続してきました。

《ART IS LIVE》2024年 撮影:谷岡康則

その形態は、絵画、写真、パフォーマンス、インスタレーションの制作のみならず、日々のライフワーク、学校や地域でのワークショップ、毎年39日をアートの記念日とする「39(サンキュー)アートの日」の発案・提唱など多岐にわたります。その中でも継続的に行っているプロジェクトでは、開発の活動の背景にある哲学を垣間見ることができます。自分や友達に書いた手紙が1年後に届く《未来郵便局》、「誰もが先生・誰もが生徒」を合言葉に授業が行われる《100人先生》、地下スタジオに様々なゲストを招く《モグラTV》は、郵便、教育、マスメディアといった既存のフォーマットを模しながらも、メッセージの発信者と受け手の間に等価の関係があることを示唆します。府中市の学校から始めたワークショップ「ドラゴンチェアー」では、こどもたちが、他人におもねることなく自己表現した椅子を数十メートルにも連ね、ドラゴンを出現させました。2011年には作家仲間や友人たちとともに、阪神淡路大震災で被災した西日本から東日本大震災と福島第一原発事故の被災地まで義援金を集め移動するチャリティー展覧会「デイリリーアートサーカス」(2011201220132014)を実施しました。被災地域の人々との関わりあいや現地での体験はその後、《政治家の家》(2012-)、失われてゆく地域言葉を収集する《ことば図書館》など様々な福島でのプロジェクトへと繋っていきました。これらは個々の小さな声に向き合い淡々と自分にできることを継続する、開発流の「寄り添うアクティヴィズム」とも言えます。

  • 《未来郵便局》「ヨコハマトリエンナーレ2011」特別連携プログラム「新・港村〜小さな未来都市」(BankART Life III)での展示風景 2011年

  • 府中市美術館開発好明公開制作 共同制作プロジェクト「ドラゴンチェアー」2008年

このように社会構造や制度、共同体、出来事への個人的な介入という身振りは、開発の実践の大きな特徴の一つとなり、その姿を故・池田修氏(元BankART代表)は「ひとり民主主義*」と呼びました。一人(ひとり)と、皆の参加を前提とする民主主義という言葉は一見相反するように思えるかもしれません。しかし一致団結した運動体ではないからこそ、個々がお互いに反応(リアクション)することができ、それが連鎖的に人々を巻き込むことで活動(アクション)が生まれていくのです。そこに開発の表現の醍醐味があるといえるでしょう。
こうした開発の膨大かつ多彩な表現活動は、美術館での収蔵や展示が前提とされていないものも多く、その経歴を俯瞰する機会は30年以上のキャリアの中でも限られてきました。本展では、日々の出来事や社会の変化に生身で向き合ってきた開発の作品・プロジェクトから約50点を紹介し、「ひとり民主主義」の世界に来場者を歓迎します。

* 池田修「ひとり民主主義」『開発好明』BankART19292014 年より

  • 《発泡苑 in ウィンタートゥーア》「The light art exhibition in Winterthur」展 (ウィンタートゥーア/スイス)での展示風景 2007年

  • 《政治家の家》福島県南相馬市 2012年

作家プロフィール

  • 作家ポートレート

  • 開発好明(かいはつ・よしあき)

    1966年、山梨県生まれ。1993年、多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了。アジアン・カルチュラル・カウンシルの助成を受けて、ニューヨークやベルリンに滞在し、制作・発表を行う。2001年第4回岡本太郎現代芸術賞 優秀賞。2004年ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展参加。毎年3月9日をアートの日とする「サンキューアートの日」企画、震災支援活動「デイリリーアートサーカス」主宰。近年の主な個展に「中二病」(2016年、市原湖畔美術館)、「あれこれ開発工場」(2019年、箱根彫刻の森美術館)、「開発再考Vol1,2」(2019、2022年、ANOMALY)、主なグループ展に越後妻有大地の芸術祭(2006-)、市原アートミックス(2014-)、「あそびのじかん」(2019年、東京都現代美術館)。

見どころ

  • ドクメンタ9でのパフォーマンス 1992年 撮影:生井かずしろ

  • 〇ここでしか見られない初期活動の資料
    ドクメンタ9でのゲリラパフォーマンス、1995年から1996年にかけて日本を巡った「365大作戦」など初公開のものを含む意欲的な初期活動の写真、映像、実物資料の数々を展示します。

  • 《都会生活者のオアシス》ZOOMゼクセルアートスペースでの展示風景 2000年 撮影:谷岡康則

  • 〇ちょっと変わった町、開発タウン
    1年後に届く郵便局、お金を取引しない銀行、普通じゃない授業を受けられる教室など、一風変わった施設が集まったエリア。疲れたらフェイクファーの公園で休憩を。

  • 木場のダメパンダ

  • 〇LIVEな芸術体験
    日々作家が展示室で何かをしています。(不在の時もあり)
    日々何かが起こり、来場者がその目撃者、あるいは一部になる可能性があります。100人のユニークな講師陣による、ユニークな授業を会期中100回行う「100人先生」をはじめとして、東北でのプロジェクトや39アートの日の関係者を招いてのトークイベント、ライブパフォーマンス、ワークショップなどを展示室内や講堂で日々多数行い、動きと変化、出会いと対話が起こる場を創出します。

基本情報

会期

2024年8月3日(土)-11月10日(日)

開館時間

10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

休館日

月曜日(8/129/169/2310/1411/4は開館)、8/139/17、9/24、10/1511/5

会場

東京都現代美術館 企画展示室 3F

観覧料

一般1,500円(1,200円) / 大学生・専門学校生・65 歳以上1,100円(880円) / 中高生600円(480円) /小学生以下無料

※(  ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※ 毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。

主催

公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

助成

公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団

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