共時的星叢―時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし

台湾映画の異才が編む、台湾近代芸術

このたび東京都現代美術館では、1930年代の台湾で結成されたモダニズム詩のグループ「風車詩社」を描いた映画を起点に、近代の台湾と日本を多様な文化芸術をとおして見つめ直す「共時的星叢―時を共にした星たち 越境する芸術のまなざし」展を開催いたします。近代台湾の美術作品約200点、資料約600点に日本の作品約100点を加え、無数の星のようにそれらの関係性が交錯する空間のなかで、現代の視点から近代を再考することを試みます。

日本統治期に台湾へのシュルレアリスム導入を試み、日本語で詩作した数人の詩人をめぐる歴史的な営みを軸に、地域や時代、ジャンルを横断する多様な作品を散りばめた映画『日曜日の散歩者』(2015年、日本公開2017年)。この映画は、固定された物語を提示せず、観客がそれぞれの視点を見いだせるものでした。本展では、その監督である黄亜歴(HUANG Ya-li ホアン・ヤーリー)をゲストキュレーターに迎えます。
本展では、この映画をめぐる思索や編集手法を展示空間へと展開し、美術作品や文芸、映画、音楽、演劇、舞踏などの資料をモンタージュのように組み合わせ、6つの章を構成します。さらに、そこに黄亜歴のディレクションによる映像や反射する素材、迷い込むような動線が加わり、展示空間自体が、鑑賞者をも含めた複数の関係性の交差を生みだす装置として機能します。
近代の台湾と日本に確かに存在した個々の営みは、固有の光を宿し、たとえ隣り合っておらずとも、時を共にし、星座のように関係性が結ばれていたといえるでしょう。本展では作品同士はもちろん、わたしたち自身の身体や視線をも内包した、複雑で多様な関係が結ばれることで、既存の語りや単線的な歴史観から距離を置くことを目指します。その空間のなかで近代の作品や資料と出会うとき、それらは単なる過去の断片としてではなく、現在の経験として立ち現れ、わたしたちのまなざしそのものを問い返す契機となるはずです。

  • 陳澄波《嘉義公園一景》1934 個人蔵

  • 藤島武二《台南風景》1933 神奈川県立近代美術館蔵

  • 楊三郎《巴黎小姐》[巴里の女] 1932 楊三郎美術館蔵

  • 東郷青児《超現実派の散歩》1929 SOMPO美術館蔵
    ©Sompo Museum of Art, 26012

  • 陳澄波《綠面具裸女》[緑の面をかぶった裸婦] c. 1929–1933 個人蔵

  • 許深州《青嵐》1953 桃園市立美術館蔵

  • 塩月桃甫《ロボ(Lubuw)》1946以降 桃園市立美術館蔵

みどころ

台湾近代美術を大規模に展観する初の機会
台南市美術館、台北市立美術館、国立台湾美術館、高雄市美術館、国立台湾図書館など、台湾の15館以上の美術館・博物館および個人コレクションより、絵画・彫刻・版画・写真作品約200点に加えて、資料約600点を紹介します。
出品作家は、黄土水(1895–1930HUANG Tu-Shui ホアン・トゥシュエイ)、陳澄波(1895–1947CHEN Cheng-po チェン・チェンボー)、李梅樹(1902–1983LI Mei-shu リー・メイシュ)、何徳来(1904–1986HO Te-lai ホー・テーライ)、林玉山(1907–2004LIN Yu-shan リン・ユイシャン)、郭雪湖(1908–2012KUO Hsueh-hu グオ・シュエフ)、洪瑞麟(1912–1996HONG Rui-lin ホン・ジュイリン)、黄早早(1915–1999HUANG Tsao-tsao ホアン・ヅァオヅァオ)、陳夏雨(1917–2000、CHEN Hsiayu チェン・シアユー)、荘世和(1923–2020、CHUANG Shih-ho ジュアン・シーホー)など、近代の台湾美術を考える上で重要な作家が名を連ねます。この規模で台湾近代美術を日本で紹介する機会は、本展が初となります。

台湾の気鋭の建築家UxUスタジオによる、複数の関係が立ち上がる空間設計
本展の空間設計は、台湾を拠点に活動する建築家、陳冠宏(CHEN Kuan-Hung チェン・クァンホン)と陳映竹(CHEN Ying-Chu チェン・インジュウ)が2013年に設立した「UxU Studio」が手がけます。反射する素材を活かし、関係そのものを生み出す構造として設計された空間により場全体がインスタレーションとなり、作品を「見る」ことにとどまらず、その関係のなかに入り込むような体験が生まれます。 

ジャンルを横断する約600点の資料群
本展では、展示の半数以上を占める多様な資料群も大きな見どころです。当時の台湾と日本の双方で出版された書籍や雑誌、作家同士の交流を示す書簡、メモやアルバムなどの個人の資料をはじめ、当時の文学、音楽、レコード産業、舞踏、演劇、工芸などに関する資料約600点を展示します。これらは、単に作品を補完する資料としてではなく、近代における芸術文化の営みを形づくる複数の要素として、作品とともに星座を構成します。また、台湾の原住民族*に関わる資料も重要な位置を占めます。日本による統治政策や人類学的調査のなかで分類・収集されてきたこれらの資料を、本展では他の作品や資料とともに配置することで、あらためて現在の視点から捉え直します。
*台湾では、漢民族が台湾に移住してくる以前から台湾に住む人々を「原住民族」と呼びます。漢語の「先」という言葉には「既になくなってしまった」という意味が含まれるため、台湾では「先住民族」と呼ばれることはなく、本展でも台湾での呼称を尊重し、「原住民族」と記載します。

ゲストキュレーター

黄亜歴(HUANG Ya-li ホアン・ヤーリー)
キュレーター、映画監督。映画とキュレーションを横断する実践を軸に、歴史的な作品、資料と現代の感覚との対話を創出し、アジア近現代史における「忘れ去られた」文化的接点の再発見と再構築に取り組む。2015年の監督作『日曜日式散歩者(Le Moulin)』は台湾のアカデミー賞といわれる金馬奨で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。また、東アジア前衛運動の研究をもとに、展覧会「共時的星叢 : 〈風車詩社〉與跨界域藝術時代」(2019年、国立台湾美術館)を企画し、関連書籍でも高い評価を受ける。

基本情報

会期

2026年9月5日(土)~12月13日(日)

開館時間

10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

休館日

月曜日(921日、1012日、1123日は開館)、9月24日、10月13日、1124

会場

東京都現代美術館 企画展示室 1F/3F

観覧料

一般2,000円(1,600円)/大学生・専門学校生・65歳以上1,400円(1,120円)/中高生800円(640円)/小学生以下無料

※(  ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットでMOTコレクションもご覧いただけます。ただし、9月5日~9月18日は展示替えのためご覧いただけません。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。

主催

東京都現代美術館、本木工作室有限公司

特別協力

台南市美術館、台北市立美術館、国立台湾美術館、国立歴史博物館、創価美術館、桃園市立美術館

助成

台湾文化部、台湾外交部

特別協賛

アプライド・オプトエレクトロニクス、株式会社SGC

協賛

中国信託商業銀行、東京スター銀行、台新新光フィナンシャルホールディングス

後援

公益財団法人日本台湾交流協会

関連プログラム

9月5日(土)開幕記念シンポジウムを東京都現代美術館 講堂にて開催予定。本展企画者や台湾の研究者が登壇予定です。
ほか、会期中にギャラリートーク、シンポジウムなどのプログラムの開催を予定しています。
参加方法・詳細は当館ウェブサイトで順次公開します。

同時開催・同時期開催の展覧会

展覧会一覧を見る

これまでの展覧会をみる