ルウィットのアイデアに触れるー手話通訳を介した担当学芸員との鑑賞会
3月7日(土)に「ソル・ルウィット オープンストラクチャー」展を会場に、手話を主要なコミュニケーション手段とされる方を対象とした「手話通訳を介した担当学芸員との鑑賞会」を実施し、4名の方にご参加いただきました。また、補聴援助を必要とされる方には、ロジャーネックループ(学芸員が着用したマイクの音声を受信するための機械)をご用意しました。
鑑賞会は、展覧会を担当した学芸員の解説を聞きながら、作品をじっくり鑑賞し、対話を楽しむかたちで行われました。当日の様子をご紹介します。
鑑賞会が始まり、学芸員のあとに続いて展示室を進んでいくと、目の前に大きな壁面が現れました。学芸員は壁面の前のスペースで立ち止まり「ただのグレーの壁だと思いませんでしたか?」と参加者に投げかけました。学芸員の言葉の通り、少し離れた位置から眺めると、グレーの模様が描かれているように見えます。何が描かれているのか確認しようと壁面に近づくと、そこには鉛筆で描かれた無数の線が見えてきました。
これは《ウォール・ドローイング #46 垂直線、非直線、非接触、最大密度で均一に分散し、壁全体を覆う》という説明文のようなタイトルのつけられたウォール・ドローイングです。
実は、この長いタイトルはルウィットからの「指示」でもあります。ルウィットは、作品そのものではなく、むしろ、作品が形になるまでのアイデアやプロセスを重視していた作家で、代表作であるウォール・ドローイングのほとんどは、ルウィットの指示をもとに、別の人物によって描かれてきました。タイトルが作家の残した「指示」であるという解説に、長いタイトルに戸惑っていた参加者はうなずきながら耳を傾けていました。
続いてこちらは《ウォール・ドローイング #770 カラー・インク・ウォッシュを塗り重ねた非対称のピラミッド》の前での様子です。
この作品は、展示されている他の作品と比べて、鮮やかな色で構成されています。青い背景の上に、それぞれ異なる色で塗られた三角形が5つ並んでいるので、多くの色を使っているように見えるかもしれません。しかし、実際に使われているのは青・赤・黄・グレーの計4色です。「これらの色を使い、どのように三角形が描かれたと思いますか?」と学芸員が参加者に尋ねると「混ぜ合わせた色を壁に塗った」「実は粘土が使われているのでは?」「水に染料を溶いて塗った」など様々な意見があがり、その場の全員で会話を楽しむ様子が見受けられました。その後、学芸員から、壁面で一色ずつ塗り重ねて制作されたことが明かされると、参加者は壁面をじっくりと観察し、色の重なりを味わっていました。
鑑賞会は終始和やかな雰囲気で行われ、時間が経つにつれて自然と会話が生まれ、参加者は学芸員に質問や感想を伝えながら鑑賞を楽しんでいました。また今回の鑑賞会では、鑑賞をより深めるために、参加者に事前に展覧会をご覧いただいていたことから、その際に気になった作品を全員で鑑賞する場面もあり、参加者からは「案内人がいることで、内容が分かりやすくなり、話を聞く面白さがあると思いました」といった感想をいただきました。
その他、展示室での様子
また、鑑賞会の序盤では、ルウィットの残した指示でもある長いタイトルに困惑していた参加者も、展示室を進むにつれて自らタイトルを確認し、描かれている内容と見比べるなど、ルウィットの考え方との距離が縮まっていく様子が印象に残っています。
今後も、今回のような手話通訳付きのプログラムなど、多くの方に「現代美術のおもしろさ」を伝える機会を整えていきますので、ぜひ、お気軽にご参加ください。(R.T)
