美術館をより身近な場所にー病院訪問学級との作品鑑賞
当館では、多くの病院訪問学級と作品鑑賞を行っています。鑑賞は、ご来館いただき対面で行うこともあれば、児童・生徒のみなさんの状態に合わせて、オンラインを介して行うこともあります。今回は、東京都立墨東特別支援学校病院訪問つばさ学級(実施日:2026年5月28日)と東京都立小平特別支援学校武蔵分教室の病院訪問学級(実施日:2026年6月9日・7月3日 *2病院を対象に別日程で実施)と行った作品鑑賞の様子をご紹介します。
まずは、東京都立墨東特別支援学校病院訪問つばさ学級の様子をお伝えします。今回の鑑賞は、みなさんにご来館いただき、対面で行いました。全員初めての来館ということで、鑑賞を始める前に、学芸員から現代美術館や現代美術について、簡単な説明がありました。その中で「現代美術には、絵や彫刻だけでなく、様々な表現のものがあり、なかには形のないものも作品だったりする」という話があがり、“形のない作品”が展示されているという中庭へと向かうことになりました。
中庭に到着すると、隅の方に足跡にも耳のようにも見える模様が施されているプレートを発見しました。これは鈴木昭男の『点 音(おとだて)』という作品で、プレートに乗って耳を澄ませ、周囲の音を味わうことができます。この作品は中庭以外にも館内、敷地内の複数箇所に設置されていますが、中庭では作者の鈴木の奏でる音も聴くことができます。聴こえた音を「ぴゅんぴゅん」と声でまねしたり、音から連想したものを共有しながら鑑賞を楽しみました。
中庭での鑑賞を終え「MOTコレクション はじめて、びじゅつ」を鑑賞するために、コレクション展示室に向かうと、様々な表現の作品が立ち並ぶ部屋に到着しました。そこには絵画や写真、白い何かが上からドロリと流れているような立体作品、そして、道端で目にするようなフェンスが展示されていました。子どもたちはどの作品にも興味津々! その中でも、白い何かが流れているように見えた、金氏徹平の《White Discharge(建物のようにつみあげたもの)#4》を特に熱心に鑑賞していました。
作品をよく見つづけていると、ぱっと見ただけでは気がつかなかった構造や素材にどんどん気がついたり、白色の部分を見て「雪が積もっているみたい」と話す子もいました。その後も、いろいろな作品を鑑賞し、冒頭の学芸員の話にあった“様々な表現の作品”との出会いを楽しむ時間となりました。
続いて、東京都立小平特別支援学校武蔵分教室の病院訪問学級の様子をお伝えします。当日は、オンラインを介して作品鑑賞を含んだ授業を行いました。授業では、コレクション展示室でのライブカメラを用いた鑑賞をはじめ、美術館紹介やエリック・カール展の紹介、さらに学芸員の仕事についての話まで、幅広い内容を扱いました。
授業の初めに行った美術館紹介では、クイズや画像を織り交ぜたスライドを使い、作品や館内施設について紹介しました。また、実際に美術館に遊びに来ているような気分を味わってもらえるように、正面入り口から長いエントランスを進み、コレクション展示室へ向かう順路をたどるように紹介しました。
最後に、作品を鑑賞するときのポイントを確認すると、画面は展示室のライブ映像に切り替わりました。いよいよ作品鑑賞が始まります。
現地にいるスタッフが展示室全体をゆっくり映すと様々な作品が見えてきました。「気になる作品はありますか?」と投げかけると「フェンスが気になる」と教えてくれた生徒さんがいたので、スタッフが指示のあったフェンスの全体像を映し、少しずつ近づいてみることに。
近づくと、金網の部分にペットボトルや球体が挟まっていて、これらを見た生徒さんからは「水が入っているみたい」「水色の部分もある」といった反応がありました。スタッフが「これは普通のペットボトルではないんですよ、何でできていると思いますか?」と尋ねると、すぐに「ガラス!」と素材に気がついた生徒さんもいたようです。
壁に並んでいる作品が気になると声があがった際は、そちらの方をカメラで映し鑑賞しました。作品から少し距離をとって全体を映すと、たくさんの写真が展示されていることや、それらの写真に近づいて見てみると、どの写真にも「白色のものが写っている」という共通点を発見しました。ほかの作品も、子どもたちの反応に合わせて、見る位置や角度を変えながら、実際に現地で鑑賞しているような視点で鑑賞しました。
エリック・カール展の紹介では、展覧会を担当した学芸員が、エリック・カール自身が色を塗ったり、模様をつけたりして制作したオリジナルの紙に焦点を当て、その紙が作品のどの部分に使われているのかを表現や技法などについて触れながら解説しました。続けて、仕事について紹介する場面では、学芸員を目指したきっかけや、やりがい、楽しいことや大変なことについての話がありました。
当日、生徒さんたちと直接コミュニケーションをとる機会は少なかったものの、画面越しに素直な反応が聞こえてきたり、後日いただいたアンケートから、授業を楽しんでいた様子を伺うことができました。中には「元々、芸術には興味があったけど、更に知りたくなりました。美術館に行ってじっくり考えたい」といった感想もありました。
今回ご紹介した2校と行った作品鑑賞は、児童・生徒のみなさんに楽しんでもらえるように、事前に先生方と打ち合わせや下見、電波状況の確認などを重ねてから臨みました。今後も一人ひとりにあった方法を工夫して、美術館をより身近に感じてもらえるような取り組みを続けていきたいです。(R.T)


