2026年09月10日(木)

美術館で、夏の夜に“涼”をひろう

ギャラリークルーズ

暑さが続く8月の金曜日、夜間開館の時間帯を活かして「美術館で道草を ~夏の夜、涼をひろう~」と題したプログラムを開催しました。
(開催日時:87() 18:0019:3014() 18:0019:30

「道草」をするように目的地へ急ぐことなく、いつもなら見過ごしてしまうものに目を向けながら、美術館をゆっくりと巡る本プログラム。今回は「涼」をテーマに、温度だけではない、さまざまな感覚から夏の美術館を味わっていただきました。

まずはエントランスから、館内にある「涼を感じるもの」を探してみます。手のひらで壁に触れてみたり、少し立ち止まって空気を感じてみたり。「冷たい」「そうでもない」といった身体の感覚に意識を向けながら、普段は気に留めることのない館内の温度の違いを探していきます。

続いて、屋外の石畳を通りながら向かったのは、「水と石のプロムナード」。水紋の広がりを観察したり、足元や空気、湿度の違いを感じたり……。「涼しい」という感覚を、温度だけではなく、音や風、触れたときの感触などから探していきます。

そして、寄り道をしながら向かったコレクション展示室では、「涼しく感じる作品」をそれぞれに探してみました。同じ作品を見ても、感じる「涼しさ」は人それぞれ。氷やアイスクリームのように見えるものもあれば、無機質な質感を感じるもの、「分断」や「背筋が凍る」といった印象を受けるものもあります。作品を自由に受け止めることで、自分だけの「涼しさ」を見つけることができました。

今回のプログラムでは、普段は作品鑑賞を目的に訪れることの多い美術館を、少し違った目線から歩いてみました。

  • たくさん来ているのに“気がつかなかった”、“目にとまっていなかった”ことが多くありました。
  • 美術館そのものを散歩してめぐると、新しい視点にたくさん出会うことができました。

このような参加者の声からも、知っていたはずの場所に、まだまだたくさんの「道草」の余白が残されていることが感じられます。8月7日には、エントランスでフルートとチェロによるミニコンサートも開催されていました。館内に響く楽器の音や、夏休みの子どもたちの声。作品だけではなく、その日に美術館に流れていた音や人の気配もまた、その夜だけの風景の一部になっていました。

気づけば、外はすっかり陽が落ちていました。スタジオに戻り、開館30周年にあわせて作成したドリップコーヒーを味わいながら、ゆっくりと振り返りの時間を過ごします。立ちのぼる香りや、温かい飲みものの味わいを感じながら、約60分の「道草」を少しずつ日常へと戻していきました。

参加者からは、

  • “涼しい”に対して気温からしか感じたことがなかったです。質感・音・触った感じ……。涼はいろんなところに落ちていると気付けました!
  • 仕事終わりの時間にゆったりと過ごすことができて、とても良い時間でした。心の余裕が生まれたと感じています。
  • 日々の喧騒から離れてのんびりとした時間を過ごすことができた。


といった声が寄せられました。また、こんな感想も。

  • 「涼をひろう」という切り口が一つあることで、来たことのある場でも楽しみ方や味わい方の幅が広がるな〜というのが新発見でした!
  • 展示目的だけではなく、公園のような感覚で図書室やカフェなどで過ごすのもいいなと想像が広がりました。
  • 一緒に道草をしてくれる方がいたから、今まで気づかなかった美術館の楽しみ方に気付くことができました。


美術館に来るとき、私たちはつい「作品を見る」という目的に向かって歩いてしまいます。けれど、少しだけ歩みをゆるめてみると、そこには建物の壁や床、空気の流れ、音、光、温度、人の気配など、様々なものが存在しています。

「涼」をひろう、という小さなきっかけが、いつもの美術館を少し違った姿で見せてくれたのではないでしょうか。暑い夏の日々を過ごす中で、効率や目的から少し離れて、ただゆっくりする。一人で過ごしてもいいし、誰かと感じたことを分かち合ってもいい。そんな「一息つく場所」としての美術館の可能性を、改めて感じることができました。(M.A

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