2026年07月01日(水)

それぞれの見方でじっくりと―想像から広がる鑑賞体験

ミュージアム・スクール

新年度が始まり、5月に入ってから、学校の団体鑑賞での来館が増えてきました。今回は、都立文京盲学校のみなさんが来館してくださり、2つのグループに分かれ、屋外の作品と「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」を鑑賞しました。(実施日:2026515日)

様々な見え方の生徒さんがいるため、見えにくい生徒さんには貸し出し用タブレット端末を使って鑑賞していただきました。(バリアフリー / アクセシビリティ

まずは、屋外での様子をご紹介します。屋外では2つの作品を鑑賞しました。1つ目はアンソニー・カロの《発見の塔》です。

この作品は、様々な形の鋼の板が組み合わさってできています。素材の質感を確かめるため、作品に触れながらぐるりと一周してみると、アーチ状になっている場所や、4つの階段も見つけました。これらの階段はのぼったときに、それぞれ異なる場所にたどり着く設計になっています。今回は特別にスタッフ立ち会いのもと、気になった階段から塔にのぼってみることに。

「階段の幅が違う!」「ここはのぼりにくいかも」と新しく発見したことを共有しながら塔にのぼり、上部から見える景色を味わいました。

2つ目は鈴木昭男の「点 音(おとだて)」という作品。これは美術館内や敷地内の複数箇所に設置されていて、足跡や耳のようにも見える模様が施されたプレートに乗り、周囲の音に意識を向ける体験ができる作品です。今回は中庭で体験することにしました。

中庭にあるプレートの上に一人ずつ乗って耳を澄ませると「飛行機の音」「鳥の鳴き声」「先生・友達の声」が聴こえてきました。普段は意識することのない“日常の音”に耳を傾けたあと、スタッフの案内で“特別な音”も聴いてみることに。実は中庭では「点 音」の作者である鈴木の奏でる様々な音を聴くことができます。

その音を聴くために壁面の方に近づくと「ポン」という音が聴こえました。「何の音だろう?」とスタッフが尋ねると「ピンポン玉の音」「桶を置いた時の音」など、音から連想したものをたくさん共有してくれました。その間にもまた別の音が鳴り「これはクジラの鳴き声みたい!」「これは……」と、中庭に響く“特別な音”に耳を傾けながら、自由に想像を膨らませていました。

屋外での鑑賞を終え、いよいよ「エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし」の会場へと向かいます。展示室に入り、最初に目に飛び込んできたのは『はらぺこあおむし』の表紙の原画です。作品を守るために設置されている結界に注意を払いつつ、近くでじっくり鑑賞すると「きれい」「絵本で見ているときよりも色味が濃い気がする」といった声が聞こえてきました。

さらに、展示室を進み『はらぺこあおむし』以外の様々な絵本の原画や、絵本の構想段階で作られるダミーブックも鑑賞しました。特に『だんまり こおろぎ』のダミーブックを鑑賞した際に「こおろぎの顔が、はらぺこあおむしに似ている気がする」と気がついたことを友人同士共有したり、原画と見比べて、表現の違いを注意深く観察している姿が印象に残っています。そのほかにも、気になった作品の色の重なりを味わったり、描かれている場面の情景を想像しながら鑑賞していました。

  • タブレット端末を使って鑑賞する様子

全盲の生徒さんを含む別のグループでは、布の絵本に触る時間も設けました。(布の絵本でふれる『はらぺこあおむし』

鑑賞が終わり、生徒のみなさんに感想を尋ねると「青色の馬の作品がとてもきれいだった」と気に入った作品を具体的に教えてくれたり「楽しかった」「屋外の彫刻作品に触ることができて嬉しかった」「とても近い距離から鑑賞できたのが嬉しかった」とお話してくれました。作品との出会いを楽しみながら、一つひとつじっくり鑑賞し、想像したことを共有しあいながら、それぞれの鑑賞を深めていくひとときとなりました。(R.T)

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