2019年11月16日(土)

病室と展示室をつないで作品鑑賞!

ミュージアム・スクール

休館中よりはじめた、病院内訪問学級
(病院内に設けられた院内学級に通えない、
あるいは院内学級が無い病院に入院中の
こどもたちへの学習保障のためにベッドサイド等で
行う授業や教育支援)との連携授業。

休館中は、こちらから病院に出向く
出張授業を展開していましたが、
リニューアル・オープン後は、
美術館の展示室と病室をWiFiでつなぎ、
分身ロボットやビデオ通信ソフトなどを
使った遠隔による作品鑑賞にチャレンジしています。 

この授業の難しいところは、
児童・生徒の当日の体調もさることながら、
通信状況によってWiFiの電波の感度にむらがあること。
事前の実験ではつながっていた展示室のエリアが、
違う日にはつながらなくなることがしばしばあります。

この日授業を実施したのは、
都内の病院に入院している高校2年生の男子生徒。
懸念されていたWiFiもスムーズにつながり、
展示室をいろいろと巡り4つの作品を鑑賞することができました。

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まずは、展示室の入口で美術館の外観写真や
長いエントランスを紹介し、画像や音声、
ロボットの動作などをチェックしてからスタートしました。

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はじめに見た作品は展示室の吹き抜け
空間にある巨大な彫刻作品、
アルナルド・ポモドーロの《太陽のジャイロスコープ》。
作品に近づいたり、離れたりしながら、
形状や表面の模様、作家のサインなどを観察したり、
作品の素材などについて考えてもらいました。

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次に、毛利悠子のインスタレーション作品《I/O》を鑑賞。
この作品は展示室全体がひとつの作品となっており、
鉄琴が鳴ったり、スプーンが動いたり、
床に置かれたはたきがピョンピョン跳ねるなど、
いろいろなものが動いています。
鑑賞中、ロボットから聞こえる生徒の声や病室からの
遠隔操作でロボットの手を動かすなど、
コミュニケーションをとりながらの鑑賞は、
まるで生徒と一緒に作品を鑑賞しているかのような
臨場感が味わえました。

生徒の体調を確認しつつ授業を続け、
他の部屋にある絵画作品を鑑賞しこの日の
遠隔による授業を終えました。

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鑑賞終了後にロボットを通じて生徒に感想を聞いたところ、
「美術館での鑑賞と聞いた時は、絵を見ると思ったけど、
ぜんぜん違っていて楽しかった。」とコメントをくれました。
また、後日館宛にお礼の手紙をくれ
「退院したら美術館に行って生で見てみたいです。」
と嬉しい言葉がつづられていました。

まだまだ機材の改良や授業の進め方の工夫が
必要だと感じましたが、こうしたテクノロジー
を用いることで、美術館に来られない子供達にも
鑑賞の機会を提供することができます。

今回の生徒だけでなく、今後も引き続き他の病院に
入院している子供達とも遠隔による授業を実施する予定です。(G)

※後日、都内の病院に入院している中学2年生の女子生徒と授業を実施しました。

連携校:東京都立光明学園(病弱教育部門 病院内訪問学級)
テクニカルサポート:株式会社オリィ研究所

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