2019年11月25日(月)

2019夏 大人向けワークショップ「描く・切る・組む」レポート2

ワークショップ

ワークショップ2日目、922日(日)に実施した、ワークショップB「ダンボールでつくるタングラム・ペインティングの制作と展示」には1日目とは異なる7名が参加しました。こちらのワークショップは、10301630とちょっと長丁場です。

ワークショップBは、複数のパーツによって正方形を構成し、さらに組み替えることで新たな形を作り出せるタングラムパズルを用いた内容です。左上写真の白いダンボールから切り出されたパーツから始まります。

パーツの裏に引かれた線にそって、ミシン目カッターで筋を付けたら折りたたんでいきます。

約1時間で一枚のダンボール板から立体的なパネルが完成!
7つのパーツができたら、正方形になるように組み合わせてみます。

パネルができたら、次は色を用いて描いていきます。

末永さんからいくつか描くためのテーマが示されました。「好きな食べ物」「動物」「空にあるもの」「夏」「ここに来るまでに見たもの」など、全部で8つの中から、それぞれ好きなテーマを選びます。
これらのテーマに従って、何か具体的なものを描いても良し、色面で塗り分けていっても良し。また、テーマとなった場所の特性から展開したり、あるいは色や形、パネルに引かれた黒い線をきっかけにして描いていくなど、それぞれに進め方を考えていきます。

どんな絵を描くか構想を練りつつ、昼休憩を終えたらいよいよパネルに描いていきます。

制作が始まると、参加者の皆さんは、迷いなくどんどん筆を進めていきます。

1時間半ほどの描画時間を経て、パネルの絵が完成しました。

「空にあるもの」をテーマにして描かれた作品。タングラムのパーツがさらに分割して見えるように描き分けています。

「好きな食べ物」を選んだ人はトマトとモッツァレラチーズが載った“カプレーゼ”。青いお皿に赤いトマトが映える作品が完成。

タングラムパズルは、美術館内の様々な場所に展示します。
まずは全員で館内の展示候補場所を巡り、どこに展示したいかイメージを膨らませます。

展示の舞台となるのは、教育普及棟の廊下やコレクション展示室の一角、ホワイエや美術図書室前の廊下など。ここぞ!という場所を決めたら、それぞれに展示を行います。

自分が描いた絵を良く見て、それをどう組み替えるか、展示する場所も観察しながら考えていきます。
開館中の館内だったので、3歳くらいのお子さんがやってきて、組み替えを一緒に考えてくれる一場面も!実際にその子が考えたパターンが採用されていました。

展示が終わったら全員で館内を巡り、鑑賞を行いました。一人ずつ作品にどんな思いを込めたか説明を聞くと、より理解が深まっていきます。

「ここに来るまでに見たもの」をテーマにした作品は、某コンビニのロゴマークを用いた作品でした。作者のAさんは、もともとこちらのコンビニが大好き、とのこと。さらに、アンディ・ウォーホルがキャンベルスープ缶一つを画面いっぱいに表現した作品を手掛けたことを知り、自分もコンビニのロゴマーク一つで勝負してみようと思ったそうです。
家の形に組み替えられた作品は、ガラスの外側に広がる砂利の床と呼応しています。

「動物」がテーマの作品。タングラムパズルのパーツ一つひとつに動物から展開された絵が描かれています。地下と地上とをつなぐ階段の壁面に展示することによって、上下関係による生態系を表したとのこと。
末永さんからは「この作品は、正面だけで完結せず、パネルの側面にも注目して描いていている。この場所に展示することで、階段を上り下りする人の姿も作品の見え方に影響してくるようで面白いですね」とのコメントがありました。

最後にスタジオに戻り、末永さんからご自身の作品についてお話がありました。
タングラムパズルはどんな場所にも展示できる絵画作品。完成した一つの画面を解体し、新たに組み合わせることによって別の図像が生み出されます。そしてそれを設置する場所との関わりや絵の中での繋がりによって、さらにその見え方も変化していきます。

2日間のワークショップは、各日ごとに異なる対象、テーマで実施しましたが、いずれも支持体に描いたそれぞれの絵画作品とそれを展示する環境との関係性に目を向ける内容となりました。
参加者の方からは以下のようなコメントがありました。
・大人向けのワークショップはなかなかないので楽しかった!
・日常にあるものを観察し、形や色で再現することで、新たな発見がたくさんあった。展示をすることで、作品と空間との関係にも気づきが得られた。
・作るだけでない満足感が得られた。
・「空間を生かす」という視点で作品をつくる、みるという面白さを知れたことを大切にしていきたい。

今回のワークショップを通して、末永さんご自身の制作に向けた眼差しの追体験をする機会となると同時に、ものの捉え方の変わる経験となったのではないでしょうか。
(A.T)    

撮影:中島佑輔

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