吉阪隆正展

ひげから地球へ、パノラみる

東京都現代美術館では、東京出身の建築家・吉阪隆正(1917-1980)の展覧会を開催します。

吉阪隆正は戦後復興期から1980年まで活躍した建築家です。「考現学」の創始者として知られる今和次郎や近代建築の巨匠ル・コルビュジエに師事し、人工土地の上に住む住宅《吉阪自邸》、文部大臣芸術選奨(美術)を受賞した《ヴェネチア・ビエンナーレ日本館》、日本建築学会賞を受賞した《アテネ・フランセ》、東京都選定歴史的建造物に指定された《大学セミナー・ハウス 本館》などを手掛け、コンクリートによる彫塑的な造形を持った独特の建築で知られています。

建築というものは、世界で相互理解するための一つの手がかりではないだろうか”―吉阪隆正の講演より

一方で、建築だけにはおさまらない領域横断的な活動に取り組み、地球を駆け巡ったその行動力から、建築界随一のコスモポリタンと評されてきました。本展サブタイトル「ひげから地球へ、パノラみる」は、吉阪による造語を組み合わせたものであり、地域や時代を超えて見渡すことなどを意味するパノラみると、自身の表象であり等身大のスケールとしてのひげ、そして個から地球規模への活動の広がり、という意味を込めました。本展は吉阪隆正の活動の全体像にふれる公立美術館では初の展覧会となります。

※戦後の住宅難解消のため吉阪は「住むためにすべてが準備されている大地を人工の力でつくる」ことを提唱し、それを人工土地と呼んだ。

会場マップ(PDF)

  • 《サイコロ世界地図》1942年 ⓒ吉阪隆正

  • 《吉阪自邸》1955年 (撮影:北田英治、1982年)

  • 《ヴェネチア・ビエンナーレ日本館》1956年 (撮影:北田英治、1997年)

展覧会のみどころ

1 建築家・教育者・登山家・冒険家・文明批評家…多彩な顔を持つ吉阪隆正の「人」に迫る
吉阪隆正の生涯と、建築を中心とした領域横断的な活動を「生活論(人間と住居)」「造形論(環境と造形)」「集住論(集住とすがた)」「游行論(行動と思索)」の4群による連環として捉え、時代やテーマによって7章に構成して紹介します。

2 「吉阪隆正+U研究室」による住宅建築、公共建築、山岳建築、「早稲田大学吉阪研究室」による地域計画のプロジェクトを紹介

発見のための視点と視野 実現のための手段と工夫 どれがいいのか それをみんなでみつけよう
― 吉阪隆正の言葉より

吉阪の建築は、戦後の焼け跡に自らの住まいとして建てたバラック住宅から始まりました。以降、個人住宅や学校・市役所といった公共建築、極地での生活を考えた山岳建築、地域計画にまで発展。そのスケールを等身大から地球規模へ拡大していきました。これらの建築の仕事は一人で行っていたわけではありません。設計アトリエであるU研究室(’63年に吉阪研究室から改称)を創設し、「不連続統一体(DISCONTINUOUS UNITY)」の考え方に集まった所員や、教鞭を執った大学院の学生らと共にディスカッションをしながら集団で建築を作り上げていきました。本展では30の建築とプロジェクトを紹介し、建築によって吉阪が目指したものとは何か、社会へのメッセージを紐解きます。その中でも地域計画のプロジェクト展示は初めてとなります。

  • 《江津市庁舎》1962年 (撮影:北田英治、1994年)

  • 《大学セミナー・ハウス 本館》1965年 (撮影:北田英治、1997年)

  • 《乾燥なめくじ》1966年 ⓒ吉阪隆正

  • 3 スケッチ、原稿、ノート、書類、写真…吉阪の創造の源泉となる資料を多数展示
    本展の目的は吉阪隆正の仕事を現代において再評価することにあります。2015年に文化庁国立近現代建築資料館に「吉阪隆正+U研究室建築設計資料」が、2017年には早稲田大学に吉阪の日記や原稿、ノート、書類、写真といった個人資料が収蔵されたことにより、アーカイブ化や修復作業が進められています。本展では吉阪の思想や思考、創造の秘密を解読する様々な形態の資料をまとまったかたちで展示します。

作家経歴

  • 吉阪隆正  写真提供:アルキテクト

  • 1917年東京生まれ。’33年ジュネーヴ・エコール・アンテルナショナル卒業。’41年早稲田大学建築学科卒業。今和次郎に師事し、農村や民家の調査に参加。「生活学」や「住居学」の研究を行う。’50年に戦後第1回フランス政府給付留学生として渡仏し、ル・コルビュジエのアトリエに2年間勤務。設計実務に携わり、ドミノシステムの実践やモデュロールの理論など、モダニズム建築の流儀を現場で学ぶ。’54年早稲田大学助教授、’59年に教授となる。’54年には設計アトリエである吉阪研究室(後にU研究室に改称)を設立し、本格的な建築設計を開始する。《吉阪自邸》(1955)、《浦邸》(1956)、《ヴェネチア・ビエンナーレ日本館》(1956)、《江津市庁舎》(1962)、《アテネ・フランセ》(1962)、《大学セミナー・ハウス》(1965-)などが代表作となる。世界各国の大学や会議に招聘されるなど国際的に活躍する一方、’70年には《21世紀の日本列島像》で内閣府総合賞を受賞するなど、新しい社会や環境、未来へ向けた集住とすがたを提言した。「住居学汎論」「ある住居」「生活とかたち―有形学」など多数の著作があり、師であるコルビュジエの著作も数多く翻訳、日本での普及に努めた。山岳建築や地域計画を手がけ、「人間―環境」の往還を強く意識し、環境や地形、気候に抗わない設計を行なうなど、ポストモダニズムを超越した建築思想に回帰した。’60年フランス学術文化勲章受章。日本建築学会会長、日本生活学会会長、日本山岳会理事、日本雪氷学会理事などを歴任。冒険家・アルピニストとしては’57年早稲田大学赤道アフリカ横断遠征隊を指揮し、キリマンジャロ登頂では女性隊員の登坂の歴史を開く。’60年早大アラスカ・マッキンレー遠征隊では隊長を務め、ヒマラヤK2遠征隊も組織した。

  • 自画像《一筆描きのタカ》1979年 ⓒ吉阪隆正

展覧会構成

第1章:出発点
吉阪の生い立ちや原体験、今和次郎やル・コルビュジエとの師弟関係を紹介し、地球を巡る活動の軌跡を辿る
第2章:ある住居
“大地は万人のものだ 設計活動の拠点でもある人工土地の《吉阪自邸》を紹介し、建築の思想に迫る
第3章:建築の発想
吉阪隆正とU研究室による建築作品の構造模型、現場写真、図面などから形を発見する
第4章:山岳・雪氷・建築
積雪環境や雪氷に関する研究、山小屋やホテルなどの山岳建築の作品を展示する
第5章:原始境から文明境へ
アラスカ・アフリカへの探検・紀行と世界の住居、世界中を旅した記録などを紹介する
第6章:あそびのすすめ
吉阪によるダイアグラムとスケッチによって、作画による表現と記号的アイデアの源泉を探る
第7章:有形学へ
提唱した『発見的方法』『有形学』を解説、吉阪研究室による都市計画/地域計画を総覧する

展示構成
アルキテクト:嶋田幸男・齊藤祐子・吉江 俊、北田写真事務所:北田英治、paper studio:春井 裕、Echell-1

基本情報

会期

2022年3月19日(土)-6月19日(日)

休館日

月曜日(3月21日は開館)、3月22日

開館時間

10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

観覧料

一般1,400円 / 大学生・専門学校生・65歳以上1,000円 / 中高生500円 / 小学生以下無料

※ 本展チケットで、「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※ 小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※ 身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳持参者とその付き添いの方(2名まで)は無料です。
※ 3月19日(土)~4月3日(日)は「Welcome Youth」で18歳以下は入場無料になります。(要年齢証明)
※ 予約優先チケットもございます。予約優先チケットはこちら

会場

東京都現代美術館 企画展示室 1F

主催

公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

企画構成

アルキテクト、北田写真事務所

特別協力

文化庁 国立近現代建築資料館

協力

公益財団法人大学セミナーハウス、公益社団法人日本雪氷学会、ル・コルビュジエ財団、早稲田大学建築学教室本庄アーカイブズ

後援

稲門建築会、一般社団法人DOCOMOMO Japan、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会

※開催内容は、都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。

展覧会関連書籍

当館のミュージアムショップおよびNADiffオンラインサイトにて販売中

【書籍名】吉阪隆正 パノラみる
【発行】Echelle-1(エシェル・アン)
【執筆】齊藤祐子、樋口裕康、藤森照信、内藤廣、中谷礼仁、磯達雄、後藤春彦、余飛、松隈洋、浦環、北田英治、本橋仁、山本雅夫、丸田誠、田中茂、村上慧、富田玲子、梅干野成央、大谷映芳、鈴木恂、内木博喜、吉江俊、マンフレット・シュパイデル、嶋田幸男、郭中端(掲載順)
【判型・頁数】 A4判変形(210x210mm
【刊行年月】2022年526
【価格】2,915円(税込)

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