ホー・ツーニェン エージェントのA

本展は複数の映像インスタレーションとVR作品(要申込/30分入替制)で構成されています。
展示室出口で次回利用できる割引クーポン券をご用意しています。

会場マップとタイムテーブルはこちらVR作品の体験申込はこちら

東京都現代美術館ではこのたび、シンガポールを拠点に活動するアーティスト、ホー・ツーニェンの個展を開催します。ホー・ツーニェンは、東南アジアの歴史的な出来事、思想、個人または集団的な主体性や文化的アイデンティティに独自の視点から切り込む映像やヴィデオ・インスタレーション、パフォーマンスを制作してきました。既存の映像、映画、アーカイブ資料などから引用した素材を再編したイメージとスクリプトは、東南アジアの地政学を織りなす力学や歴史的言説の複層性を抽象的かつ想起的に描き出します。そのようなホーの作品は、これまでに世界各地の文化組織、ビエンナーレなどで展示され、演劇祭や映画祭でも取り上げられてきました。国内でも、当館で開催した「他人の時間」展(2015年)を含めた多くの展覧会に参加し、近年は国際舞台芸術ミーティング in 横浜(2018年、2020年)、あいちトリエンナーレ2019(2019年)、山口情報芸術センター[YCAM](2021年)、豊田市美術館(2021年)で新たな作品を発表し話題を呼びました。

  • 《ウタマ―歴史に現れたる名はすべて我なり》 2003年、映像スチル

  • 《一頭あるいは数頭のトラ》2017年、映像スチル

本展では、ホーのこれまでの歴史的探求の軌跡を辿るべく、最初期の作品含む6点の映像インスタレーション作品を展示するとともに、国内初公開となる最新作を紹介します。ホーが監督と脚本を務めたデビュー作《ウタマ—歴史に現れたる名はすべて我なり》(2003)は、シンガポールという国名の由来「シンガプーラ(サンスクリット語でライオンのいる町)」とその地を命名したとされるサン・ニラ・ウタマに関する諸説を巡りながら、イギリス人植民地行政官スタンフォード・ラッフルズを建国者とする近代の建国物語を解体します。3Dアニメーションを用いた《一頭あるいは数頭のトラ》(2017)では、トラを人間の祖先とする信仰や人虎にまつわる神話をはじめ、19世紀にイギリス政府からの委任で入植していた測量士ジョージ・D・コールマンとトラとの遭遇や、第二次世界大戦中、イギリス軍を降伏させ「マレーのトラ」と呼ばれた軍人山下奉文など、シンガポールの歴史における支配と被支配の関係が、姿を変え続けるトラと人間を介して語られます。

  • 《名のない人》2015年、映像スチル

  • 《CDOSEA》2017年-、スクリーンキャプチャ
    Image courtesy of the artist and Eduard Malingue Gallery

ホーは他にも、既存の映像を転用し、マレー半島の近現代史とその編纂に影響を与えた人物に焦点を当てた作品を制作しています。第二次世界大戦中、マラヤ共産党総書記を務めながら、イギリス、日本、フランスの三重スパイとして暗躍したライ・テクを取りあげた《名のない人》(2015)、マラヤ共産党とマラヤ危機について、党の機密情報に基づいた文献を残した、ゴーストライターとも言われているジーン・Z・ハンラハンを描いた《名前》(2015)は、いくつもの映画の断片をつなげ、複数のイデオロギーに介在した謎多き人物に、同一性をもたせることなく、その内側に迫ります。
これらの作品を生み出す基盤となっているのは、2012年に始まったプロジェクト「東南アジアの批評辞典」です。「いかなる言語、宗教、政治体制によっても統一されることのなかった東南アジアの総体性をもたせるのは何か?」という問いを起点にしたこのプロジェクトのオンラインプラットフォームが、本展でも展示する《CDOSEA(東南アジアの批評辞典)》(2017-)です。幅広いソースから抽出された東南アジアに関連するAからZのキーワードとイメージが、アルゴリズムによって都度組み合わされ、東南アジアというその呼び名が想起させる総体に抗う多層性、複数性を描き出します。

《ヴォイス・オブ・ヴォイド―虚無の声》2021年、展示風景
撮影:三嶋一路 写真提供:山口情報芸術センター[YCAM]

近年日本で制作した作品からは、山口情報芸術センター[YCAM]とのコラボレーション作品《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》(2021)を展示します。VRと6面の映像で構成された本作では、西洋主義的近代の超克を唱え、大東亜共栄圏建設について考察した京都学派の哲学者たちの対話、テキスト、講演などが現前します。VRでは、戦争の倫理性と国家のための死についての議論が行われた座談会から、西田幾多郎の「無」の概念を象徴する抽象的空間まで、京都学派の思想と哲学者たちの主観性を体現する空間に没入することができます。

《時間のT:タイムピース》 2023年、映像スチル Image courtesy of the artist and Kiang Malingue

ホーの最新作で新たな展開ともいえる《時間(タイム)のT》(2023年)では、ホーが引用しアニメーション化した映像の断片が、アルゴリズムによって、時間の様々な側面とスケール—素粒子の時間から生命の寿命、宇宙における時間まで—を描き出すシークエンスに編成されます。それらが喚起する意味や感覚は、時間とは何か、そして私たちの時間の経験や想像に介在するものは何かを問いかけます。

《時間(タイム)のT》 2023年、映像スチル Image courtesy of the artist and Kiang Malingue

作家プロフィール

ホー・ツーニェン Ho Tzu Nyen
1976年シンガポール生まれ、同地在住。ホー・ツーニェンの映像、映像インスタレーション、パフォーマンスは、幅広い資料や言説を参照し、再編成することで、複雑に絡み合う歴史や権力、あるいは個の複雑な主体性を描き出す。ホーの作品は世界各地で取り上げられており、2011年には第54回ヴェネチア・ビエンナーレのシンガポール館の代表を務めた。近年、ハマー美術館(ロサンゼルス、2022年)、豊田市美術館(2021年)、クロウ・アジア美術館(米テキサス州ダラス、2021年)、山口情報芸術センター[YCAM(山口市、2021年)、ハンブルク美術館(ハンブルク、2018年)、明当代美術館(上海、2018年)などで個展を開催しており、タイランド・ビエンナーレ(チェンライ、2023年)、あいちトリエンナーレ2019(名古屋市等、2019年)、第12回光州ビエンナーレ(光州、2018年)等の国際展にも数多く参加している。また、世界演劇祭(ドイツ各地、2010年2023年)、オランダ芸術祭(アムステルダム、2018年2020年)、ベルリン国際映画祭(ベルリン、2015年)、サンダンス映画祭(米ユタ州パークシティ、2012年)、カンヌ映画祭第41回監督週間(カンヌ、2009年)など、各地の演劇祭や映画祭でも取り上げられている。2019年にはアーティストの許家維(シュウ・ジャウェイ)と共に、国立台湾美術館で開催された第7回アジア・アート・ビエンナーレのキュレーションを担当した。

ホー・ツーニェン 撮影:マシュー・テオ

基本情報

会期

2024年46日(土)~ 77日(日)

開館時間

10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)

休館日

月曜日(429日、56日は開館)、430日、57

会場

東京都現代美術館 企画展示室 B2F

観覧料

一般1,500円(1,200) / 大学生・専門学校生・65 歳以上1,100円(880) / 中高生600円(480) /小学生以下無料

※(  ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※ 毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。

※[学生無料デー Supported by Bloomberg] 5月11日(土)・12日(日)の2日間、中高生・専門学校生・大学生は本展が無料です。(チケットカウンターで学生証を提示)
※本展観覧料が2回目以降、半額になる割引クーポン券をご用意しています。ご希望の方は展示室出口でスタッフにお声がけください。
4月6日(土)に「ホー・ツーニェン エージェントのA」展にご来場されたお客様の再入場対応について

オンラインチケットはこちら会期中日時指定なしで、1枚につきお一人様各展覧会1回限りご入場いただけるオンラインチケットです。ご購入後のキャンセル・変更は一切できません。美術館チケットカウンターにて当日券も販売します。

主催

公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館

助成

公益財団法人吉野石膏美術振興財団

ナショナル・アーツカウンシル シンガポール


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《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》VR作品の体験について

《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》は3つの映像インスタレーション(各745秒)とVR作品で構成されています。3つの映像は展示室内でどなたでもご鑑賞いただけますが、VR作品の体験にはお申し込みが必要です。体験をご希望の方は下記の詳細をかならずご確認の上、「事前予約」または「当日受付」、いずれかの方法でお申し込みください。

【対象年齢】10歳以上(10~12歳は保護者の同意が必要)
【所要時間】約30分間(ガイダンスを含む)
【日  時】本展会期中の10:10~17:40(休館日をのぞく)
【場  所】東京都現代美術館 企画展示室 B2F
※体験にはお申し込みのほかに、当日有効の本展観覧券が必要です。(無料対象者は不要)
 観覧券の詳細はこちらをご確認ください。
VR体験の録画映像を展示室内で上映しています。本展の来場者はどなたでも鑑賞できます。(申込不要)

◆事前予約の場合
【予約方法
Peatix(ピーティックス)でのオンライン予約で受付します。予約は先着順で、定員になり次第終了します。
現在、~5月17日(金)までの予約を受付中です。

4/6~4/26 予約ページ(外部サイトに移動します)
4/27~5/17 予約ページ(外部サイトに移動します)
【今後の予約開始日時】
・5月18日(土)から6月7日(金)までの予約は【5月7日(火)午前11時より】受付開始
・6月8日(土)から6月28日(金)までの予約は【5月28日(火)午前11時より】受付開始
・6月29日(土)から7月7日(日)までの予約は【6月18日(火)午前11時より】受付開始

◆当日受付の場合
【受付方法
各日午前10時より、企画展示室B2F入口にて「VR体験 整理券」を配布します。
受付は先着順で、定員になり次第終了します。整理券は1名につき1枚配布します(配布当日に限り有効)

注意事項
〈来場・体験に関するご注意〉
・体験開始時間の5分前に展示室内のVR体験エリアにお越しください。
・体験開始時間に遅れた場合は体験時間の短縮または状況により体験できないことがございます。
VR体験エリアにいるスタッフに予約確認(Peatixアプリの「チケット」等または「VR体験 整理券」)をご提示ください。
・スタッフのガイダンスに沿った体験にご協力ください。ご協力いただけない場合は体験をお断りまたは中断させていただくことがございます。

〈事前予約・キャンセル・予約変更に関するご注意〉
・事前予約にはPeatixのアカウント登録(無料)が必要です。
・お申し込みは1名様につき1チケットまででお願いいたします。チケットを複数予約された場合は、Peatixのメッセージからご連絡させていただく場合があります。
・各日、前日の2359までご予約いただけます。
・予約のキャンセル・変更はPeatixよりお手続きください。
Peatixの利用・操作方法等については、東京都現代美術館ではお答えしかねます。Peatixのお問合せ・サポート(https://help.peatix.com/?hl=ja)をご確認ください。
Peatix以外の方法(電話、メール等)での事前予約は受け付けておりません。ご了承ください。

※申込方法等は都合により変更になる場合がございます。

展覧会図録

「ホー・ツーニェン エージェントのA」展覧会図録
2024年5月中旬〜下旬発売予定 予約受付中
インスタレーションビュー、映像のスチルカットのほか、作品の制作過程で作られた貴重な資料も交えながら、出品作6 点を軸に構成しています。多層的な作品を読み解く論考4 本や、過去に執筆されたホーのテキストも収録し、絶えず更新されるその制作の真髄に迫ります。
当館ミュージアムショップ店頭およびナディッフオンラインにて予約受付中です。
※お代金先払いのため、ご予約後のキャンセルはお断りしております。
※レターパック送料:全国一律520円

書籍タイトル:エージェントのA
著者:ホー・ツーニェン
デザイン:藤田裕美
判型:A5 判変型(H210 x W135 mm)/コデックス装 / 256 ページ
テキスト:日本語 / 英語
発行:torch press
会場限定特別定価:¥2,970(税込)※会期中のみ
一般価格:¥3300(税込)
ナディッフオンラインでのご予約は、一般流通価格となりますのでご留意ください。
※一般流通書籍のため、Amazon はじめ書店でもご購入が可能です。

主な内容:
• 映像作品のスチル、制作時のマテリアル
• インスタレーションビュー
• 各作品の解説
• ホー・ツーニェンによるテキスト(2 本)
• 論考 木下千花(映画研究者)
「マスキュリニティ、もしくはその解きほぐしについて」
• 論考 アンドリュー・マークル(ライター)
「語られぬままの物語も 《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》に関する失われたエッセイの註釈」
• 論考 新井知行(《旅館アポリア》《ヴォイス・オブ・ヴォイド—虚無の声》《時間のT》ドラマトゥルク)
「ホー・ツーニェンとの協働について(仮)」
• 論考 崔敬華(東京都現代美術館学芸員)

展覧会チラシ(PDF)

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