聞こえない人と一緒にみる、ガイドスタッフ研修会
2023年からボランティアのガイドスタッフが手話を学ぶ場として、手話研修会を実施してきました。これまでの研修会では、ろう文化について学んだり、手話での簡単な挨拶や作品をガイドするときに使うことのできるフレーズを学びました。(過去の様子①、②)今回は、ガイドスタッフからのリクエストを受け、手話通訳士3名と、耳の聞こえない「ろう者」や難聴者3名をゲストとしてお招きし、作品をみて感じたことをみんなで楽しく話し合う、対話ベースの鑑賞会を行いました。(実施日2025年8月3日)
鑑賞会は3つのグループに分かれ、それぞれに通訳士とろう者や難聴者が加わりました。展示室に向かう前に、手話の復習や、話すときに意識すること、使用するアプリの使い方の確認など、全員が鑑賞を楽しむための話し合いが各グループで行われました。
展示室では、ろう者や難聴者が気になった作品を、ガイドスタッフが案内する形で鑑賞が進んでいきました。鑑賞の際のコミュニケーション手段として、手話やジェスチャーのみで会話をするグループもあれば、手話は使わずに文字起こしのアプリを使うグループもあり、ガイドスタッフは様々な手段で、積極的にコミュニケーションをとっていました。
難聴者の方に持参していただいたマイクを使い、トークをする様子
手話やジェスチャーを使って会話している様子
文字起こしのアプリを使って会話している様子
鑑賞を終えて、ろう者や難聴者の方々から「普段は自分の中だけで完結してしまう鑑賞も、ガイドスタッフさんから、作品の背景や解説を聞くことにより、どんどん考えが深まっていき、時間が足りなくなるほど楽しむことができた」「展示室に向かう前に確認した手話を使って、目を見て話してくれることがとても嬉しかった」「作品に対して疑問に感じたことをガイドスタッフのみなさんに尋ね、それにこたえてもらう‘’やり取り‘’ができて嬉しかった」といった感想をいただきました。
また、ガイドスタッフからは「アプリは使いこなせるようになるまでに時間がかかることがわかったため、普段から関心を持って使いこなせるようにしておくといいと感じた」「いろいろな対応の仕方があると学んだ」「普段のガイドと異なり、みんなで対話をベースに作品を鑑賞することが楽しかった」という声がありました。
今回はグループに分かれての鑑賞会となりましたが、それぞれのグループで主なコミュニケーション手段が異なっていたことが印象的でした。鑑賞の際、手話での作品解説の方がわかりやすい人、手話よりも文字に起こした方がわかりやすい人。「聞こえない人」と一括りにするのではなく、その人に合った手段でコミュニケーションをとることが重要だと実践を通じ、改めて感じました。美術館が誰にとっても居心地の良い場となるよう、今後も学びと実践を重ねる環境を整えていきたいです。(R.T)