2022年11月30日(水)

日本語学級との連携授業~「みんなの空」

スクールプログラム

日本語能力が不十分な外国人児童・帰国児童に対して、 日本語の習得や生活習慣の習得を目指し、校内に日本語学級を設置している小学校があります。

今回連携授業を行った港区立笄小学校もそうした学校のひとつです。何度か実際の授業を見学し、日本語学級の教員や図工専科の教員との打ち合わせを通じて授業内容を詰めていきました。

この日本語学級との連携授業の様子をお伝えします(実施日2022年9月3日)。

【テーマは「空」】

日本にいても海外にいても誰の頭上にも必ず平等にある「空」。その空に浮かぶ雲の形は、刻々と変化し一つとして同じ形の雲は存在しません。本連携授業では、言葉の壁や国籍を越えて存在するこの空に注目し、実際の空をいつもと少し違った方法で見てみる授業を実施しました。また、併せて当館の収蔵作家であるオノ・ヨーコの空を題材とした作品《クラウド・ピース》も紹介し現代美術の世界にも触れてもらいました。

当日参加したのは日本語学級に通う学年の異なるこどもたち14名。まずは、東京都現代美術館の紹介と授業テーマ「みんなの空」についてのレクチャーを行いました。自分の国の言葉で「空」を何というか質問したところ、中国出身のこどもが「天空」と答えてくれました。

【穴から空を見てみる!?】

続いて、普段とは違った空の見方として「穴から空を見てみよう」と提案。ハガキ大のカードにいろいろな形の穴を空けて、その穴から空を覗いてみることを説明しました。日本語の習得がままならないため、日本語学級教員からの事前のアドバイスを参考に主にイメージ図や実演をまじえて理解を導きました。とはいえ、こどもたちの反応が今一つつかめずにいましたが、実際にハサミを使ってカードに穴を開ける作業になってからは、どのこどもたちも楽しそうに「星」や「ハート」などいろいろな形を切り抜くことにチャレンジしており、笑顔も見られるようになりました。自分の国(ネパール)の国旗の形(三角形を上下に2つ連ねたような形)に切り抜くこどももいました。

各自カードに穴を開けたあとは、その穴から空を覗き、タブレットで撮影することを伝え、日本語学級教員の方々にもご協力いただき、どのように撮影するかを実演していただきました。

【穴から空を撮影する】

カードとタブレットを持って屋上に上がり、穴から空を覗いたり、お互いに協力し合いながらタブレットで撮影を行いました。あいにくの曇り空でしたが、穴から見える空の形はそれぞれに異なり見る場所も変えながらにぎやかに撮影が進みました。

【撮影した空を鑑賞】

教室に戻り、撮影した空をみんなで鑑賞しました。特に穴の形がユニークであったため、何をイメージした穴かを問いかけながら鑑賞を進めました。「栗」「ハート」「鬼」「蝶」など皆それぞれに具体的なイメージをもって穴を空けていることがわかりました。

最後に、空をテーマにした東京都現代美術館の収蔵作品であるオノ・ヨーコ《クラウド・ピース》を紹介して終了しました。《クラウド・ピース》は地面に穴を掘って床面に鏡を置いてそこに映る空を覗き見るということを伝えると、ビックリしたように感嘆の声があがりました。

日本語学級との連携授業は初めてでしたが、教員との事前の打ち合わせで日本語習得のための授業ではありますが、言葉で示すよりもなるべく図解やイメージ図を用いて説明する方がよいとのアドバイスを受けたことが非常に役立ちました。「やさしい日本語」を用いることも心掛けましたが、16年の全学年を対象とした授業でもあり日本語の習得にも差がみられたことから、イメージ図や実演して示すことの重要性をあらためて実感しました。

教員からは、この授業は言葉だけでは十分に理解できないこどもでも活動ができ、穴の形を学芸員にほめてもらえたことが、そのこどもの自己肯定感を強めることにつながったのではないかとコメントをいただきました。さらに、いつもの授業では消極的なこどもが、かなり複雑な穴の形を切り抜く事に集中して挑戦していたことが印象的だったようで、そのこどもの新たな側面に気が付くことができたともおっしゃっていました。今後の授業でも時間帯を変えながら今回作ったカードを用いて空を見て撮影する活動を継続したいと嬉しい言葉も頂戴しました。

後日授業に参加したこどもたちから、感想を記したメッセージカードが送られてきました。そこには「ハサミできるのはむずかしかったけど、楽しかったです」「空のしゃしんたのしかった」「現代美術館に行ってみたいです」などと書かれており、授業が楽しかったことが伝わってきました。
毎日見える空ですが、今回の授業を通じて空への意識が変化したなら嬉しいです。(G

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