2022年08月23日(火)

オンライン連携授業:VR建物探訪-おじゃまします~どうぞごゆっくり-

スクールプログラム

コロナの影響で学校団体鑑賞の利用は減っていますが、昨年度から取り組んでいるオンラインによる学校連携授業は今年度も実施しています。

今回紹介する東京都立足立特別支援学校(鈴木常義校長)は、昨年もオンラインで連携した学校です。同時に他の場所ともつながれるというオンラインの強みを活かし、今年は同じ財団組織である東京都庭園美術館(以下、庭美)と協働し、学校と美術館2館をつないで連携授業を行いました(実施日:2022年7月8日。対象:高等部普通科1年生、11)。庭美と協働することになった理由は以下の通りです。

授業者の山本裕史先生との事前打ち合わせ時に、今年もオンラインの利点を活かした授業を開発・実践したいとの意向を受け、昨年度他校とのオンライン授業で当館の石岡瑛子展VRコンテンツを活用した事例を伝えたところ、1人に1台タブレットがいきわたったので、ぜひVRコンテンツを活用した授業を行いたいとリクエストがありました。しかし残念ながら石岡瑛子展VRコンテンツは期間限定で既にサイトが閉じられています。そこで財団施設内でVRコンテンツを探したところ、庭美のWEBサイト内にVR建物紹介があり、これを活用することにしました。庭美の教育普及担当にも打診し庭美にとっても初めてのオンライン授業なので是非にということから協働での連携授業が実現しました。

さて当日は、2館と学校をオンラインでつないで、教室内の大型モニターを通じて生徒とのやり取りを行いました。VRを使用する際は各自のタブレットでWEBサイトに接続しVR内に入ってもらいました。

授業冒頭、山本先生から各館学芸員が紹介され、続いて各館学芸員からそれぞれの館の特徴について説明をしました。現代美術館については三角形の柱や四角や丸の形が多用された建物のデザインであること。一方、庭美はアールデコを基調とした文様やさまざまな形の照明が特徴的な建物であり、かつて皇族が暮らしていたということなどが簡単に伝えられました。

続いて、山本先生から今回はこの庭美の建物の中をVRで探訪することが伝えられ、各自VRコンテンツに接続した後、庭美の学芸員よりVRの操作方法などがデモンストレーションされました。

デモンストレーションの後は、各自で建物内を探訪し、お気に入りの場所や文様、照明などを見つけたらスクリーンショット機能で撮影し記録する活動に取り組みました。時折、「迷子になった!」という声があがっていましたが、迷子になることで思わぬ場所との出会いにもなるので、どんどん迷子になってくださいと伝えました。

30分程VR内を探訪してもらいましたが、どの生徒も集中したくさんスクリーンショットで撮影しており、モニター越しからも楽しんでいる様子が伺えました。現場で見ていた教員やICT担当からも「生徒の表情がすごく良く、目が輝いていた」などの感想が寄せられました。

休憩をはさみ、撮影した記録写真を山本先生のPCに送信し、授業後半は各自が撮影した写真を発表してもらいました。写真を見ながら現代美術館の学芸員は写真に対してのコメントを、庭美の学芸員は写された場所や物の説明を行いました。

発表写真を見ると、VRの特性上様々な角度に視点を移動させることが可能なため、通常の目線ではとらえられないようなアングルや、建物の外に飛び出し庭や空を撮影する生徒もおりユニークな写真がたくさんありました。
授業後に生徒にとったアンケートでは、全員が美術館に行きたくなったと回答してくれました。

山本先生からは以下のような感想(一部抜粋)が寄せられました。

「授業におけるVRの活用は私にとって初めての試みでしたが、生徒の興味や関心を高め、主体的な活動を促す効果を確認できたと考えています。今回、庭園美術館が制作・公開しているVRを活用し、美術館に疑似訪問するという試みを行いました。生徒はVR内での探索活動をとても楽しんでいました。単に訪問するだけで終わらず、目的(気に入った形、気になるものの写真を撮り、全体で共有・鑑賞すること)を設定したことで、生徒は授業の最後まで集中して活動に取り組めました。一般の来館者が居るリアルの美術館で、上記のような活動は難しいでしょう。今回の授業では、オンライン、1人1台端末、VRのそれぞれの利点を生かした活動が行えたと考えています。」

生徒達の反応や山本先生の感想からもオンライン授業の可能性がまた一つ広がったといえるのではないでしょうか。今回他館の学芸員とも協働することで、それぞれの館の特徴や学芸員の持ち味を活かし、より深い鑑賞体験が誘発できました。今後もこうしたオンライン授業の可能性の探求、他館との協働実践を継続していければと思います。(G)

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