2022年01月22日(土)

VR展覧会を鑑賞しよう!

スクールプログラム

当館のWEBサイトには、先に終了した展覧会「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」の展示アーカイブが2022年3月31日までの期間限定で公開されています。そのアーカイブで紹介されているのが、ハイクオリティの360°VR(バーチャルリアリティー)で巡ることのできる展覧会場です。

https://vr.mot-art-museum.jp/

VR展覧会の入口

このVR展覧会を学校連携授業の一環でこどもたちと鑑賞してみました(2021年11月25日実施)。鑑賞してくれたのは葛飾区立こすげ小学校の5年生(こどもたちは3年生の時に、実際に当館を訪れています)です。

コロナ禍で多くの学校では、校外学習に制限がかかり、実際に美術館を訪れる機会が減ってしまっているのが現状です。しかし、こうしたオンラインコンテンツの活用は、美術館と学校とをつなぐ新しい試みでもあります。昨今、学校ではこどもたちに一人一台タブレット端末が支給されており、日常的にさまざまな授業で使用され、既にこどもたちにとっては使い慣れたツールとなっているようです。

今回の授業では、美術館と学校をオンラインでつなぎ教育普及担当の学芸員がモニター越しにこどもたちとやりとりしながら、こどもたちは各自自分のタブレットを用いてVR展覧会にアクセスし鑑賞してもらいました。
この石岡瑛子展では、アートディレクターである石岡さんの仕事の全貌が紹介されています。各種ポスターや本のカバーデザイン、映画や舞台で使用された衣装、レコードジャケット、食品パッケージなどさまざまなデザインの世界を堪能できます。
小学校の図画工作の学習指導要領に記載されている「鑑賞」の対象として、5、6年生では、「日常の中の造形」ということが明記されています。まさに石岡さんのデザイン世界はこの日常の造形にぴったりの内容です。

まず、授業冒頭で石岡瑛子さんについてどのような人物でどんな作品を作っていた人かを簡単にレクチャーしました。次いで、VRの操作に慣れてもらうために、展示ポスターに描かれている内容をキーワードにして出題(例えば、「目隠しをしたネズミ」)し、展示室内から該当のポスターを探し出すゲームを行いました。日頃からこうしたツールに接しているだけあって、簡単に見つけてくれました。

  • オンラインで説明中

  • 1人1台タブレットで操作

さて、ウォーミングアップ後は自由に自分のペースでVR展覧会を見てまわります。他のお客様はだれもいません。いわば完全に貸し切り状態。これもVR展覧会ならではの特徴です。また、拡大機能もついているので、見たい作品にじっくりと近づくことも可能です。
図工担当教員が用意したワークシートも使って、気になったり、面白いと思った作品をスケッチしたり、気になりポイントなどをメモしていきます。
鑑賞が始まると、広い展示室内を行き来しながら、じっくりと鑑賞していました。また、気になる作品をスケッチする際には、拡大し細部まで描きこんでいる姿も見受けらました。当初鑑賞時間は30分程度と考えていましたが、あまりにもこどもたちがじっくりと見ているため休み時間も継続し時間を延長しました。

  • 作品をじっくりスケッチ

  • 完成したワークシート

鑑賞後は、各自のワークシートの発表会をしました。
ワークシートに書かれていた感想をいくつかご紹介します。

・バーチャルの世界を探検して本当に美術館にいるみたいで楽しかった。
・3年生の時に見た作品と展示が変わっていて、新鮮な気持ちで見られた。
・色や形を繊細に使っているのが多くてすごいと思った。
・久しぶりに美術館に行けた気がした。
・3年生と時はじっくりと作品を見られなかったけど、今日はじっくり近くで見られてうれしかった。
・石岡さんが丁寧に気持ちを込めて作品を作っているのが伝わってきた。
・VRで見ると、生で見るのとは違ったおもしろさがあった。

ワークシートの発表会

授業終了後に図工担当教員からは、以下のようなコメントを頂戴しました。

こどもたちが自由に鑑賞できる空間がタブレットを介して、思っていた以上に広がりをもって、有意義に鑑賞できていたことがよかった。また、スムーズに授業が展開できるよう、事前に学芸員とリモートで授業手順等を打ち合わせることで、こどもたちの活動における問題点やこどもたちの反応などをシミュレーションし合えたので、当日の活動が充実していたように思う。授業後に「バーチャル展覧会、家で家族でもみたよ!」「冬休みに家族と美術館へ行くことになりました」などの声もあり、VR展覧会鑑賞後の影響や反響が少し見えている。ワークシートを使い、事後の作品共有会を、再度バーチャル展覧会をのぞきつつ確認したいと思う。クラス担任からは「VRの展覧会が面白かった!」とこどもたちが言っていたので、すごく面白い授業だったことが伝わってきたとお知らせいただいた。

リモートによる連携授業はこれまでもいくつか実施してきましたが、今回はWEBサイト内のコンテンツを活用した授業でした。実際の美術館での鑑賞経験があるこどもたちであったため、前回見たリアルな展覧会とイメージの比較ができ、様変わりしている展示室に驚くなどしている様子から、やはりリアルな経験値は、VRでの鑑賞の充実度に影響があったのではないかと思います。今後は全く美術館での鑑賞経験がないこどもたちでも同様の鑑賞効果が得られるか試してみたいと思います。期間限定のコンテンツですので、みなさんもぜひご覧になってみてください。(G

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