
TOKYO ART BOOK FAIR 2025
今年で15回目を迎えるTOKYO ART BOOK FAIR(以下、TABF)は、初めて2週末にわたり開催されます。週末ごとに出展者を入れ替えながら、アート出版の国際的なコミュニティを広く受け入れるプラットフォームを目指します。
ひとつの国や地域に焦点を当てて出版文化を紹介する企画「ゲストカントリー」の第9回では、イタリアを特集します。1966〜77年にかけてイタリアで制作された新聞や雑誌、パンフレット、エフェメラなどを収録した『YES YES YES Revolutionary Press in Italy 1966-1977』と、1978〜2006年にかけて刊行されたイタリアのZINEを批評的に紹介する『Out of the Grid. Italian Zines 1978-2006』を紐解く展示を通じて、イタリアにおけるインディペンデント出版の歴史を探ります。さらに、イタリアのデザインにおける企業と出版の関係性を切り口に集めた書籍の展示「Marchette」に加え、ブルーノ・ムナーリ、エンツォ・マーリ、エットレ・ソットサスらの絵本を多数刊行する出版社Corrainiによる展示も予定しています。
また、世界の難民のポートレートや「大切なもの」を記録したホンマタカシの作品展や、Pace Galleryがこれまでに制作してきた展覧会のインビテーションや図録などの印刷物のアーカイブを紹介する展示も開催予定です。今年はクリスマスシーズンに合わせて、ブルーノ・ムナーリ、中村至男、デヴィッド・ホーヴィッツの3名によるTABFオリジナルのラッピングペーパーを使った梱包サービスを行う「BOOK WRAPPING CORNER」も登場します。そのほか、トークショー、ワークショップ、サイン会、ライブパフォーマンス、キッズエリア「PLAYGROUND」、地域連動企画「ネイバーズ」、そしてSigma、New Balance、Museum of Imaginary Narrative Arts、バング & オルフセン ジャパン、ビームス カルチャー卜によるスペシャルブースなど、多彩なプログラムを展開します。
文化や言語を超えて、多くの小さなコミュニティが交わるプラットフォームとして、関わるすべての人々とともに、進化を続けるアートブックの現在地とその可能性を探求します。
基本情報
- 基本情報
Week 1
12月11日(木)12:00-19:00 最終入場:18:30
12月12日(金)- 14日(日)11:00-18:00 最終入場:17:30Week 2
12月19日(金)12:00-19:00 最終入場:18:30
12月20日(土)- 21日(日)11:00-18:00 最終入場:17:30- 会場
東京都現代美術館 企画展示室B2F、エントランスホール ほか
- 入場料
オンラインチケット【日時指定】一般1,000円+発行手数料165円(税込)*小学生以下無料
※11月20日(木)12:00よりチケット販売開始予定。
※当日券1,200円(販売は各日16時まで/予定数に達した場合はその時点で終了)
※一部のイベントには別途参加費が必要です。- 公式サイト
https://tokyoartbookfair.com/
Instagram: @tokyoartbookfair
X: @tabf_info
Facebook: @tokyoartbookfair- <展示エリア>主催
一般社団法人東京アートブックフェア、東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
- <公募ブースエリア>主催
一般社団法人東京アートブックフェア/ 特別協力:東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
- 特別協賛
Sigma
- 協賛
Square株式会社、東急株式会社、株式会社ニューバランスジャパン、バング & オルフセン ジャパン、ビームス カルチャー卜、株式会社八紘美術、芝パークホテル
- 協力
L PACK.、株式会社ノルディスクジャパン、NORDISK CAMP SUPPLY STORE、Blackmagic Design、イタリア文化会館、株式会社子どもの文化普及協会、Woset、DOCU、デザインタイド トーキョー、株式会社トーキョーバイク
EXHIBITORS
各週末約280組、合計約560組の独創的なアートブックやZINEを制作する出版社、ギャラリー、アーティストが国内外から一堂に集結します。
出展者一覧はこちら
GUEST COUNTRY vol.9 ITALY
TABFでは、2015年からひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する「ゲストカントリー」という企画を行っています。これまでにスイス、ブラジル、アジア(中国、韓国、台湾、シンガポール)、アメリカ、オランダ、フランス、北欧5カ国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド)、ドイツを特集しました。第9回を迎える「Guest Country」では、イタリアをフィーチャーします。
Exhibition① 「YES YES YES Revolutionary Press in Italy 1966-1977」
『YES YES YES Revolutionary Press in Italy 1966-1977』は、1966〜1977年のイタリアで、社会運動・芸術運動・政治運動の中から生まれた変革を求める自主的な出版活動を検証する作品集です。この時期は、学生運動や労働者のストライキ、急進的な運動の台頭、大学や工場の占拠といった激しい社会的・政治的闘争に彩られました。そのような状況下において、印刷メディアは運動の主張や要求を広める役割を担うと同時に、視覚的・芸術的な言語の実験の場ともなりました。
激動の時代の刊行物の形態は多様で、新聞、雑誌、謄写版(ガリ版)、会報誌、パンフレットのほか、一回限りで発行された付録や別冊などもあり極めて短命で流動的でした。革命的な活動の痕跡ともいえるこれらは、失望を抱いた世代が自由と社会的創造を求めて公共空間を占拠し抗議活動を行った時代の政治的、思想的、カウンターカルチャー的な活動と結びついていました。TABFでは、本書に収録されている印刷物のアーカイブの一部を展示します。

左:Rosso, anno III, nr. 10-11, 1976 右:Rosso, nr. 15, MAR-APR. 1975
Exhibition② 「OUT OF THE GRID: Italian Zines 1978ー2006」
同名の出版物をもとに構成する展覧会『OUT OF THE GRID』では、1978年から2006年の間にイタリアで制作されたZINEを批評的に選出し、1960〜70年代の社会・政治運動の高揚期を経た後からインターネット普及以前までの時代を横断しながら、イタリア各地における自主的な表現とセルフパブリッシングの地景を描き出します。
約30年にわたって制作されたZINEのコレクションは、言語、形式、そして切実さの変化を繊細かつ急進的にたどっています。それは技術の進歩のみならず、共通の関心を共有するコミュニティが印刷物を通してどのように異議、欲望、そしてアイデンティティを表明してきたか──そして新たなメディアの出現をどのように先取りしていたか──をも映し出しています。展示される作品群は、音楽、社会運動、美術、文学など多様な分野を横断するイタリアのアンダーグラウンド出版ネットワークの一端を示し、作者と読者のあいだの距離を縮めていきます。
TABFでは、アーティスト/キュレーターのダフネ・ボジェリ(Dafne Boggeri)と、彼女が2013年にミラノで立ち上げた実験的出版プラットフォーム〈SPRINT – Independent Publishers and Artists’ Books Salon〉が、この貴重なアーカイブから選りすぐった作品を紹介します。

Exhibition③ 「Marchette」
戦後から現在にいたるまで、イタリアの企業がアーティストや写真家、デザイナーとともに本を制作してきた歴史を紹介します。家具や照明、ファッション、陶磁器、自動車など幅広い分野において、企業は自らのアイデンティティや価値を語るために、また創造性を試す場として本を活用してきました。そうして生まれた出版物は、カタログの枠を超え、企業文化とヴィジュアル・ストーリーテリングが交差する場となっています。
本展では年代順に沿うのではなく、デザインの細部や素材、コンセプトといった視点から作品を結びつけ、思いがけない星座のようなつながりを浮かび上がらせます。このアプローチを通して、ミッドセンチュリーの実験から現代のコラボレーションまで、企業と出版のさまざまな関わり方が見えてきます。その連続性と意外な共鳴を追いながら、本というメディアを通じてイタリアのデザイン業界の企業が文化的言説をいかに形づくり続けているかを発見することができます。

Exhibition④ ブルーノ・ムナーリ「Toc toc. Bruno Munari 1945: dentro i libri!」
1973年に設立されたイタリアの出版社Corrainiは、イラストレーション、デザイン、建築、写真、児童文学といった分野を横断する出版活動を展開してきました。その歴史の中でも、デザイナーのブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)との関係は特に際立っており、数多くの重要な出版物を生み出しています。
ムナーリは、息子アルベルト(Alberto)の誕生をきっかけに歴史的なシリーズ〈Libri del ’45〉に取り組みました。型抜きや穴あけ、大胆でエレガントな挿絵が施された本シリーズは、紙の魔法を通じて読者を魅了し、発見と探求の遊びの世界へと誘います。全9冊は同一の判型ながらそれぞれ異なる物語を語り、ナラティブと造本の発明性が一体となった作品として知られています。初版から80周年を迎える2025年にあっても、革新性を失わぬ不朽の古典として評価され続けています。
本展は、ブックオブジェ、遊び、インタラクションといった、ムナーリが子どもの本で常に追求してきたコンセプトを出発点とし、来場者が物語の中に入り込む体験を提供します。『Toc-toc』から『Mai contenti』まで、本そのものやその一部を拡大して再現することで、大人も子どもも仕掛け扉をめくったり、動物やキャラクターが隠れている扉や窓を開いたりしながら、新たな物語を自由に想像することができます。
また、本展と併せてCorrainiの歩みを辿る展覧会も開催されます。
協力:Corraini

Courtesy of Corraini
EXHIBITION

©︎ Takashi Homma
ホンマタカシ「SONGSーものが語る難民の声」
現在、世界では1億2千万人を超える人々が、紛争や迫害によって故郷を追われ、各地で避難生活を送っています。その多くは、ある日突然これまで築いた暮らしを失い、家族や愛する人々と引き離されながらも、それぞれの思い描く未来に向かって歩み続けています。そこには、1億2千万通りの旅路があります。
本企画では、日本を代表する写真家の一人であるホンマタカシが、バングラデシュ・コロンビア・日本の3カ国で暮らす難民や国内避難民の住まいを訪ねました。ときに対話を重ねながら、故郷を追われた人々の姿と、彼らが避難生活の中でも手放すことのなかった、故郷とのつながりを宿した「大切なもの」を通して、数字からは見えてこない難民一人ひとりの物語に光を当てた作品《SONGSーものが語る難民の声》を制作しました。本作は、瀬戸内国際芸術祭2025で発表されています。本作は、瀬戸内国際芸術祭2025で同実行委員会・UNHCRの共催企画として発表されています。
TABFではこの作品とあわせて、「難民」や「平和」をテーマにセレクトされた書籍を基軸とする、UNHCR駐日事務所の書籍展示企画「難民のものがたり展」を展開します。本と写真を通じて、難民への関心や理解を深めるインスタレーションを構成します。
主催:UNHCR(国連難⺠⾼等弁務官事務所)
展⽰協⼒:Sigma
SPECIAL BOOTH
Sigma
Sigmaは、カメラ、レンズ、アクセサリーの製造販売を行う日本の光学機器メーカーです。1973年に設立された会津工場は、Sigma唯一の生産拠点であり、サプライチェーンを含めたすべての生産活動を日本国内で完結させることに重きをおき、高品質かつ革新的な製品を世に送り出しています。芸術に対する深い敬意はこうしたSigmaのものづくりの原動力であり、自らの技術を芸術の域まで高めることで、表現する人々の情熱に応えてきました。
従来よりSigmaとして取り組んできた、写真・映像文化活動への協賛、写真集蔵書の収集と保管・公開に加え、アートへの真摯な取り組み姿勢をさらに具体化するべく、2025年7月18日、Sigma Foundation(一般財団法人シグマ財団)を設立しました。財団設立初のプロジェクトとして、世界的な注目を集める写真家であるソルヴェ・スンズボー(SølveSundsbø)から『HANATABA』、ジュリア・ヘッタ(Julia Hetta)から『SONGEN』の2冊の写真集を刊行。アーティストとの直接的な協働と書籍の発刊を通じ、より主体的に写真芸術への貢献を進めています。
TABFでは、両氏の作品を展示するとともに、写真集の販売を行います。それぞれが独自のヴィジュアル言語と精緻な構築性を持った、類まれなる作品性を、展示と書籍のふたつのアプローチから立体的に体験できる構成を予定しています。Sigma Foundationはこの展示を通して、写真文化に対するより一層の献身を示します。
from Hanataba ©Sølve Sundsbø
New Balance
TOKYO DESIGN STUDIO New Balanceがプロデュースするフリーマガジン「NOT FAR」は、#11号より新しいコンセプトとメンバーを迎えてリニューアル。最新号を、TABFに合わせて会場で無料配布いたします。(無くなり次第終了となります。)
また、TABF会場である東京都現代美術館から程近い、ニューバランスのコンセプトストアT-HOUSE New Balance(日本橋浜町)を繋ぐスペシャル企画を実施します。
T-HOUSE New Balance
100 years of Sound and Design(Week 1のみの展示になります)
デンマークで生まれたオーディオ・ビジュアルブランドBang & Olufsen(バング & オルフセン)は、1925年の設立以来、常に時代とともに進化するサウンドとデザインを生み出してきました。100周年を迎える今年、フランスのAssouline社よりブランドブックを出版しました。展示では、そのブランドブックを通してBang & Olufsenが紡いできたサウンドの歴史を、またアイコニックなプロダクトを実際に展示することで、北欧デザインとクラフツマンシップの魅力をご紹介します。新たな音楽と出会えるプレイリストが入ったZineも手に取ってお楽しみください。
BEAMS CULTUART(Week 1のみの展示になります)
BEAMSのアートやエンタメ、デザインといったカルチャーの領域を、グローバルに推進するプロジェクト「BEAMS CULTUART(ビームス カルチャート)」。 ブースでは、TABFの常連でもあるTOKYO CULTUART by BEAMSをはじめとした、BEMASのカルチャーを表現した商品を一堂に取り揃えます。
Museum of Imaginary Narrative Arts
東急株式会社は、アーティストユニットL PACK.と協働し、2026年4月に渋谷3丁目にて、みんなでつくる新しいスタイルの小さなミュージアム、Museum of Imaginary Narrative Artsをオープンします。「コーヒーのある風景」をつくり「アートの日常化」を目指す彼らとともに、カフェ、ギャラリー、ショップでありながら、季刊誌の編集室、ラーニングプログラムの開発、地域交流、そしてアート事業の拠点でもある場をつくります。 会場では、Museum of Imaginary Narrative Artsが発行する季刊誌のVol.0を配布し、OUTDOOR LOUNGEでは、特製のクリスマスツリーで皆さまをお出迎えします。
PLAYGROUND

今年のゲストカントリーであるイタリアの関連プログラムのひとつとして、ブルーノ・ムナーリやエンツォ・マーリなどの作品を数多く出版しているイタリアの老舗出版Corrainiによる展示や、アートブックとしても魅力的な絵本に出会える販売機「ART BOOK VENDING MACHINE」などを設置し、子どもから大人まで楽しめるスペースとなります。さらに、アーティストやTABF出展者によるワークショップや読み聞かせなど、親子で参加できるイベントも多数用意しています。また、要予約制の託児サービスもご利用いただけます。
協力:株式会社 子どもの文化普及協会、Woset
OUTDOOR LOUNGE
L PACK.キュレーションの飲食スペース。TABFを外からも盛り上げるべく、L PACK.がキュレーションする「OUTDOOR LOUNGE」では美味しいフードやドリンクを振る舞うキッチンカーが並びます。コーヒー、カレー、ワイン、ビール、サンドイッチ、お菓子、弁当にアイス。お腹ペコペコの方も、小腹が空いた方も満足していただける充実したメニューです。買ったばかりのアートブックを読んだり、久しぶりの友人と語りあったりと、自由に休憩できる気持ちの良いスペースでは物販も行われます。
また、L PACK.が運営・キュレーションを手がけ、2026年4月、渋谷にオープンする新しいスタイルのミュージアム、MINA(Museum of Imaginary Narrative Arts[通称ミーナ])とのコラボレーション企画も見どころです。蚤の市のような賑わいを、どうぞごゆっくりお楽しみください。
L PACK./エルパック
小田桐奨と中嶋哲矢によるユニット。共に1984年生まれ、静岡文化芸術大学空間造形学科卒。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をきっかけに、まちの要素の一部となることを目指します。