MOTアニュアル2027 身を通す
展覧会メインビジュアル
デザイン:田中せり
現代美術の現在を見つめ、新たな視点を提示するグループ展「MOTアニュアル」は、今回で第21回を迎えます。
本展では、小林勇輝、ハラサオリ、乾真裕子、筒|tsu-tsuの4名のアーティストを紹介します。武術、振付、歌唱、演技など、異なる表現を通して、過去にまつわる記憶を自らの身体で捉え直し、そこから生まれる知を制作へとひらいていきます。
身体を通して培われる知には、言葉や記録だけでは捉えきれない感覚が含まれています。それは完成された技術として固定されるものではなく、行為として反復されるなかで、そのつど新たなかたちへと変化していきます。「身を通す」とは、過去や他者を自らの身に引き受け、その身体を通して、世界との関わり方を組み替えるための術(すべ)です。
4名のアーティストは、武術の系譜や家族の歴史、民話の語り、他人の人生などを手がかりに、聞き取りやフィールドワーク、資料調査などに加え、身体を通した探求を重ねながらリサーチを行っています。それぞれが向き合う記憶は、動きや声、身振りなどを通して作品へとつながり、映像、インスタレーション、写真、ドローイングなど、さまざまな表現へと展開されます。
本展では、新作を中心とした作品展示に加え、会期中には4名のアーティストそれぞれによるパフォーマンスと、共同制作によるパフォーマンスを実施します。あわせて、共同制作に向けた対話や試行の過程も映像作品として紹介します。展示とパフォーマンスが呼応する構成のなかで、アーティストが積み重ねてきた実践が、それぞれの身体を通ることで、いまどのような表現として現れるのかを示します。
*「MOTアニュアル」は、1999年の第1回展以来、異なる文化や表現領域が混合する空間としての東京に拠点を置く東京都現代美術館ならではの視点から、日本の若手作家の作品を中心に、現代美術の一側面を切り取り、問いかけや議論のはじまりを引き出すグループ展です。
小林勇輝《詠春拳プロジェクト》2026年、新作映像の一場面
Video by Woomin Hyun
ハラサオリ《Da Dad Dada》2021年、パフォーマンス
Photo by Yulia Skogoreva
乾真裕子、新作映像の一場面、2026年
Video by Akane Shirai
筒|tsu-tsu《Backflow to the junction》2021年、映像
©︎筒|tsu-tsu
みどころ
4名のアーティストによる新作
本展では、複数の表現領域に関わりながら活動してきた小林勇輝、ハラサオリ、乾真裕子、筒|tsu-tsuの4名が、それぞれの身体的な実践をもとに制作した新作を中心に紹介します。身体を通した探究を、映像、インスタレーション、写真、ドローイングなど、多様な作品へと展開します。
空間と身体が交わる展示構成
本展の空間構成は、アーキテクト・コレクティブのガラージュ(小田切駿、瀬尾憲司、渡辺瑞帆)が担当します。建築を軸に映像やフィールドワークなどを横断して活動するガラージュは、時間や身体との関係から建築を捉えています。本展では、作品と空間が観客の動きや時間のなかでゆるやかに結びつく展示を構成し、身体を通して作品を体験する場をつくります。
個と共同によるパフォーマンス
会期中には、各アーティストによるパフォーマンスを行います。さらに、4名が対話や試行を重ねて共同で制作するパフォーマンスを発表します。異なる身体的な実践が交わり、ひとつのパフォーマンスとなっていく会期前の制作過程を捉えた映像(映画)作品も展示します。映画作家/アーティストの池添俊が制作に寄り添い、4名のあいだで交わされる言葉や身振りを記録します。
出品作家
小林勇輝 Yuki Kobayashi
中国南部の伝統武術「詠春拳(えいしゅんけん)」を起点とする《詠春拳プロジェクト》の一環として、地域や時代をまたいで受け継がれてきた技や型を自らの身体で実践し、そこに生じる変化や新たな伝承のあり方を探る新作映像やインスタレーションを発表します。
1990年東京都生まれ。ロイヤル・カレッジ・オブ・アート パフォーマンス学科修士課程修了。自身の身体を中性的な立体物として用い、性や人種的な固定概念に問いかけ、束縛や流動性を表現。また自由と平等の不確かな世界における制限的な社会的コードを疑い、人間の存在意義を探るパフォーマンス作品を発表する。2024年ACC個人フェローシップに採択され、香港で詠春拳のリサーチを行う。「TERRADA ART AWARD 2025」鷲田めるろ賞。
小林勇輝《Life of Athletics》2018年、パフォーマンス Photo by Yulia Skogoreva
ハラサオリ Saori Hala
1960年代にミュージカルダンサーとして日本やアメリカで活動した実父・原健にまつわるリサーチを起点に、家族の記憶の断章とそこに重なる時代の構造を捉えるパフォーマンス《Da Dad Dada》(2017初演)の映像インスタレーションを展示します。時代や国境を越えて継承される記憶、その媒介経路としての身体を見つめ直します。
1988年東京都生まれ。ベルリン芸術大学舞踊科ソロパフォーマンス専攻修了。自らの身体、光、音、テキスト、ドローイングなどの複合メディアを用いた上演作品を制作する。デザイン理論や生態心理学を学んだ背景から、特定の環境下での知覚体験を振付的に再解釈し、上演がもつ現実性/虚構性と関連付けながら再配置することに取り組んでいる。2020-2021年アーツコミッション横浜アーティストフェロー。2025年よりセゾン文化財団舞踊部門アーティストフェロー。
ハラサオリ《P wave》2025年、パフォーマンス Photo by Yunosuke Nakayama
乾真裕子 Mayuko Inui
豊玉姫(とよたまひめ)伝説と八百比丘尼(やおびくに)伝説を起点に、同様のモチーフを持つ世界各地の伝説をたどりながら、そこに描かれるジェンダー表象と、物語を語り継ぐ身体のあり方を考察します。歌や語りを通して、身体と時間、土地の関係をトランスナショナルな視点から捉える新作映像を発表します。
1997年大阪府生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現専攻修了。大阪大学大学院人文学研究科現代日本学博士後期課程在籍。フェミニズムやクィア理論を手がかりに、自身の身体を用いたパフォーマンスや映像作品を制作。近年は、民話や昔話におけるジェンダー表象と、語り継がれながら変化していく歌や語りに関心を持っている。平成藝術賞(2020年)、CAF2021金澤韻審査員賞、第1回BUG ART AWARD(2024年)ファイナリスト。
乾真裕子《葛の葉の歌》2023年、映像 ©乾真裕子
筒|tsu-tsu
自らと同じ日に生まれた世界の約35万人を辿り、演じる《01.25.1997》シリーズの一環として、2026年の米国横断をもとに制作した新作インスタレーションを発表します。筒|tsu-tsuは、演技は終わらないと言います。偶然の一致だけで出会った他人がひとつの身体を通りつづける様を、演じた痕跡や舞台装置が語ります。
1997年生まれ。ドキュメンタリーアクター。幼児期より修める日本舞踊から、身体が誰かの通り道になる感覚「筒(つつ)」を得る。実在の人物を取材し、その思考と感情を演技でたどり・憶えるための技法を「ドキュメンタリーアクティング」と名づけ、発表している。2022年、山梨県河口湖にアーティスト・ラン・レジデンス「6okken」を設立。2026年ACCニューヨーク・フェローシップに採択、同年IASPIS(ストックホルム)レジデント。「Forbes JAPAN 世界を変える30歳未満30人」(2023年)。
筒|tsu-tsu《地上 on the land》2023年、パフォーマンス Photo by Hayato Itakura
基本情報
- 会期
2027年2月20日(土)~5月30日(日)
- 開館時間
10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
- 休館日
月曜日(3月22日、5月3日は開館)、3月23日、5月6日
- 会場
東京都現代美術館 企画展示室 B2F
- 観覧料
一般1,400円(1,120円)/65歳以上980円(780円)/大学生・専門学校生880円(680円)/中高生560円(440円)/小学生以下無料
※( ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者の観覧料が半額になります。(都内在住証明提示/保護者各自提示で2名まで)
[Welcome Youth 2027]
3月2日(火)~4月4日(日)の期間、18歳以下(2008年4月2日以降生まれの方)は無料です。(年齢を確認できる証明書を提示)- 主催
東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
関連プログラム
会期中にアーティストトーク、パフォーマンスなどの開催を予定しています。参加方法・詳細は当館ウェブサイトで順次公開いたします。
