MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影
現代の表現の一側面を切り取り、問いかけや議論の始まりを引き出すグループ展、MOT アニュアル(※)。15 回目を数える本展では、イメージ、言語、歴史、素材など、すでにある世界と交感しつつ表現を紡ぐ作家たちとともに、「なぜ人は作るのか」という根源的な問いに向き合います。
コピー、ダビング、コラージュ、トレース、サンプリング、書写――。この展覧会で作家たちが用いる技術は、世界の残響(エコー)を聴きながら、それらを増幅させることに向けられています。新しい影を作るようなその営みによって、彼らは、自分ではないものや、ここにいない存在――他者――と共振し、時にその替わりとなり時に摩擦を起こしながら、多くの声が響き渡る空間を生み出していきます。手を動かすこと、作ることから、「私」という限定的な存在を乗り越えていく作家たちの実践は、膨大な情報と物質に取り巻かれた私たちの生や社会を映し出しつつ、解放のための多くの示唆を与えてくれるはずです。
※ MOT アニュアルは、1999 年の第1 回展以来、異なる文化や表現領域が混合する空間としての東京に拠点を置く東京都現代美術館ならではの視点から、日本の若手作家の作品を中心に、現代美術の一側面を切り取り、問いかけや議論のはじまりを引き出すグループ展です。
出展作家
THE COPY TRAVELERS、PUGMENT 、三宅砂織 、吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS + 鈴木余位 、鈴木ヒラク
展覧会のみどころ
■ 多彩なジャンルから読み解く表現の最前線
ファッション、詩、写真、映像、音響、コラージュ、ペインティング、ドローイングといった多彩な手段を、すでにある世界との応答の技術として組み立て直し、現代の表現の最前線を提示する展覧会です。新進気鋭のファッション・レーベルPUGMENT から日本を代表する詩人である吉増剛造まで、世代を超えて「作る」ことの根源的な意味に迫ります。
■ 情報化社会における創造性の分析
コピー、サンプリング、コラージュなど、情報のネットワークの中で暮らす私たちに親しい手法を入り口に、現代の文化における創造性や、革新性とは何か、その一端を解きほぐすヒントに満ちた展覧会です。
■ 表現の生まれる瞬間に迫る、多彩な関連イベント
ファッション・ショーから音楽、朗読、ドローイングやダンスを交えた実験的なパフォーマンスまで、ユニークで多彩な関連イベントによって、表現の生まれる瞬間に多角的に迫ります。吉増剛造 × 空間現代、鈴木ヒラク × 鈴木昭男といった、異なる世代ながらこれまで継続的なコラボレーションを行ってきた組み合わせの、進化し続ける試みもお楽しみください。
■ 展覧会テーマに合わせて練り上げられた、新作を中心とする展示
東京および代々木公園という空間の歴史をモチーフに、2020 年春夏コレクションと連動した作品を発表するPUGMENT、古今東西の文化や現象の中に隠された線の「発掘」をテーマにドローイングの可能性を押しひろげる鈴木ヒラク、未曾有の震災以降の「詩」のありようを、過去からの声に突き動かされるようにして問い続ける吉増剛造など、作家たちの現在が記し付けられた新作を中心にご覧いただけます。
作家プロフィール
THE COPY TRAVELERS(加納 俊輔 / 迫 鉄平 / 上田 良)
京都を拠点として活動する美術家、加納俊輔(1983 年大阪府生まれ)、迫鉄平(1988 年大阪府生まれ)、上田良(1989 年大阪府生まれ) が協働したユニット。「複製」や「コラージュ」という手法の可能性について、コピー機やスキャナ、カメラなどのツールを用いて、日々実験に勤しんでいる。
[ 主な個展 ]
2019 「雲型定規がヤマをはる」Sprout Curation /東京
「THE COPY TRAVELERS の A 室」ギャラリー 16 /京都
2018 「The Scrap 2018」Culture Station Seoul 284 /ソウル、韓国
2017 「ポスト・リビングルーム|POST LIVING ROOM」渋谷ヒカリエ 8 階 8/CUBE 1, 2, 3 /東京
「あの日のコピササイズ」MSC ギャラリー同志社女子大学京田辺キャンパス/京都
2016 「水に浮かんだフォーシーム」eN arts /京都
「ストーブリーグ 2016」Division、VOU /京都
2015 「THE COPY TRAVELERS by THE COPY TRAVELERS」space_inframince /大阪
「THE COPY TRAVELERS by THE COPY TRAVELERS」NADiff Gallery /東京
PUGMENT
2014 年に東京で創設されたファッション・レーベル。衣服が人間の営みにおいて価値や意味が変容していくプロセスを観察し、衣服の制作工程に組み込む。ファッションにまつわるイメージと人との関係性に着目し、既にある価値・環境・情報について別の視点を持つための衣服を発表する。
[ 主な展覧会 ]
- 個展 -
2019 「Fall 2019 We People Work, People」/ NADiff a/p/a/r/t /東京
2018 「Spring 2019」 KAYOKOYUKI /東京
2018 「Fall 2018 1XXX-2018-2XXX」/ KAYOKOYUKI、Utrecht、 N id / n id a deux /東京
2017 「Spring 2018 -window installation」 Lamp harajuku / Tokyo
2016 「IMAGE」CIY /岩手
2015 「Don’t forget that entities exist only for a change」 CIY /岩手
2014 「The Right Clothing」 grill gallery / Tokyo
2014 「MAGNETIC DRESS」NO.12 GALLERY /東京
- グループ展 -
2019 「MAGNETIC DRESS, Curated by TOKYO ART BOOK FAIR Ginza Edition」
Ginza Sony Park /東京
2018 「here and there's garden」千鳥文化/大阪
2017 「新しいルーブ・ゴールドバーグ・マシーン」(飯岡陸キュレーション)KAYOKOYUKI、駒込倉庫/東京
2015 「鉄道芸術祭 vol.5 ホンマタカシプロデュース もうひとつの電車~ alternative train ~」
(ホンマタカシキュレーション)、アートエリア B1 /大阪
2015 「THE EXPOSED #09 Passing pictures」(飯岡陸キュレーション)、G/P + g3 gallery /東京
三宅砂織
1975 年、岐阜県生まれ。2003 年ごろより、透明なフィルムに陰陽反転したドローイングを描き、印画紙に現像する「フォトグラム」の制作を開始。膨大な量のイメージが氾濫する現代においてもあえてイメージを見るという営為に重きを置き、人々の眼差しに時代を超えて内在する「絵画的な像」を多声的に抽出するという試みを展開している。
[ 主な展覧会 ]
- 個展 -
2019 「庭園 | POTSDAM」SPACE TGC /東京
2018 「THE MISSING SHADE 3」WAITINGROOM /東京
2017 「THE MISSING SHADE 2」 SAI GALLERY /大阪
2015 「THE MISSING SHADE」 FUKUGAN GALLERY /大阪
2011 「realities or artifacts」ギャラリーノマル/大阪
- グループ展 -
2018 「第 20 回 DOMANI・明日展」 国立新美術館 企画展示室 2E /東京
2017 「ArtMeets04 田幡浩一/三宅砂織」アーツ前橋・ギャラリー1/群馬
2013 「秘密の湖~浜口陽三・池内晶子・福田尚代・三宅砂織~」
ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション/東京
2012 「キュレーターからのメッセージ 2012 現代絵画のいま」兵庫県立美術館/兵庫
2012 自主企画展「アブストラと12 人の芸術家」大同倉庫/京都
吉増剛造プロジェクト|KOMAKUS + 鈴木余位
詩人・吉増剛造の日々の捉えがたい表現活動を記録・共有する目的で、吉増と映像作家・鈴木余位、音響チーム・KOMAKUS が協働するプロジェクト。「MOT サテライト 2017 春 往来往来」「札幌国際芸術祭2017」での作品発表や、「剛造Organic Fukubukuro Orchestra」名義でのパフォーマンス活動を行う。第21 回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品。
◆ 吉増剛造
1939 年東京都生まれ。1964 年に『出発』でデビューして以来、日本を代表する詩人として、現代詩の最先端を疾走し続けている。主な詩集に『黄金詩篇』(1970 年)、『オシリス、石ノ神』(1984 年)、『花火の家の入り口で』(1995 年)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(1998 年)、『怪物君』(2016 年)など多数。2015 年、日本芸術院賞・恩賜賞、日本芸術院会員。2006 年から映像作品「gozo Ciné」を発表する。朗読パフォーマンスの先駆者としても知られ、1960 年代から現在まで、国内外で精力的に行っている。
[ 主な展覧会 ]
- 個展 -
2017-18 「涯テノ詩聲 詩人 吉増剛造展」足利美術館、渋谷区立松涛美術館ほか
2016 「声ノマ全身詩人、吉増剛造展」国立近代美術館/東京
2008 「詩の黄金の庭 吉増剛造」北海道立文学館/北海道
1998 「水邊の言語オブジェ 吉増剛造-詩とオブジェと写真-」斎藤記念川口現代美術館/埼玉
1994 「石狩河口/座ル」テンポラリースペース/北海道
1990 「アフンルパルへ」ギャラリーリヴェリタ/東京
- グループ展 -
2019 「REBORN ART FESTIVAL 2019」詩人の家/宮城
2017 「MOT サテライト 2017 春 往来往来」東京都現代美術館/東京
「札幌国際芸術祭 2017 火ノ刺繍―『石狩シーツ』の先へ」北海道大学博物館/札幌
2002 「融点・詩と彫刻による」うらわ美術館/埼玉
◆ KOMAKUS
「重力の束縛から魂を解放する」ことを目的として活動。手段として、マルチチャンネル音響設計、音源制作、オリジナル・サウンドシステム開発を専門とし、商業施設から、コンサート、ライブ、演劇、美術の分野では鈴木昭男、吉増剛造、刀根康尚らの作品の音響設計を手がけるなど、音響環境の深化に取り組んでいるチーム、WHITELIGHT から派生。2019 年からKOMAKUS 名義で活動を開始、脱中心的な音響空間の創造を各地に仕掛ける。
[ 主な展覧会 ]
2016 「みちのおくの芸術祭 山形ビエンナーレ 2016」東北芸術工科大学/山形
◆ 鈴木余位
栃木県生まれ。個人映画から劇映画まで役職、在処を問わずに映像作家として活動する。映画、美術、文学などを形而上下に横断し、各ジャンルの作家たちの協働も数多。近年は自身の表現の出自である詩と、映画の交感の坩堝へと歩きはじめている。
[ 主な展覧会 ]
2018 「ふたたび、花、傍に」テンポラリースペース/北海道
2013 「イメージフォーラムフェスティバル 2013」東京
2013 「クリチバ映画祭 2013 クリチバ
2011 「第 35 回香港国際映画祭」香港
2011 「KINEMA NIPPON Nippon Re-Read: I & II」ロスアンジェル スほか
鈴木ヒラク
1978 年生まれ。アーティスト。2001 年に武蔵野美術大学造形学部映像学科を卒業、2008 年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。一貫してドローイングと言語との関係性を主題に、平面・彫刻・映像・写真・パフォーマンスなど、ドローイングの概念を拡張するような制作活動を展開している。2016年よりドローイングの新しい実践と研究のためのプラットフォーム『Drawing Tube』を主宰。2017 年FID Prize ドローイングコンテスト(パリ)でグランプリを受賞。
[ 主な展覧会 ]
- 個展 -
2019 「Excavating Reflections」Galerie Chantier Boite Noir/モンペリエ、フランス
2018 「The Writing of Meteors」EACH MODERN/台北
「交通」ART FRONT GALLERY/東京
2015 「かなたの記号」国際芸術センター青森/青森
2013 「Excavated Reverberation」大和日英基金/ロンドン
2011 「Glyphs of the Light」WIMBLEDON space/ロンドン
2008 「NEW CAVE」トーキョーワンダーサイト渋谷/東京
2006 「dig」Galerie du Jour Agnes b./パリ
- グループ展 -
2019 「BOOM」 MO.CO. Panacée/モンペリエ、フランス
「アートみやぎ」宮城県美術館/宮城
2018 「ヒツクリコ ガツクリコ ことばの生まれる場所」アーツ前橋/群馬
2016 「Very Addictive」銀川現代美術館/銀川、中国
「5×3」クンストラウム・デュッセルドルフ/デュッセルドルフ、ドイツ
「バンクーバービエンナーレ」/バンクーバー、カナダ
2015 「THINK TANK Lab Triennale」ヴロツワフ建築美術館/ヴロツワフ、ポーランド
2013 「日産アートアワード 2013」/BankART Studio NYK/神奈川
「DRAWING NOW PARIS」Carrousel du Louvre/パリ
2012 「ソンエリュミエール、そして叡智」金沢 21 世紀美術館/石川
2010 「六本木クロッシング 2010 展 : 芸術は可能か?」森美術館/東京
2009 「Between Site & Space」Artspace Sydney/シドニー
基本情報
- 会期
2019年11月16 日(土) - 2020年2月16日(日)
- 休館日
月曜日(2020年1月13 日は開館)、2019 年12月28日-2020年1月1日、1 月14 日
- 開館時間
10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
- 観覧料
一般 1,300 円(1,040円)/ 大学生・専門学校生・65 歳以上 900 円(720円)/ 中高生 500 円(400円)/ 小学生以下無料
※( )内は20 名様以上の団体料金
※本展のチケットでMOTコレクションもご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上の方は年齢を証明できるものを提示していただくと無料になります。
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜日と翌日曜日)は、18歳未満の子を同伴する都内在住の方2名まで半額になります。(保護者の方は都内在住を証明できるものを提示)
※本展と同時開催の企画展(「ダムタイプ」展、「ミナ ペルホネン」展)とのセット券もあります。- 会場
東京都現代美術館 企画展示室 地下2 F
- 主催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
関連プログラム
◆担当学芸員によるギャラリートーク
展覧会を奥深くまで楽しんでいただけるよう、担当学芸員がギャラリーツアーを行います。
1時間程度で展示室を回りながら、展覧会の意図や作品の解説、制作の裏側などをお話しします。
ぜひご参加ください。
日時:2020年2月8日(土)、2月15日(土)16:00-17:00
※参加方法等の詳細については、当ウェブサイトにて順次お知らせいたします。
※開催内容は、都合により変更になる場合がございます。予めご了承ください。
サテライト展示
「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」展は企画展示室だけではなく、ミュージアムショップ横のホワイエでもサテライト展示をしています。THE COPY TRAVELERSの個人作品とPUGMENTのショーの映像がご覧いただけますのでぜひ展覧会とあわせてご鑑賞ください。観覧無料のエリアで展示していますので、展覧会のチケットがなくてもご覧いただけます。