ハンス・ハーケ:インフォメーション・フロー
現代美術という実践を、社会を形作るシステムと関係性への批判的な問いかけへと変革したハンス・ハーケ。本展はそのアジアにおける初の大規模回顧展です。
1936年、ドイツ・ケルンに生まれたハーケは、1960年代のニューヨークでコンセプチュアル・アートの展開に重要な役割を果たしました。環境的プロセス、政治権力・経済的利害・文化制度を芸術に持ち込み、それらが相互に作用するメカニズムを明らかにする仕事は、その後の現代美術の流れに大きな影響を与えてきました。
本展では、初期の自然現象や生命システムをめぐる探究から、政治的・経済的権力や美術制度への鋭い検証まで、その60年以上にわたる実践を包括的に紹介し、制度批判の展開における彼の先駆的な位置を明らかにします。あらゆるものが結びつき、情報によって動かされる現代社会において、ハーケの実践はますます切実な意味を帯びています。これらの作品が一堂に会する本展は、権力の作用を明らかにし、揺さぶるハーケの芸術が、今日なお持つ意義を鮮やかに浮かび上がらせます。
《ニュース》1969/2008年
OKI microline 590N 24ピンプリンター(テーブル上でニュースフィードを印字)、ロール紙
Photo: Ellen Page Wilson
展示構成について
相互に結びついたシステムのネットワークとして世界をイメージし、人間を取り巻く諸制度や構造をアートを通して批判的に検証する作品を展開してきたハーケは、完成された形態よりもプロセスを可視化し、観客の参加を促したり、生物や植物、自然現象、社会に流通するイメージを作品のなかに持ち込んだりすることで、従来の芸術実践の概念を拡張するとともに、現代美術を形づくることになるさまざまな実験的アプローチを先取りしてきました。
本展は、当時カッセル美術大学の学生であったハーケが、会場監視員および作品設営スタッフとして働いていたドクメンタ 2(1959)で撮影した写真から始まります。作品だけでなく、鑑賞者やスタッフ、展示設営の様子、その他の展覧会運営の諸側面を捉えたこれら最初期の写真には、美術を支え、存続させる社会的・制度的システムに対する彼の関心が、すでに表れています。続いて物理的・自然的現象に取り組んだ初期作品から、不動産業や産業、政治権力を含む資本主義システムの構造と矛盾を告発する後年のインスタレーションまで、作品相互のつながりを示しながら、緩やかな年代順に展開します。
また本展では、ドイツ連邦議会のために制作され、現在も継続している参加型作品《DER BEVÖLKERUNG (住民へ)》のドキュメンテーションと、その展開をたどるアーカイブ資料で紹介します。2000年に設置されたこの庭は、ほとんど人の手を加えずに植物を自由に生育させるもので、議員たちがそれぞれの選挙区から土を持ち寄ることによって、今も絶えず変化し続けています。さらに、継続的な作品群として展開され、来館者の回答を社会調査の一形態として収集する、ハーケの《来場者投票》シリーズの新たな東京版も展示します。
ハーケは1970年の東京ビエンナーレ「人間と物質」展に参加しましたが、それ以降、日本で作品が紹介される機会は数えるほどしかありませんでした。本展は、60年以上にわたる作品を一堂に集め、その実践の幅広さと多様性を日本で初めて包括的に紹介するものです。
《草は育つ》1967–69年
展示風景:「Earth Art」展、アンドリュー・ディクソン・ホワイト美術館、コーネル大学、イサカ、1969年2月11日–3月16日
Photo: Hans Haacke
みどころ
1.戦後現代美術史を体現する重要作家の代表作が集結
自然現象や生物のプロセスを扱った初期作品から、コンセプチュアル・アート、制度批判的なプロジェクトまで、60年以上にわたるハーケの代表作を通して、戦後の現代美術が社会との関係を更新してきた軌跡を一望します。
《結露する立方体》1963–65年
透明アクリル、蒸留水、展示場所の気候条件
《ゲルマニア》1993年
第45回ヴェネチア・ビエンナーレ ドイツ館での展示風景
2.自然環境から権力構造まで――アートの批評性を最大限に押し広げた重要人物
空気や水、植物などの自然環境と、政治、経済、企業、美術館を動かす社会的な力。ハーケは一見異なるこれらを、相互に結びつく「システム」として捉えてきました。目に見えない関係や権力構造を鮮やかに可視化する、鋭くもユーモアに富んだ作品を紹介します。
《青い帆》1964–65年
シフォン、首振り扇風機、釣り用おもり、糸
Photo: Wolfgang Neeb
《ギフト・ホース、ロンドン・トラファルガー広場「第四の台座」のための模型》2013年
ブロンズ、エレクトロルミネセント・フィルム
Photo: Steven Probert Studio
3.作品が2027年の日本社会に問いかける――観客も参加する「現在進行形」の回顧展
ハーケの作品は、過去の歴史を振り返るだけでなく、いま私たちが生きる社会へ直接問いを投げかけます。本展では、ドイツの連邦議会で今なお続くプロジェクトや日本社会を対象とする参加型作品も発表。観客一人ひとりの選択が作品の一部となり、会期中も変化を続ける、生きた展覧会を体験できます。
《私たち(みんな)が人民だ》2003/2018年
サイト・スペシフィック作品、素材・寸法可変、使用言語は展示場所に応じ選定
Photo: Steven Probert Studio
《ステート・オブ・ザ・ユニオン(一般教書演説)》2005年
ナイロン製バナー(縫製:デオカリー・ペルフォー)
《MoMA投票》1970年
展示風景:「全世界の未来(All the World’s Futures)」展、オクウィ・エンヴェゾー企画、第56回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 ヴェネチア、イタリア、2015年5月9日–11月22日
作家プロフィール
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作家ポートレート
ハンス・ハーケ(Hans Haacke)
1936年、ドイツ・ケルン生まれ。ニューヨーク在住。カッセル国立美術アカデミーで学び、1961年渡米。1960年代のニューヨークで展開されたコンセプチュアル・アートの中心人物として、この運動を、権力・経済・文化が複雑に絡み合うシステムへの批判的な問いかけへと導いた。1993年、金獅子賞を獲得したヴェネチア・ビエンナーレ・ドイツ館での作品「ゲルマニア」をはじめ、ポンピドゥー・センター、ニュー・ミュージアム等での大規模な個展など、世界各国で発表を多数行ってきたほか、教育者としても1962年から2002年までクーパー・ユニオン(ニューヨーク)で教鞭をとり、多くの後進を育てた。
基本情報
- 会期
2027年2月6日(土)~5月16日(日)
- 開館時間
10:00 ~ 18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
- 休館日
月曜日(3月22日、5月3日は開館)、3月23日、5月6日
- 会場
東京都現代美術館 企画展示室 3F
- 観覧料
一般2,300円(1,840円)/65歳以上1,600円(1,280円)/大学生・専門学校生1,500円(1,180円)/中高生920円(730円)/小学生以下無料
※( ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットでMOTコレクション(2月20日~)もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者の観覧料が半額になります。(都内在住証明提示/保護者各自提示で2名まで)
[Welcome Youth 2027]
3月2日(火)~4月4日(日)の期間、18歳以下(2008年4月2日以降生まれの方)は無料です。(年齢を確認できる証明書を提示)- 主催
東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)
- 協力

