笹本晃 ラボラトリー

本展覧会は、ニューヨークを拠点に、造形表現とパフォーマンス・アートを往還しながら活動を重ねてきたアーティスト、笹本晃(1980-)の約20年におよぶ仕事を紹介し、そのテーマや手法の変遷をたどる初めてのミッドキャリア個展となります。

笹本は、2000年代半ばより、パフォーマンス、ダンス、インスタレーション、映像など、自身のアイディアを伝えるのに必要なメディアを横断的に用いた作品を手掛けてきました。特に、自ら設計・構成した彫刻/装置/造形物を空間に配してインスタレーションを創り出し、その中で自身がその環境の構成要素の一つとなって即興的なパフォーマンスを行うスタイルで広く知られています。
日常的な所作や行為に、私小説的なエピソードを絡めた軽妙な語りを巧みに組み合わせつつ、初期作品では、癖や習慣、行動パターンなどの分析から個人のパーソナリティの有り様を考察し、また近年は、気象や動植物の生態などを観察の対象として、作品構造やナラティヴ(物語)に採り入れています。緻密に設計されたそれぞれの造形物は、そうした語りを際立てる道具であるだけでなく、即興的なパフォーマンスの思いがけない展開を誘発するスコア(譜面)となります。展示会期中に複数回行われるパフォーマンスの前後には、空間はインスタレーションとして鑑賞されます。

《ストレンジ・アトラクターズ》2010 [個展(Take Ninagawa、東京)での展示風景] 個人蔵 撮影:岡野圭

本展タイトルの「ラボラトリー」は、実験、演習あるいは研究のための空間を指します。鑑賞者が、美術館のホワイトキューブ内で笹本とその作品の生態を観察し検証する機会という意味合いとともに、この世界で起きる大小さまざまな現象について、注意深く観察し、分析しようと試みる、笹本の視点を示唆しています。本展では、初期のパフォーマンス/インスタレーションの代表作から、造形物自体のキネティックな要素が強まる最新作まで、独自の実践を重ねてきた笹本の異才とその作品を、動的に検証します。

みどころ

1.国際的に活躍する注目のアーティスト・笹本晃の初期作品から最新作までを展覧します。
初期の代表作から、キネティック(動的)な要素が強まる近年の作品まで、笹本晃の20年にわたる活動を、概観します。写真や立体作品、パフォーマンス時に生み出されるダイアグラム(図式)、映像作品、そして代表的なパフォーマンス/インスタレーション空間の再構成などによって、笹本作品のテーマや手法の変遷を、さまざまな角度から紹介します。

  • 《Cooking Show》2005

  • 《デリケート・サイクル》2016
    [第9 回恵比寿映像祭「マルチプルな未来」2017 でのパフォーマンス風景] 撮影:新井孝明 図版提供:東京都写真美術館

2.主要なパフォーマンス/インスタレーション作品4点の作家による実演を、会期中各複数回実施します。
インスタレーション空間のなかでアーティスト自身が即興的に行うパフォーマンスを会期中3期にわたり実施します。2010年ホイットニー・ビエンナーレで初めて発表した《ストレンジ・アトラクターズ》、2010年のMOMA PS.1(ニューヨーク)で発表した《Skewed Lies》、弘前れんが倉庫美術館のコミッションによりコロナ禍下に制作した《スピリッツの3乗》そして、昨年香港で発表した《Sounding Lines》と本展のために制作する新作を組み合わせた新たなパフォーマンスまで、と新旧の4作品が一堂に会します。

《スピリッツの3乗》2020 弘前れんが倉庫美術館蔵 撮影:畠山直哉 図版提供:弘前れんが倉庫美術館

3.笹本晃作品を通じて、パフォーマンスと美術館のありかたについて考えます。
美術展とパフォーミング・アーツという二つの領域を往還しながら活動を発展させてきた笹本の活動を提示しながら、「パフォーマンスの記録・保存・継承」について、その可能性を、さまざまなアプローチで考察します。本展では、一般2枚のチケットを一緒に買うとお得なツインチケットもご用意。パフォーマンス実施期間への再来場もでき、笹本作品をより深く理解する機会を提供します。

  • 《Strange Attractors - Diagram 1.9.2011》2011 個人蔵

  • 《誤りハッピーアワー》2014 [JTT(ニューヨーク)での展示風景] 撮影:Charles Benton

4.展覧会開催を機に、初のモノグラフを刊行します。
出品作品を中心に、笹本晃のミッドキャリアを概観するモノグラフ(これまでの作家の活動を包括的に検証する図録)を会期中に刊行予定。作家の言葉や撮りおろしのインスタレーション風景、担当学芸員他による論考、作品年譜他を収録します。

《Point Reflection(Video)》2023 よりスチル

関連プログラム

■笹本晃によるパフォーマンス
日程:8月下旬(8/23242831)、10月中旬、11月上旬
3期にわたり計4作品を各複数回ずつ実施します。
会場:企画展示室 3F(笹本晃展展示室内)
参加費:無料(要当日有効の本展チケット)
各定員制(オンラインおよび当日先着順に整理券発行)
※パフォーマンス実施中は、会場内一部展示エリアへのアクセスを制限します。

パフォーマンス実施作品
Skewed Lies
・ストレンジ・アトラクターズ
・スピリッツの3
Sounding Lines+新作

  • 《Skewed Lies》2010
    [Luxembourg & Dayan(ニューヨーク)でのパフォーマンス風景] 撮影:Allison Hale

  • 《Sounding Lines》(部分)2024
    [個展「測深線」Para Site 藝術空間(香港)2024 での展示風景] Shane Akeroyd 氏蔵 撮影:Studio Lights On

■アーティストトーク
日時:8/23(土)16:0017:00
登壇:笹本晃(本展アーティスト)
会場:講堂
参加費:無料
定員180名・当日先着順

ほか、会期中に、関連トーク、担当学芸員によるガイドツアー(手話通訳付き・ロジャーあり実施回を予定)を実施します。
※内容は変更になることがあります。詳細は決定次第、展覧会ウェブサイトに公開します。

作家プロフィール

  • 撮影:Paul O'Reilly

  • 笹本 晃(ささもと・あき)
    ニューヨークを拠点に、パフォーマンス、ダンス、インスタレーション、映像など、自身のアイディアを伝えるのに必要なメディアを横断的に用いた作品を手掛けるアーティスト。美術とパフォーミング・アーツの領域を往還しながら、音楽家、振付家、科学者、研究者らとのコラボレーションも行い、パフォーマー、彫刻家、演出家といった複数の役割をこなしている。
    1980年神奈川県に生まれ、10代で単身渡英。その後アメリカに移り、ウェズリアン大学でダンスや美術を学ぶ。2007年にコロンビア大学大学院(ニューヨーク)より芸術学修士号取得。現在はイェール大学芸術大学院彫刻専攻で教鞭を取り、専攻長を務める。
    主な個展に、スカルプチャー・センター(ニューヨーク、2016年)、クイーンズ美術館(ニューヨーク、2023-2024年)、パラサイト(香港、2024年)がある。横浜トリエンナーレ(2008年)、ホイットニー・ビエンナーレ(2010年)、第9回光州ビエンナーレ(2012年)、第11回上海ビエンナーレ(2016-2017年)、第3回コチ=ムジリス・ビエンナーレ(2016年)、国際芸術祭あいち(2022年)、第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2022年)など多数の国際展に出品。2023年、アレクサンダー・カルダーの才能を反映する革新的な彫刻作家に贈られるカルダー賞を受賞。

All images 🄫Aki Sasamoto. Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo

基本情報

会期

2025年823()1124(月・振休)

開館時間

10:00-18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
*8・9月の毎金曜日は21:00まで開館

休館日

月曜日(915日、1013日、113日、1124日は開館)、9月16日、1014日、114

会場

東京都現代美術館 企画展示室 3F

観覧料

一般1,500円(1,200円)/大学生・専門学校生・65 歳以上1,000円(800円)/中高生600円(480円)/小学生以下無料/ツインチケット一般2,500円
※(  ) 内は20名様以上の団体料金
※本展チケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます。
※小学生以下のお客様は保護者の同伴が必要です。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方と、その付添いの方(2名まで)は無料になります。
※ 毎月第3水曜(シルバーデー)は、65歳以上の方は無料です。(チケットカウンターで年齢を証明できるものを提示)
※家族ふれあいの日(毎月第3土曜と翌日曜)は、18歳未満の子を同伴する保護者(都内在住を証明できるものを提示/2名まで)の観覧料が半額になります。

[学生無料デー Supported by Bloomberg]
9月13日(土)・14日(日)は中高生・専門学校生・大学生は無料です。

主催

東京都現代美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)

助成

文化庁・令和7年度我が国アートのグローバル展開推進事業
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