河原温 全体と部分 1964-1995

展覧会概要

河原温は"Today"シリーズの絵画―〈デイト・ペインティング〉、すなわち日付の絵画として知られる連作によって、世界的に著名な美術家です。単色の地に、白い文字でただ日付だけを書いたこの連作は、1966年1月に開始され、今日まで―毎日ではないにせよ、少なくともひと月も欠かすことなく―30年以上にわたって描き続けられています。きわめて単純でストイックに見えるこの〈デイト・ペインティング〉は、しかしながら、日常的なものから宇宙的なものまで、あらゆるものを貫流し偏在する「時間」というものの得体の知れなさを語って余りあるものと言えるでしょう。

河原温の芸術は、これまで、概念芸術(コンセプチュアル・アート)との関連で語られがちでした。しかしながらその本質は、むしろ還元主義的な西欧の近代美術の展開の枠組みをはるかに越えたところにあります。時間的なパースペクティヴ、すなわち「歴史」を超越し、芸術と人間の存在そのものの深奥に射程を定めるその芸術には、東洋的な叡知と西欧的な知性との見事な融合を見て取ることができるでしょう。西欧的なシステムが様々な局面で限界を露呈し始めるにつれて、その評価はますます高まっています。

河原温の芸術は、常に確固たる存在感を持ちながら、若い世代も含めて、世界中の同時代の芸術家たちに計り知れない影響を与えてきました。また、河原温自身の作品世界も、《I Read》、《I Met》、《I Went》、《I Got Up at》、《I Am Still Alive》、そして《100万年》と、領域を広げています。しかしながら、日本出身の芸術家として国際的に最も重要な作家の一人であるこの巨匠の全貌を目にする機会は、これまできわめて少なかったと言えるかもしれません。今回の展覧会は、1964年から今日までのその活動を網羅したもので、これまでで最大規模の回顧展となります。一つの千年紀の終わりに近づきつつある今、河原温の芸術は、われわれが人間的な生の力を再び獲得するために、何よりも必要なものと言えましょう。

今回の展覧会は、フランス、リヨン近郊のヴィルウルバンヌにあるル・ヌーヴォー・ミュゼ/現代芸術研究所によって最初構想され、同館での会期を終えたのち、カステロ・ディ・リヴォリ(イタリア)、バルセロナ現代美術館(スペイン)、ヴィルヌーヴ・ダスク近代美術館(フランス)を経て、本館に巡回するものです。


展覧会情報

展覧会名
河原温 全体と部分 1964-1995
会期
 
1998年1月24日(土)~4月5日(日)
休館日 
月曜日
開館時間 
10:00~18:00 毎週金曜日は夜間開館21:00まで(入場は閉館の30分前まで)
観覧料 
一般700円、児童・生徒350円
主催 
東京都現代美術館+ル・ヌーヴォー・ミュゼ/ 現代芸術研究所(ヴィルウルバンヌ、フランス)
協賛 
アサヒビール株式会社

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