MOTアニュアル2008 解きほぐすとき

展覧会概要

1999年にスタートした「MOTアニュアル」は、その時々の時代状況や美術動向を切り取るテーマを設定し、若手作家を中心としたグループ展として毎年開催しています。本年は、「解きほぐすとき」をテーマに、事物をばらばらに解体し、解きほぐすことで自分なりに世界の輪郭を捉えようとする5人の作家を紹介します。

私たちの身のまわりには、多くの物や情報があふれています。それらは生活を豊かにする一方、善悪や真偽の判断を難しくし、境界や輪郭をわかりづらくしています。物事の成り立ちや本質を理解しようとする時、目の前にある形をばらばらに解きほぐしてみると、表面上隠されていた構造や裏側が見えてくることがあります。本展でとりあげる5人の作家は、事物のあらましを読み解き、解きほぐすという行為の中で、細分化された断片と向き合い、取捨選択を繰り返すことで、自分なりの価値判断をおこなっています。あたり前と思っていた世界を解きほぐすとき、いつもとほんの少し違う何かが見えてくるかもしれません。


展覧会情報

会 期
2008年2月9日(土)~2008年4月13日(日)
休館日
月曜日(ただし2/11は開館、2/12は休館)
開館時間
10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
主 催
財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
助 成
財団法人 朝日新聞文化財団
協 力
株式会社 川島織物セルコン
観覧料
一般900円(720円) 学生720円(570円) 中高生・65歳以上450円(360円)
*( )内は20名様以上の団体料金
*MOTコレクションもご覧いただけます。

共通パスポート
一般2,000円 学生1,600円 中高生・65歳以上1,200円
*同時開催の川俣正[通路]と共通で会期中何度でもお使いいただけます。
セット券
一般1,500円 学生1,200円 高校生・65歳以上750円 中学生650円
*同時開催の川俣正[通路]、「MOTコレクション」もあわせてご覧いただけます。


アーティスト

金氏徹平 - Teppei Kaneuji

様々な素材を組み合わせ、白い粉や石膏をかけた作品や、ぬり絵の線を切り抜き、つなぎ合わせた作品など。一定に見える物の輪郭を流動化し、見えるものと見えないものの間を表出させる。本展では、一貫したテーマを持ちながら様々な手法を用いている金氏の複数のシリーズを同時に展覧する。展示室に合わせておこなうインスタレーションは、空間を流動化し、私たちを異空間に誘うことだろう。

1978年 大阪府生まれ
2001年 Royal College of Art, Sculpture course (London)交換留学
2003年 京都市立芸術大学大学院 修士課程彫刻専攻 修了

《個展》
2002年 空白と漂白 white / drift(児玉画廊/大阪)
2003年 白煙と濃霧 smoke / heavy fog(児玉画廊/大阪)
2004年 小動物と大洪水(児玉画廊/大阪)白夜のユーレイ(児玉画廊/東京)
2006年 飛沫と破片(児玉画廊/大阪)
2007年 金氏徹平展 splash & flake(ミュージアムスタジオ/広島市現代美術館)
2007年 smoke & fog(児玉画廊/東京)hole & all(児玉画廊/大阪)

《グループ展》
2002年 京都市立芸術大学制作展 奨励賞
2003年 神戸アートアニュアル03 grip the gap(神戸アートビレッジセンター)
2007年 笑い展:現代アートにみる「おかしみ」の事情(森美術館)
2007年 VOCA展2007(上野の森美術館)
2007年 美麗新世界 Contemporary Visual Culture from Japan(北京、広州)

◇TEAM10 金氏徹平 「Ghost In The City Lights」 2008年2月2日(土)−3月2日(日)
  トーキョーワンダーサイト渋谷


金氏徹平 参考図版 《飛沫と破片》 2007年 提供:国際交流基金 撮影:Yan Da Wei

高橋万里子 - Mariko Takahashi

室内灯で撮られた輪郭のぼやけた人形や人物の写真。モチーフの個性や固有の輪郭を解体することで、醜さや欲、おかしみを含んだ混沌とした存在としての人間をあらわにする。

本展では、これまでで最大サイズのポートレートに挑戦する。
実物大とのサイズの違いがもたらす違和感が、私たちの誰もが持つ不安や欲望をかきたて、それらを含めた人間存在の悲しさと美しさとを想い起こさせてくれることだろう。
1970年 神奈川県生まれ
1994年 東京造形大学 造形学部デザイン学科 卒業

《個展》
2003年 「くびったけ」(photographer's gallery)
2004年 「ハチミツ」(photographer's gallery)
2004年 「spring」(photographer's gallery)
2004年 「ニジノハラワタ」(photographer's gallery/IKAZUCHI)
2006年 「手触りの細く小さきほど」(photographer's gallery)
2007年 「月光画」(photographer's gallery)

《グループ展》
2005年 「借りた場所、借りた時間 photographer's gallery 横浜展」(BankART studio NYK)
2006年 「VOCA展 2006」(上野の森美術館)

◇「現代写真の母型2008『写真ゲーム』」 2008年1月26日(日)-3月30日(日) 
  川崎市市民ミュージアム・アートギャラリー


高橋万里子 参考図版 《月光画》 2007年

立花文穂 - Fumio Tachibana

紙や文字、印刷をもちいたインスタレーションや造本、写真による表現。紙や文字を断片化し、並べたり、綴じたりすることで、元の意味や機能を剥奪し、常識や固定観念の隙間にあるものを提示する。
本展でも、これまでの自作を含む写真を印刷物として展示するなど、紙を使うことを基底としたインスタレーションをおこなう予定である。美術館空間を立花がどのように変容させるのか、期待される。

1968年 広島県生まれ
1992年 武蔵野美術大学 造形学部視覚伝達デザイン学科 卒業
1994年 東京藝術大学大学院 修士課程美術研究科 修了

《個展》
1995年 MADE IN U.S.A.(佐賀町エキジビットスペース)
2000年 体(からだ) (ナディッフ)
2000年 クララ洋裁研究所 (ナディッフ)
2001年 変体(ギャラリー360°)
2003年 変々体々(ギャラリー360°)
2005年 Q体(ギャラリー360°)
2006年 木のなかに森がみえる(SHISEIDO LA BEAUTE, パリ)
2007年 引体または、また又変々体々(ギャラリー360°)

《グループ展》
1999年 Installations by Asian Artists in Residence (Mattress Factory, ピッツバーグ)
2004年 衣服の領域(武蔵野美術大学美術資料図書館)
2005年 VOCA展2005(上野の森美術館)

◇立花文穂責任編集 季刊『球体』六耀社 発売中


立花文穂 参考図版 「クララ洋裁研究所」より 2000年 撮影:久家靖秀

手塚愛子 - Aiko Tezuka

織物や刺繍をもちいた作品と油彩。既製の織物ほどいたり、その縦糸をおもてに引き出して見せたり、あるいは刺繍のおもてと裏を同時に見せるなど、構造を大胆に顕在化させる。
本展では、約11メートル幅の巨大な織物に挑戦する。様々な国や時代の文様、そして絵画や彫刻における襞の表現を引用し融合した図が足元から立ち上がる。
さらに織り途中の縦糸が6.5メートルの天井まで伸び、巨大な織機の前に立った感覚を起こさせるだろう。これまで、既製の織物を解体することで、過去の時間と向き合ってきた手塚の未来への方向性を示した新たな展開が見られるはずである。

1976年 東京都生まれ
2001年 武蔵野美術大学院 造形研究科油絵コース 修了
2005年 京都市立芸術大学大学院 美術研究科 博士(後期)課程 油画領域 修了

《個展》
2004年 ART COURT GALLERY
2005年 INAXギャラリー2
2007年 府中市美術館公開制作「気配の縫合-名前の前に」
2007年 「薄い膜、地下の森」(スパイラル・ワコールアートセンター)
2007年 ケンジタキギャラリー(名古屋)

《グループ展》
2005年 VOCA展2005 佳作賞(上野の森美術館)
2006年 越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭
2007年 「『森の絵画』;『絵』のなかで考える」(岡崎市美術博物館)
2007年 「サイクルとリサイクル」(愛知県美術館)

◇「手塚愛子展」 2008年2月14日(木)−3月11日(火) 第一生命南ギャラリー


手塚愛子 《縦糸を引き抜く 新しい量として》 2003年

彦坂敏昭 - Toshiaki Hicosaka

版画にドローイング。写真を凹版によって独自の技法で紙に定着させ、そこにあらわれた線をなぞっていく。一度解体された輪郭の一つひとつと対話を繰り返し、選び取っていくことで、独自の世界を生む。
本展では、数点の新作を中心に、モノクロームの作品も展示。着実に足元をみつめながら、静かな飛躍を続ける彦坂の世界観を美術館で初めて紹介する。

1983年 愛知県生まれ
2005年 京都造形芸術大学 情報デザイン学科卒業

《個展》
2004年 テサグリの図画(ギャラリーマロニエ)
2004年 闇の差し込む居場所(ギャラリー手)
2005年 物見の台(ギャラリーマロニエ)
2006年 edit edition(stem gallery)
2006年 「ARTISTS ON BOARD-2つの展覧会-岩熊力也 彦坂敏昭」(TAMADA PROJECTS ARTSPACE)

《グループ展》
2005年 秘伝ディメンション展(テンポラリーコンテンポラリー)
2005年 《気》派展(ギャラリー手)
2006年 越後妻有アートトリエンナーレ2006

◇「第2回 shiseido art egg 彦坂敏昭展」
 2008年3月7日(金)-3月30日(日) 資生堂ギャラリー

◇「ARCO2008」solo project
 2008年2月13日(水)-2月18日(月) Feria de Madrid(スペイン)


彦坂敏昭 《テサグリの図画No.11》 2003年 高橋コレクション蔵

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