2026年02月18日(水)
アーティストの一日館内授業③
「現代美術を通じて、他者の存在について考える」
ワークショップ
青山 悟氏
工業用ミシンを用いて、労働やジェンダーに関わる社会問題に切り込む刺繍作品で知られる青山さんによるワークショップのテーマは、「現代美術を通じて、他者の存在について考える」。
既存の方法にとらわれない表現のプロセスを重視した複数のワークによって構成され、自由な発想で表現するための準備体操にはじまり、思いもよらぬ方法で描くドローイング、他者との共同によって作り上げる絵画といった3 つのペアワークを通して、他者との境界線や存在について向き合う機会を創出しました。(実施日:11月8日(土)13:30~16:00)
今回の参加条件は、二人一組で参加すること。親子や夫婦、友人同士など、様々な関係性の19組38人が参加しました。
繊細な刺繍作品も間近で鑑賞
ブルーライトを当てると国境と国名が浮かび上がる作品
作品紹介では、制作過程の動画を見せていただきながら、ミシンを用いた刺繍作品を間近で鑑賞しました。また、ブルーライトを当てると国境が浮かび上がる作品などを通して、他者との境界線や他者の存在について考えるきっかけとなるお話も。
“他者の存在について考える”ために取り組んだ1つ目のワークは、『二人で一つの漢字を書く』。二人一組で1本の鉛筆を持ち、一切相談せずに互いの力の均衡を感じ取りながら『今年を表す漢字』を書きました。
続いて取り組んだのは『ジャンピングドローイング』。1分間ジャンプし続けながら、相手の姿を描くというワークです。身体全体が揺れ動く中で描き続けるハードな体験を経て、自分の意思だけでは描くことのできない絵が完成。
『ジャンピングドローイング』のワーク
身体全体が揺れ動く中で描いた作品
最後に時間をかけて取り組んだのは、四つ切サイズの画用紙に、赤・青・黄・白の絵具を使い『“平和”をテーマに二人で1つの絵を描く』ワーク。筆を持つことも、色を選ぶことも、混色することも、紙のどこに何を描くかも、会話はしないことがルールです。1本の筆を介して相手の動きを感じ取りながら制作に取り組みます。
会場内では、クスクスと楽しそうな笑い声が響きわたっていました。
相談せずに相手の動きを感じ取りながら描きます
作品が完成したら、まずは自由に会場内を巡り、参加者同士での作品鑑賞を行いました。
制作を通して感じたことを交えながら、一組ずつ作品発表しました。
友人同士で参加したペアからは、「相手が手を添えてくれる様子もあり、描くプロセス自体が平和だった」という感想が聞かれました。
終了後、参加者からは以下のコメントが寄せられました。
・参加した方々のそれぞれの視点が新鮮で、気づきを得ました。
・ 絵を描くのが苦手ですが、それでもとても楽しめました。現代アートは意味不明で好きではなかったですが、アートを通じて、人に届くもの、つながるものという体験が新鮮でした。
・ 青山さんの考えを伺うことができ、現代美術をはじめとする芸術に対する理解がより深まったと感じます。
・ 座学ではなく体験メインで他者の存在を感じることができました。冒頭に現代美術や作家についての説明もあり、ただ絵を描いて楽しいだけでなく、わかりやすかったです。
「アーティストにとって大切なことは、自分がアーティストであるという自覚を持つことです」という青山さんからの力強いメッセージから始まった本ワークショップ。その言葉を受けて取り組んだ表現は、いずれも他者と協力して取り組むことで成り立つ内容でした。各ワークの過程では、普段から良く知っている相手であっても思いがけない一面に気づく場面があり、他者の存在について改めて考えるきっかけとなったようです。さらに、各プロセスにおいて丁寧な説明が行われたことで、作品の背景にあるアーティストの思考への理解も自然と深まったように思います。(A.T)
