2025年12月05日(金)

美術館で、あえて“道草”を

ギャラリークルーズ

秋の気配が少しずつ深まる9月の金曜日、夜間開館の穏やかな時間帯を活かし、「美術館で道草を ~静けさの中、感覚をひらく~」と題したプログラムを開催しました。
(開催日時:912() 18:0019:3019() 18:0019:30

特定の感覚を意図的に制限することで、逆に別の感覚が研ぎ澄まされるという体験をしながら、美術館の空間や作品、自らの感覚と丁寧に向き合ってみることを目的とした本プログラム。忙しい日常の流れからそっと離れ、90分間「道草」をするようにゆるやかな時間を過ごしていただきました。

触察模型に触れ、当館の建物の全体像を触覚で辿ってみたり、
アイマスクで視覚を制限した状態でエントランスを歩いてみたり、
オノ・ヨーコ《握手をする絵》を鑑賞したり、
「水と石のプロムナード」で、風の流れや音、空気の温度の変化を感じてみたり……

「見えないからこそ、聞こえる音がある。」
「聞こえないからこそ、見えてくるものがある。」

そんな感覚のシフトを、美術館という静けさに包まれた空間の中で存分に体験していただけたように思います。

プログラムの最後には、当館の開館30周年を記念して作成した特別デザインのドリップコーヒーをプレゼントしました。参加者ご自身でハンドドリップしていただき、立ちのぼる香りや湯気、そして味わいをじっくりと感じながら、感覚を少しずつ「日常」へと戻していきます。参加者からは、

  • ただただ「今」に集中することができた。
  • ぼーっとすることができる贅沢な時間だった。
  • 忘れていた感覚を思い出すことができて、リフレッシュできました。


といった声が自然とこぼれてきました。
また、アンケートには次のような感想も寄せられました。

  • 普段しないような美術館の楽しみ方を知ることができました。
  • 社会人になって6年目。今の私に必要な時間でした。
  • 感覚過敏がある自分でも、自由に楽しめる場所だと感じられました。
  • ただ“そこにいる”ということの大切さに気づけました。


今回のプログラムは、日常から少し離れ、自分の内面と静かに向き合う時間となりました。美術館という場所そのものが、心や感覚を整える「ウェルネスの場」にもなり得るとともに、「立ち止まることを自分で選ぶ」という体験をそっと後押ししてくれる、そうした可能性もあることをあらためて感じました。情報があふれ、日々の生活に追われていると、「立ち止まること」は意識しなければ難しいことかもしれません。だからこそ、美術館が、誰でもなく自分自身にそっと寄り添える場所として、皆さんの日常の選択肢に加われば嬉しく思います。(M.A

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