2025年07月09日(水)

現地でも、オンラインでも一緒に鑑賞を楽しむ

ミュージアム・スクール

2025年5月29日(木)に墨東特別支援学校病院訪問つばさ学級の児童・生徒の皆さんとの作品鑑賞を行いました。体調に応じて、オンラインと現代美術館での現地組に分かれ、それぞれ美術館スタッフと一緒にめぐっていきました。

最初にオンライングループの様子をお伝えします。オンライングループでは、4人の小学生・中学生のみなさんと先生方と一緒にコレクション展示室3Fをメインに鑑賞しました。
最初の展示室に入り全体を見渡すと、大きな絵画作品が四方に並んでいました。作品の大きさをみなさんに伝えるために、まずは作品から少し離れた位置で、全体像を眺めることにしました。

  • 辰野登恵子による絵画作品を鑑賞

作品とその前に立つ美術館スタッフを遠くからカメラで映すと、作品の大きさがよくわかります。大きさ以外にも、描かれている様々な形や色合いなどがよくみえてきました。例えば、画面に描かれている色鮮やかな楕円形がブドウの粒にみえたり、あたたかい色味の作品をみて、太陽のようにみえたり、中にはオレンジジュースの中にいるようだとチャット機能を使って教えてくれる生徒さんもいました。

遠くから全体をみたあとに、今度は作品に近づいて鑑賞しました。近くで作品と向き合うと、絵の具の質感や、モチーフの細部をじっくり鑑賞することができました。

展示室を進んでいくと、今までみてきたような絵画作品だけではなく、鉛筆、安全ピン、紙袋、ボールなど一見すると「これも作品にできるの?」と思ってしまうものが素材として使われている作品たちに出会いました。一緒に鑑賞していた先生が、中央が削られた鉛筆の作品をみて「これは、使えるのかな……」とみなさんについ、笑いながらこぼす場面もありました。

  • 豊嶋康子《鉛筆》

  • 髙柳恵里《ボールの袋入れ》

いろいろな作品を鑑賞し、最後の展示室の入り口にやってきました。入り口を注意深く観察すると、床や壁がほんのり赤くなっているような……
一体どんな作品が待っているのか、わくわくしながら展示室の中に進んでいくと、そこには、赤い何かがうごめいている大きな作品が展示されていました。近づいて作品をみると、うごめいていたものが赤く光る数字だったことが分かりました。それらの数字は様々な速さで動いています。これは、宮島達男さんの《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》という当館のコレクションの中でも代表的な作品です。児童・生徒のみなさんからは「絵が動いてる」「テレビみたい」といった声がチャット上にあがり、画面の向こうで、作品鑑賞に夢中になっている様子を感じることができました。(R.T

宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》

続いて現地組の鑑賞の様子をお伝えします。現美に来るのは初めてという高校生と一緒に屋外彫刻作品と、コレクション展をめぐっていきました。

鑑賞のスタートはエントランスにある作品から。館内各所には、鈴木昭男さんによる《点 音》という、足のようにも耳のようにも見えるプレートがあります。「実はこの上に乗ってもいい作品なんですよ」と伝えると驚く様子も。このプレートの上に立って、目の前に広がる景色を見ながら、聞こえてくる音に耳を傾ける時間を設けました。お客さんの少ない午前中ということもあり、静かなエントランスでは思わぬ音にも気づきます。

その次は、屋外にあるアンソニー・カロの《発見の塔》へ。

まずは、作品全体を観察します。「のぞき込めそうな場所がある」とのコメントも。
続いて、美術館職員立会いの下、作品の中に入ったり、登ったりしました。

登る階段の場所によって、行きつく先が違うことをお伝えします。
好きな階段を選んで登っていくと、下から見たときにのぞき込めそうだと気づいた場所に行きつきました。
メガホンの形状になった鋼のパーツが見て取れます。「ここから小さな声で話しても下にいる人に聞こえるんですよ」とお伝えしたところ、下で待っている先生の名前を呼びかける生徒さん。どれくらい小さな声でも聞こえるかを試したところ、耳元で内緒話をささやくくらいの大きさでも先生に届き、びっくり!

ひとしきり屋外彫刻作品を見たあとは、コレクション展示室の3Fへと向かいます。

この部屋には大きな平面作品がたくさん展示されています。最初に辰野登恵子さんの作品へと足を進めました。

生徒さんが作品のキャプションに目を向けると、“Untitled”とあり、特に具体的なイメージを示すタイトルはついていないことがわかりました。「作家さんはあえて無題としているようだけど、自分がタイトルをつけるとしたら何にするか考えてみよう」ということで、先生も交えて作品から想起されるタイトルをみんなで考えました。

K先生「のっぺらぼう」「あ~、たしかに。顔のない人のようにも見えますね」
美術館スタッフT 「グリーンピースと梅干。お皿の上に載っているものを拡大してみたところにも見える」
生徒さん「だるまおとし」「この積みあがっている感じかな?確かに一番上の赤い形が少しずれていて、落とされそうな感じもするね」
などと、タイトルを通して、それぞれの視点を交換しつつ、そこから想像が広がる面白さを共有しました。

その後も、時間ギリギリまで生徒さんが見たい作品を中心に、鑑賞を楽しみました。
現地組も、最後は宮島達男さんによるデジタルカウンターの作品を鑑賞。一つひとつの数字の濃さが違っていたり、異なる速度で動いている様子をじっくり観察。最後は作品の前で記念写真を撮って終了です!

後日寄せられた感想によると、現地組も、オンライン組も、宮島達男さんによるデジタルカウンターの作品が印象に残ったようです。現地での鑑賞にとどまらず、オンラインでも鑑賞を楽しんだ今回のミュージアムスクール。チャット機能を通じた活発なやりとりを通して、異なる場所から参加しているにも関わらず、まるで美術館で一緒に見学しているようだった、というコメントも教員の方からありました。(A.T)

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