2024年03月31日(日)

一人ひとりの《発見の塔》

ギャラリークルーズ

当館屋外にあるアンソニー・カロの《発見の塔》をテーマに、「セルフクルーズ作ってみよう『〇〇の塔』」をオープンワークショップ形式で実施しました。美術館スタッフによる案内のもと、参加者自身で《発見の塔》をよく観察したり登ったりしてから、塔が臨めるエントランスで、紙のパーツを使ってオリジナルの塔づくりをしました。参加者は、塔の内部がどうなっているのか、塔からはどんな景色が見えるのか、塔を観察し実際に登ったことで、気づいたことがたくさんあったようです。

※プログラム内容の詳細についてはこちら(前回「セルフクルーズ」)

参加者の中には、このプログラムを目的に来館される方もいれば、偶然通りかかって参加される方もいて、予約なしで自由に参加できるプログラムの良さを実感しました。興味を持って足を止める海外からの来館者の姿もありました。今回は親子連れのほかに、若い方から高齢の方まで、お一人で参加される方も多く見受けられました。午後からは参加人数が徐々に増え、計13組・24名の方に参加いただきました。

塔づくりでは、自分の席から窓越しに《発見の塔》をよく観察しながら作業する人、家族と一緒に相談しながら一つの塔を合作する人、手元のパーツを丁寧に見比べながらアイディアを練っている人など、それぞれの進め方で真剣に取り組んでいました。

完成された作品をいくつかご紹介します。参加者には塔のコンセプトやお気に入りのポイントなどを伺いました。

《いつかの夢の塔》
完成作品に偶然日の光が当たり、夢の中で訪れた場所が、光に包まれてふいに目の前に現れた気がして、このタイトルを思いついたそうです。パーツを斜め上に伸びていくようにつけることで、上に登っていく様子を表現しています。

《循環の塔》
《発見の塔》に登って、塔の内側を観察してみて、「内臓」というキーワードが浮かんだそうです。2本の柱の間をパーツ同士でつなげて、塔の上からも下からも何かが流れて循環しているようなイメージが伝わってきます。

《あひるくんの塔》
「あひる」らしい形にするために、用意された柱を切って高さを調整していました。
よく見ると、小さいあひるが塔の中にいたり、裏側にもこっそり隠れていたり!ブランコもかかっていて楽しげな塔が出来上がりました。

《歓喜の塔》
最近コンサートでベートーヴェンの交響曲第9番『歓喜の歌』の合唱に参加してきたことを受けて、《歓喜の塔》を制作したそうです。リズミカルに鉛筆で紙にカーブをつけていて、『歓喜の歌』の旋律が今にも聞こえてきそうです!

100回までつづく塔》
幼稚園で習った“くるりんテープ” (セロハンテープを輪にして、両面でとめる方法)を使って制作していました。左下の小さい三角錐のような部分は自分自身を表現しているそうです。セロハンテープを上手に活用して高いところまで続いていきそうな塔が完成しました。

《ちょっとなら住めそうな塔》
《発見の塔》が家の造りみたいになっていると感じて、家のような空間を目指して塔を作ったそうです。二階建てになっており、インテリアにもこだわりが。裏から見るとキッチンや家具があり、二階部分では丸い穴が開いたパーツを窓に見立てています。家のような設えで本当に住めそうです!

《風見鳥のイロハ塔》
普段からペーパークラフトをやっていることもあり、本プログラムに興味を惹かれて参加されたそうです。主役の「風見鳥」のための塔なので、階段はあえて作らず、外からは塔を眺めることしかできない造りだそうです。風を受けて今にも回り出しそうです。

このように、参加者それぞれの着眼点でパーツの組み合わせに工夫を凝らし、バラエティー豊かな塔が完成しました。中には、塔の中に自分自身や身近に起こった出来事を投影した人もいました。他にも、塔をまわりから眺めるだけではなく、実際に登って、塔の内部や構造を間近に見ることで、気づいたことや感じたことを塔づくりに活かしている人もいました。

参加者のアンケートには、「こどもの頃に秘密基地を作って遊んだのを思い出しました」「思いがけず久しぶりに内面と向き合えた時間」「とても楽しんで色々な形を見立てながら作っていました」「美術の授業を思い出し、熱中出来た」「塔の中にのぼれたのがとても嬉しかった」という感想がありました。参加者が思い思いに塔と向き合いながら、「セルフクルーズ」を体験していた様子が伝わってきました。

当館に来館する機会がありましたら、パークサイドエントランスにある《発見の塔》をぜひ観察してみてください!(S.O

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