2023年09月05日(火)

見つめて、想像して

ミュージアム・スクール

夏の日差しが降り注ぐ725日、東久留米市立南中学校美術部の3年生にご来館いただきました。ふだん美術部では、共同制作をはじめ精力的に活動しているそうです。夏休みの始まりに美術館で過ごす体験は、皆さんにとってどのようなものとなるでしょうか。
最初はコレクション展をスタッフと巡り、その後は企画展も含めて各自で鑑賞します。

入ってすぐ生徒さんたちを出迎えたのは、アルナルド・ポモドーロの《太陽のジャイロスコープ》。周囲をぐるっと回りながらよく観察し、素材や重さを想像してみました。その構造から「地球儀みたい」という声がありました。
同じ空間にあるオノ・ヨーコ《インストラクション・ペインティング》を見つつ、階段で3階に上がります。11個並んだワードを一つずつ読み、どれが今の自分にピッタリくるか考えてもらいました。

次は宮島達男の展示室へと移動します。出会いのワクワク感を高めるべく、展示室に入る前に、先に二人の生徒さんに偵察をお願いし、作品の様子をジェスチャーで教えてもらうことにしました。
戻って来た二人は、指で「123、…」と数えたり、閉じた手のひらを開く動作を繰り返したりと、思い思いの方法で表してくれました。待っていたメンバーも、一体どんな作品なんだろう?と笑顔に。想像を最大限に膨らませたら、いよいよ対面です。

イメージした姿と比べてどうだったでしょうか。
生徒さんたちはしばらくの間、1728個並ぶデジタルカウンターの光に照らされながら、少し驚いた表情で見つめていました。
ある生徒さんは、「モノクロを想像していたので赤色だと思わなかった」そうです。確かに、“色”ってジェスチャーでどう伝えられるでしょうか? 考えてみるのも面白そうです。
見ているうちに「数字の変化する速度が違う」「光が強いものと弱いものがある」など、次々と気づきを教えてくれました。タイトルの《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》にある“それ”についても、各々思いを巡らせてくれたようでした。

そして、最後にサム・フランシスの展示室へ。
先ほどとは打って変わって、四方を巨大な白いカンヴァスに囲まれた明るい空間です。

まずは、作品に近づいたり離れたりしながら、初対面の時間を過ごします。
「何に見えるでしょうか?」と尋ねると、「プレパラートで何かを観察している感じ」「DNAの二重らせん構造みたい」などの発言がありました。横長の画面にアクリル絵の具でダイナミックに描かれた様子から、生命感や自然科学っぽい印象を受けたようです。
また、絵の具の飛び散った水しぶきのような表現や、カンヴァス同士の太い線の繋がりに注目した生徒さんもいました。皆で気づきを共有するたびに、作品が新たな姿で立ち現れてくるようです。

ここでお題を出してみました。
「この広い展示室の中で、自分のベスト・ポジションを見つけてみましょう」
感覚を研ぎ澄ませて、どの場所から作品を見るのが好きかを探してみます。
最初から迷わず位置を決める生徒さんもいれば、少しずつ位置を変えては作品を見つめて…を繰り返して微調整する生徒さんも。
自分のポジションを覚えて、探す時間は終了。

選んだ場所は、なんと全員バラバラでした! いくつかご紹介します。
部屋の隅を選んだ生徒さん:「迫ってくるような勢いのある2枚に挟まれて見ていたい」
それぞれ違う1枚の正面を選んだ生徒さんたち:「全体に絵の具が散りばめられている感じが好き」「まん中に広い余白があるのが好き」
ある1枚に背を向けて立った生徒さん:「アーチ型の太い線の手前に立つと、自分がすっぽり収まりそう。そこから部屋全体を見渡したい」
選んだ理由からは一人一人の見方や考え方がうかがえ、納得させられるものがありました。

全員で過ごしたのは最初の30分程度でしたが、自由鑑賞の前に、心と体をほぐしてもらえたでしょうか。その後は「デイヴィッド・ホックニー展」「あ、共感とかじゃなくて。」展も含めて各自で楽しんだそうです。
美術館で過ごした体験が、皆さんのこれからの糧となることを願っています。今回見たコレクション展の作品は今後もときどき展示されるので、何年後かにもし再会したら違って感じられるかもしれません。ぜひまた遊びに来てくださいね。(S.H

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