2022年03月07日(月)

オンラインワークショップ『frottage 今日を、記す』

ワークショップ

2月12日(土)、『frottage 今日を、記す』と題したオンラインワークショップを実施しました。小学生以上(小学4年生までは保護者同席)を対象とし、当日は7名が参加されました。

講師をつとめたのは浅野純人さん。作家や教員、アートプロジェクト運営、造形教室の主宰などの多様な活動実績を持つ浅野さんは、日頃から多様な立場の人々に接し、様々な素材や表現、価値観と向き合う中で、美術を身近なものとして捉えられるような活動を多角的に展開しています。


今回のワークショップでは、コレクション展の「Journals 日々、記す vol.2」というテーマからきっかけを得て企画されました。何気ない日常を見つめ直した各々の視点を紙版によって表し、その版をフロッタージュ(こすり出し技法)により刷ることで、日常へ向けられたその人ならではの眼差しを浮かび上がらせます。そして参加者によって異なる「今日」ならではの視点や感覚を、視覚的に共有することを目的としたものです。

参加者には、ワークショップで使用する材料などを一つのキットにまとめ、事前に送付したうえで当日を迎えました。

  • 事前送付したキットの内容物

  • 講師の浅野純人氏

ワークショップでは、教育普及スタッフからワークショップ中の注意事項や使用資材の確認を行った後、講師の浅野さんに進行役を引き継ぎました。


浅野さんからは、簡単な自己紹介の後、コレクション展のハンドアウトを用いながら今回のプログラム意図について下記のような説明がありました。

  • 一見、派手さのない行為であっても、積み重ねたり繰り返されることで作品としての魅力が出ていること。
  • 私たちの人生も大きなトピックばかりではなく、何気ない行為の積み重ねや繰り返しで成立していること。
  • ワークショップへの参加を通して、毎日の何気ない生活や活動から見えてくる、その人ならではの表現してもらいたい。同時に他の参加者とそれを共有することで、自分らしさのようなものが見えてくることを期待していること。


続けて、事前送付した素材(スパンコールやバッグクロージャー、クリップなど)やルーズリーフの穴を活用したフロッタージュの実演を含めながら、画用紙からつくる紙版の制作手順の説明に移ります。

  • フロッタージュの実演

  • 紙版の説明

その際、同じ版を使っていても色や刷り方を変えることで積み重ねや繰り返しを表現しやすいことや、〇△のような簡単な形でも表現はできることなど、制作のコツについてもお話がありました。

そして、本題となる今回の制作テーマが伝えられます。
「今日のあなたを作っているもの、こと」

制作時間は30分ほどでしたが、参加者は集中して各自の作業に没頭していました。

制作時間を終えたら、参加者の作品を一人ずつ紹介し、全員で鑑賞します。日頃のルーティーンを表現したものや、居住地周辺の風景を表したもの、仕事や趣味の要素を表したものなど、参加者各々が咀嚼した制作テーマが表現されていました。

最後に浅野さんから、「何気ないことでも改めて表現することで記憶に留めることができ、それはフロッタージュのような手軽な手段でも可能です。今日の作品は今日のあなたを映していますが、明日同じ紙版で刷ったら、作品や感じ方がどう変化するか試してみて欲しいです」とのコメントがあり、ワークショップは終了となりました。


終了後のアンケートには、参加者の皆さんから以下のような感想が寄せられました。

  • 無理なく自然と楽しめました。美術を日常に優しく取り込む手法の体験だったと思います。
  • 浅野さんがまずご自分のアトリエ紹介してくださいましたが、こういう機会はなかなかありませんので、よりアーティストさんとの距離が縮まり、その後の制作への期待感が増しました。
  • ワークショップのテーマからコレクション展「日々記す」の内容がどのようなものだったか、端的に伝わってとても良かったです。

また、今回のワークショップの簡易版として、どなたでも気軽にお楽しみいただけるワークシートを、浅野さんに作成していただきました。
※ダウンロードはこちら⇒ worksheet.jpg

取り組んだワークシートの写真を、Twitterで「#今日を記す」をつけて投稿すると、講師の浅野さんからリアクションがあるかもしれません(20223月末まで予定)。

どうぞ、美術と日常とを繋ぐきっかけとしてお楽しみいただければ幸いです。(M.A

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