2020年07月28日(火)

ワークショップ「ハム☆スター 美術館で〇〇中!?」実施

ワークショップ

2020年度のワークショップは18歳以上を対象に実施(実施日:2020年7月11日)しました。本来は小学5年生以上を対象に3月に実施の予定でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で対象も変更し延期しての実施となりました。講師をつとめたのは、美術家の時吉あきなさん。時吉さんは、スマートフォンで様々な角度から撮影した犬などの写真をコピー用紙に出力し、対象を原寸大の立体コラージュとして再現する作品を制作しています。平面の写真を強制的に立体にすることで不自然な歪みや独特の表情を持つ「ほぼ本物」の犬たちは、どこか違和感やユーモアがあります。

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「自作を説明する講師の時吉あきなさん」

今回のワークショップでは、この時吉さんの制作手法を用い、時吉さんの作品の中でもナビゲーター的に登場するハムスターを制作し、ハムスターの目線を借りて、いつもとは少し違った日常(美術館)の見方を体験してみようという企画です。ちなみに、時吉さんはハムスターを幼少期に飼っていて、よく脱走したそうで、ハムスターの気持ちになり探したというエピソードが今回の企画のきっかけにもなっています。

当日は、感染拡大防止の観点から3密を避けるために、講師や参加者との距離を十分にとり、換気を行い、また消毒液も用意し万全の体制で行いました。ですので、通常のワークショップとはちょっと違った雰囲気になり、参加者同士のコミュニケーションも控えめで、少々堅苦しい状況になってしまいました。しかし、そうした環境のためか、参加者の皆さんの集中力もすさまじく、もくもくとハムスターを作っている姿が印象的でした。

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「感染拡大防止策をとって実施」

さて、ワークショップでは、初めに自己紹介がてら時吉さんの作品が紹介され、次いで時吉さんが今飼っているハムスターの生態を観察。事前に自宅で撮影された動画を見ました。えさの食べ方、寝ている様子、手足の形など、気が付いた点をメモやスケッチをして、ハムスター作りの参考にします。

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ブログハム5.jpg「動画でハムスターの生態を観察」

生態観察後は、いよいよハムスター作りです。目の前にいるハムスターを撮影した写真を使用するのではなく、画像検索で見つけた様々なハムスターの画像(フリー素材)をプリントアウトしたものを素材として使用します。新聞紙とセロテープを使って形を作り、その上に画像を切り張りして作成します。いわば、モザイク状のハムスター!

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ブログハム7.jpg「新聞紙で形を作り、画像を切り張り」

完成したハムスターはどれも個性派揃い。体の形や表情も様々でユニークで個性的なものが誕生しました。


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「完成したハムスターたち」

ハムスターが完成したあとは、ハムスターを美術館内外に連れ出して、その視点を借りて「美術館で〇〇中!?」という何かをやっているシチュエーションを撮影しました。写真には、〇〇中と状況を記します。


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ブログハム9.jpg「ハムスターの視点で撮影し、〇〇中と記す」

撮影後は、みなさんの写真の中のとっておきの1枚を発表してもらいました。消毒液に登ろうとしている様子や、注意看板の大切さを教えている様子、水辺で涼んでいるところなどなど、美術館の建物の特徴をうまく利用して撮影された面白いシチュエーションが紹介されました。

最後に、時吉さんから、「みなさんがハムスターを作っている様子を見て、自分が初めてハムスターを作った時のことを思い出しました。新しい気づきもたくさんありました」とコメントをくれました。終了後、参加者の皆さんからは以下のような感想がよせられました。

・作ることの楽しさをあらためて学べました。
・自分でも立体作品が作れるんだと嬉しくなった。
・簡単にできて奥が深いアートの世界だと思った。
・ハムスター作りから撮影までハムスターの気持ちになれた気がする。
・夢中の4時間で、ほんとに楽しかった!
・コロナで大変な時期に開催していただきありがたい。

今回のワークショップを通して、時吉さんの制作プロセスを追体験することや実際に作ったハムスターの視点を借りて美術館をあらためて見てみる体験は、コロナ禍の今、様変わりした日常生活において、変わらないアートの楽しみを味わっていただけたように思います。美術館の役割やアートの役目をこちらも再認識できた一日となりました。(G)

記録写真:中村篤

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