2016年5月 7日

芸術に会いにきた!

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4月22日と4月26日の2回に分けて、
港区立青山小学校の4年生と2年生が
それぞれ美術館の団体鑑賞にきてくれました。

学校には、昨年10月に学芸員の出張授業で訪問しており、
全校児童を対象に校内にある「自分が芸術だと思うものをさがす」授業を行っています。
今度は実際に美術館の"芸術作品"に会いにきたというわけです。

芸術さがしの印象が残っているようで、美術館に到着するや否や、
建物の外観や館内の三角形の柱、色とりどりのソファなどに反応し、
「芸術だ!かっこいい!!」とすでに大興奮。

いつものように、教育普及担当の学芸員と一緒に
MOTコレクションの作品を数点みてまわりました。

上の写真は、4年生にカーテンの奥に展示してある作品をちらっと見せている様子です。
「早く見たい!」「赤い光が見えた・・・怖い!」と、
展示室に入る前に中の作品を想像し気分が高まります。

作品一つひとつと対峙するごとに歓声を上げてくれ、
その反応にこちらもうれしくなります。

鑑賞の最後には、4年生も2年生も野外にあるアンソニー・カロの
《発見の塔》にのぼって帰ってもらいました。
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2年生は学校に帰ってから絵日記を描いたそうで、
図工の担当教員からこどもたちの絵日記が送られてきました。
このカロの作品にのぼった様子がたくさん描かれていました。

美術館から学校へ戻る帰り道、
こどもたちは、空を見上げて雲の形や建物の陰などにも反応し、
「芸術だね~」と楽しそうにおしゃべりしながら
美術館体験の余韻にひたっていたそうです。

訪問授業、そしてこの美術館での鑑賞体験がきっかけとなり、
芸術に関心をもつ気持ちがいつまでも続いてほしいと思います。(G)


2016年4月21日

耳で作品を味わう!

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4月20日、新年度が始まって早々に団体鑑賞にやって来てくれたのは
江東区立豊洲西小学校の6年生35人です。
3つのグループに分かれて常設展を鑑賞しました。

常設展示室のアトリウムには、ポータブルレコードプレーヤーを使った作品
《without records - mot ver.2015》が広がっています。
プレーヤーには、金属やプラスチック、ゴムなどを使った様々な加工が
施されています。音源にレコードを使うのではなく、プレーヤーそのものが
発するノイズやリズムに耳を傾ける作品です。

まずは自由に気になるプレーヤーの音をじっくり聞いてもらいました。
いつもすべてのプレーヤーの音が鳴っているわけではありません。
鳴ったり鳴らなかったりするので、気になる音が聞こえてくるプレーヤーに
近づいて耳を傾けます。

しばらく自由に鑑賞した後、集合してどんな音があったかを聞いてみると
「電車が走っているような音」「パンチする音」
「黒板でチョークがキーッと鳴ったときの音」
「給食のとき、食器同士がこすれあう音」
といった答えがあり、一つひとつの音に注目して聞いてくれたことが良くわかりました。

実は、アーティストによって「作曲」されているこの作品。
今度はみんなで目を閉じて、この空間全体に鳴り響く音の
ハーモニーに耳を傾けました。
目を閉じて空間全体の音に集中して聞くことで、
個々のプレーヤーの音を聞いていたときとは、作品の印象が
変わる体験になったようです。
耳からじっくりと作品を味わうひと時となりました。
(A.T)

2016年4月 8日

「豊嶋康子レクチャー ーほかの見方」

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今年度最初のMOT美術館講座は、4月3日(日)に、
現在開催中のMOTコレクション「コレクション・オンゴーイング」にて
特別展示を行っている美術家の豊嶋康子さんにレクチャーをお願いしました。

豊嶋さんは、90年代よりアーティストとして
活動を開始し、近年あらためて注目を集めていらっしゃいます。
今回の特別展示は、収蔵作品に特別出品を交え、作家自身の
インスタレーションによって構成されています。

本レクチャーでは、豊嶋さんの膨大な作品群の中から
自らセレクションした作品をスライドで見せながら、
そのコンセプトや制作経緯について語っていただきました。

豊嶋さんがレクチャーのタイトルに付けられた「ほかの見方」。
裏面を覗き込まないと細工がわからない作品=〈パネル〉シリーズを観る者は、
既成概念にとらわれがちな自分に気づかされます。
「自らが社会の中でどのように形成されているのか」という問いかけが、
あらゆる作品となって表出していることを、丁寧に解説してくださいました。

なお、今回の講座では試験的に手話通訳を導入し、
今後の当館におけるアクセスプログラムの実用の可能性も探りました。
実際に聴覚に障害のある方も数名ご参加いただき、
運営についてのご意見も頂戴することができました。
(J.O./ G)

2016年3月15日

アーティストの一日学校訪問(関根直子さん)レポート その1

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2001年度から始まった「アーティストの一日学校訪問」。
アーティストとの交流を通じ、現代美術の動向を
感じ取ってもらうことを目的にしています。

本年度は、収蔵作家の関根直子さんをお招きし、
昨年の10月から今年の2月にかけて都内の6校
(小学校5校、特別支援1校)にて実施しました。

関根さんは紙と鉛筆という、学校の授業で最も身近な画材で
絵画を制作しています。
しかし、彼女の絵は想定した完成図を再現するのではなく、
"線をどう描くか"という意識に基づく、
音楽にも近い抽象表現を特徴としています。
授業のテーマは「動きや速度をイメージした線の抽象表現―
描く事で自分自身を体験しよう」。
こどもたちの感覚的な記憶から鉛筆を動かしてもらい、
その痕跡として表れる"絵画"を制作してもらいました。


【1校目】2015年10月26日 青梅市立藤橋小学校 「手の動きから作品が生まれる」

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最初の授業に参加してくれたのは青梅市立藤橋小学校の6年生37人です。
はじめに、関根さんがご自身の作品を画像で紹介。
さらに、実際の作品も2点持って来てくださいました。
こどもたちは作品鑑賞のマナーについてレクチャーを受けたのち、
関根さんが回って見せた作品を興味深そうに眺めていました。


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さて、いよいよ制作開始です。
4、5人1班で、ひとつの大きな画用紙に"何も考えずに"
自由に線を描いてもらいました。
普段とは違った描く方法に戸惑いながらも、不思議と勢いよく
こどもたちは画用紙に自在に鉛筆を走らせていきます。
次の画用紙には、"何かをイメージしながら"線を描いてもらいました。
無意識に描くことと、意識的に描くときの違いを感じながら、
「手の動きから作品が生まれる」ことを関根さんは伝えたかったそうです。
出来上がった絵を集めて、ひとかたまりに並べてみると、
さらに大きな"絵画"が出来上がりました。


【2校目】2015年11月13日 足立区立足立入谷小学校 「線のバリエーションを広げる」

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訪問授業2校目は、足立区立足立入谷小学校3年生30人で行いました。
この日、関根さんはあらかじめ画用紙に描いたドローイングを持参されました。
まずは、小学3年生にもこれからの制作が理解できるように、
そのドローイングに線を足すデモンストレーションを行いました。


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こどもたちが班ごとに分かれて画用紙に線を描き始めると、
関根さんはご自分のドローイングをはさみで切り分け、
それを各班に配り、2か所すきな位置に貼ってもらいました。
作家の描いた線をきっかけにして、こどもたちはその線のバリエーションを
さらに広げていきました。
班ごとの絵が仕上がると、いくつかの班の絵を持ち寄って、
絵と絵の間に新しい紙を挟み、さらに線をつなげていきます。
最後には、全部の絵を2列に並べ、体育館の壇上からみんなで鑑賞しました。
(J.O.)

(その2へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(関根直子さん)レポート その2

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当館収蔵作家の関根直子さんによる、
2015年度の「アーティストの一日学校訪問」。


【3校目】2015年12月14日 葛飾区立こすげ小学校 「自分なりの線を探す」

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3番目に授業を受けたのは、葛飾区立こすげ小学校4年生の73人です。
作品を鑑賞したのち、何枚かの画用紙を少しずつ重ねて広げた上に、
関根さんが線を描いて見せます。
その線が描かれた画用紙を班ごとに1枚ずつ渡しました。
こどもたちは「画面いっぱいに描く」「いろんな線をみつける」ことを
テーマに自分なりの線を探して、渡された画用紙に鉛筆を走らせました。


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こどもたちの様子を観察してみると、
持ち方によって線の描き方を工夫しているのがわかります。
鉛筆を3、4本束ねて持ったり、
濃く塗った箇所に消しゴムで白い線を描いてみたりする子も。
画用紙をつなげて並べてみると、班の数が多いこともあって
今までで一番巨大な"絵画"ができあがりました。


【4校目】2015年12月21日 福生市立福生第三小学校 「負けじと線を膨らます」

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4校目は、福生市立福生第三小学校の5年生25人です。
この学校では、関根さんがあらかじめ描いたドローイングが再び登場。
関根さんが描く線は、さまざまな要素を示しながら
紙の上で変化し、増幅していきます。
こどもたちは、その様子を見て負けじと線を膨らませていきました。
どの子も、手やひじが真っ黒になるのをいとわずに、
紙の上に競って手を伸ばしていたのが印象的でした。


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いったん立ち上がって、描いた線を少し離れて鑑賞してみます。
関根さんからアドバイスを受けたこどもたちは、
うなずきながら、また紙に線を描き重ねていきます。
最後は、各班の作品を横2列に並べて、全体を見て仕上げていきました。
壇上からの鑑賞タイムでは「この部分が面白いね」「もう少し描きたかった」
などの意見や感想が飛び交いました。(J.O.)

(その3へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(関根直子さん)レポート その3

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昨年の10月から今年の2月にかけて実施した、
関根直子さんによる「アーティストの一日学校訪問」。

関根さんは作品に使用する鉛筆を、いつもカッターで削っています。
鉛筆は作られた国によって硬さや風合いが違うため、
いろんな国のものを使っているそうです。


【5校目】2016年1月21日 東京都立葛飾ろう学校 「さらに自由に線を広げる」

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5校目の訪問校は東京都立葛飾ろう学校。
参加してくれたのは中学3年生の16人です。
関根さんのお話は、学校の先生方に手話で通訳していただきました。
まず、生徒の人数分の画用紙を環状に床に広げると、
関根さんはそこにさまざまな線を描いてくれました。


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この画用紙を、今回は一人一枚ずつ配り、
さらに自由に線を広げてもらいました。
中学生になると、線の描写がより繊細になってくるのがわかります。
紙を継ぎ足してはまたさらに描くを繰り返し、
多彩な線を持つ"絵画"が出来上がりました。
授業が終わった後も、何人かの生徒さんが戻ってきて
さらに絵を大きくしてくれたのが心に残りました。


【6校目】2016年2月16日 港区立青山小学校 「全体を見ながら白い場所を埋める」

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最後に訪問した学校は、港区立青山小学校です。
もうすぐ卒業を迎える6年生28人に向けて授業を行いました。
最初に、関根さんが表現についてのアドバイスを伝えます。
その雰囲気にこどもたちも集中して耳を傾けているのが伝わってきました。
前回と同じように、人数分の画用紙を環状にして関根さんが線を描き、
その後一人一枚ずつの制作に移りました。


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一人ずつの制作が佳境に入ったころ、それらの作品を一つに集めて、
関根さんが新しい紙を足しながら、川のように繋いでいきます。
今度は全体を見ながら、白い場所を埋めていく共同作業です。
男の子も女の子もあちこちに散らばりながら、
大きな"絵画"を懸命に完成させていきました。


こうして、無事に6校の学校訪問が終わりました。
訪問を重ねていくごとに、授業の内容も
関根さんやこどもたちの線のように広がり、
展開していく様子はとても興味深いものでした。

こどもたちは身近にあまりいない「アーティスト」と出会うことによって、
通常の図工・美術の授業とは全く異なる体験を味わいます。
その邂逅の新鮮味は、制作された作品の中だけでなく、
普段接している先生方がびっくりするくらい、
こどもたちの態度や反応に現れているようでした。
この授業が、これからの彼らの人生や、学校現場において、
新たな感性や価値観を呼び込むものであれば嬉しく思います。

後日、こどもたちから送られてきた感想文を見た関根さんは、
「少し彼らの固定的になっている視点もずらせたのかなとかんじられました。
また授業後「自由!」や「きれい!」とこどもたちが発しているのを聞いて
やってよかったと思いました。」とのコメントを寄せてくださいました。

来年度は、どんなアーティストさんや、こどもたちとの出会いがあるのか、
今から楽しみです。(J.O.)


2016年3月10日

「カラダ」ワークショップ おとな編

ワークショップ2日目、中学生以上を対象としたおとな編には、
中学生から60代までの幅広い年齢層に渡る19人が参加しました。

自己紹介と準備体操を終え、高橋さんからワークショップの趣旨説明後、
鑑賞がスタート。

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タイトルが明かされずに鑑賞した高間惣七《ヨット》では、
「この絵からどんなタイトルをつけますか?」との
問いかけに、『夢』や『港』などの意見が出ていました。

『港』と答えた方によると、良く見るとヨットのようなものが
見えるから『港』というタイトルを想像したとのこと。
抽象的な作品ですが、良く見ると確かにそのような形が見出されます。

スライドで9点の作品を鑑賞した後は、展示室へ移動。

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中西夏之《夏のための Ⅲ》では、
プロジェクターで投影された画像を見たときには
「顕微鏡をのぞいた感じ。微生物みたい」
「瞬間接着剤のひび割れのようにも見える」
などの意見がありましたが、実際に作品を目の当たりにすると
「細胞よりも植物っぽさを感じる」
「画面左側に弧を描くような線が印象的」という発見もあったようです。

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午後からはいよいよ創作開始。
靉嘔《田園》では、4~5人のグループに分かれて
作品から想像した動きを創作してもらいました。
10分ほど相談して作り上げた動きはその場で発表。
同じ作品でも、表現の仕方はグループごとに全く異なり、
それぞれの個性が光る動きが創作されていました。

おとな編では、グループワークを交えながら進行。
一人ずつ自分なりの方法で表現する作品もあれば、
グループごとに指定された作品の動きを考えたり、
全員でひとつの作品の動きに挑戦したりと
バラエティに富んだ展開となりました。

最後におとな編でも最後に発表を行いました。

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行為や行動も作品になるのだ!との高橋さんの思いから、
撮影した発表の様子はDVDに編集し、後日参加者の元に『作品』として
発送しました。

高橋さんのユーモアあふれる進行で朗らかな雰囲気のもと
進行していったワークショップ。
今回のワークショップでは、展示スペースの関係や他の鑑賞者への配慮から、
展示室内での鑑賞は3点に留まり、プロジェクターで投影しての
作品鑑賞がメインとなりましたが、「カラダを通して美術作品をみる」ことが
今後作品を鑑賞する際の新たな手がかりになれば幸いです。
(A.T)
写真撮影:川瀬一絵

「カラダ」ワークショップ こども編

「カラダを通してみる美術」と題し、美術を新たな視点でとらえ、
作品鑑賞のきっかけを広げることを目的としたワークショップを実施しました。
企画・指導は、身体を使った芸術鑑賞を提案するワークショップを
行っている美術家の高橋唐子さん。
ワークショップは、小学3~6年生を対象としたこども編と
中学生以上を対象としたおとな編とで実施日を分けて開催しました。

2月6日(土)のこども編では、小学3年生を中心とした10人が参加。
はじめに高橋さんから「今日はいろんな見方で作品と向き合います。
そして、"カラダ"を使って考えて、それを人に伝えることをやりたいと思います。
だから今日は最後に発表します!」
とのお話がありました。

参加者の自己紹介と準備体操が終わると、高橋さんが選んだ、
現代美術館所蔵の9作品をプロジェクターで投影して紹介。
まずは高橋さんと1時間ほどかけて、作品鑑賞を行いました。

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白髪一雄《無題(赤蟻王)》では、
「真ん中の黒いところから枝が出ているみたい」
「いろんな色の蛇がいるみたい」
「目や胴体のようなものが見える」
などといった意見がこども達から出ました。

高橋さんから「どうやって描いたと思う?」と聞かれると
「すごく太い筆」「ハケで描いて、細かいところは筆!」
と言う子もいれば、
「指の跡のようなものが見えるから、足で描いた!」と
正解をするどく当てる子もいました。

スライドショーでの鑑賞を終えると、その内3点が展示されている
常設展示室3Fへ実物の作品を見に出かけます。

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宮島達男《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》
では、プロジェクターで投影された静止画との違いをこども達が語ってくれました。
「作品が光っている」
「ずっと見ていると数が出ていないところが上がっていくように見える」
「急いでいる感じがする」など、
作品を見て気づくことやそこから自分なりに想像したことを教えてくれました。

高橋さんから「身体で表すとしたら?」と問いかけられると、
高速でまばたきをして表現する子もいれば、
ピアノを弾くように指先を動かす子も。
さらに右手と左手の速さを変えて動かしてみる子など、
こども達は自分なりの様々なアイデアを答えていました。

午後からは、"カラダ"をキーワードに作品を見ていき、
それを身体で表現するとしたらどんな動きとなるか?
といったことをポイントに、創作に取り組みました。
絵画や彫刻作品の姿や形を真似するだけではなく、
作品から感じた印象や想像したことも身体で表していきます。

作品ごとに創作した9作品の動きは、ピアノの生演奏に合わせて
つなぎ合わせ、オリジナルの美術体操が完成!

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最後に、保護者を中心とした観客の前で披露しました。
全員で同じ動きをする作品もあれば、
一人ひとり自分なりの方法で表現する作品もあったりと、
1曲の中に様々な動きが構成されていきました。

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最後に観覧してくれた方から感想を伺いました。
「普段、ただ作品を見ているときと違って、身体の様々な部分を
使った表現がリアルだった」
「いつも作品を鑑賞するときには、視覚に頼りがちだけど
作者の気持ちが乗り移る体験になったのではないかと思う」
などのコメントが寄せられました。
こども達からは「発表会が緊張したけど、楽しかった」
「絵は身体でも表現できることを知りました。とても楽しかったからまたやりたい」
「美術を身体で表現した発表会では、お客さんも楽しんでいたので本当にうれしかったです」などの感想が述べられました。
(2日目のおとな編に続きます)
(A.T)
写真撮影:川瀬一絵

2016年2月16日

作品を食べる!? MOT美シュラン2016

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今年度最後のギャラリークルーズは、
教育普及係のインターンが1年間の学びの成果として
考案したプログラムを実施しました。
(実施日:2016年2月13日)
事前募集チラシでは「何をやるかはお楽しみ!?」と
なっていたので、集まった10名の小学生たちも何をやるの?
と不安と期待の中でプログラムがスタート。

初めに2チームに分かれて自己紹介。
みんなの「好きな食べ物」を教えてもらいました。
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実は今回のプログラム、「もしも作品を食べたとしたらどんな味?」
「美味しそうな作品をさがしてみよう!」と味覚という感覚で
作品を見ることをテーマにしました。

題して「MOT美シュラン2016」。

しかし、作品を食べるってどういうこと?
みんなの頭の中には???がさく裂。
というわけで、まずは作品を食べる練習。
プロジェクターで現代美術館のコレクション作品の画像を
2点同時に見せて、どちらが美味しそうかデスカッションしました。
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色味や形状から味を想像したり、絵柄をお菓子のパッケージに
例えて見てみるとその中身はどんなもの?
など、だんだんと作品を「味わう」こつがつかめてきたようです。

練習の後は早速展示室(MOTコレクション)に出向いて鑑賞です。
こどもたちは、美味しい美術評論家になったつもりでチェックシートを
片手にこの作品のここがおいしそう、ケーキみたい、これはまずそうと
いろいろインターンとお話をしながらまわりました。
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一通り鑑賞したあとは、いよいよお気に入りの1点を選んで
「美シュランシート」の作成。作品の印象を絵に描いて、
評価のポイントを記します。そして、もちろん星マークも付けます。
最高は3ツ星! 
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シートの作成の後は、該当作品の前で発表会を行いました。
選ばれた作品は、例えば画鋲を壁一面に刺して構成している
冨井大裕の《ゴールド・フィンガー》。見る角度によって
キラキラ輝いて見えます。
「とても豪華で高級みたいで食欲がわいてくる。真っ金々できれい」と
美味しいポイントを評価。3ツ星でした。
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また別の子は、分度器や三角定規を熱で溶かして形を変形させた
豊嶋康子の《定規》を選び、
「いろんな形をしていて、とけたあめみたいでおいしそう。
色もさまざまで、もようもたくさんあっておいしそう」
と評してくれました。2ツ星でした。

一方、味は美味しいだけではありません。
なかにはこれはまずそうだとか食べにくそうといった視点で
作品を選んでいた子もいました。その場合は、星はマイナスだったり
ゼロだったり。
味覚というテーマだからこそ、うまい、まずいといった両方の視点で
作品を味わえるのもこのプログラムの醍醐味のひとつです。

実施後のアンケートには、
「(作品を)食べるといわれてはじめピンとこなかったけど、
ちょっと見る目を変えるとアイスとかクッキーとかに見えて、
今ではペンもほそながいアイスに感じるようになりました」
「見る目を変えるだけでこんなにちがうんだと思った」
「そんなこと考えてもいなかったということを考えたりすると
こういうふうにみてもおもしろいなと思いました」
など、見方を変えると作品の見え方、感じ方が一味もふた味も
変わることに気が付いたようです。
みなさんも作品を食べて見るという視点でぜひ鑑賞してみてください。(G)

2016年1月26日

意識しなければ見えない世界

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視覚に障害のある方を対象にした作品鑑賞は、
昨今様々な美術館で行われています。
特に見える、見えないに関わらず、両者が共に対話
(見えているもの、見えていないものを情報として
伝える鑑賞方法※)を交えながら鑑賞する方法は、
ユニークな鑑賞方法として注目されています。

作品を鑑賞するのだから、もちろん作品を前にして
その活動は始まります。
しかし、作品と出会う前の時間、つまり美術館に
到着するまでの道のりや館に到着してから展示室に
入るまでの館内の様子など、どこまで視覚に障害の
ある方は認識しているのだろう?
常々疑問に感じていました。

その疑問を解消すべく当館でも作品鑑賞経験の
ある全盲の方数名に伺ってみたところ、案の定、
現代美術館のエントランスは長いとは感じていたが、
壁面や柱の様子など意識したことが無い
(見えない人にとって情報が無い状態というのは、
何も存在しないのと一緒とのこと)という答えが返ってきました。

初めて訪れる美術館であれば、どんな建物なのだろう?
どんな作品に出会えるのだろう?と、
ある種の期待や不安を抱きながら作品の前にやってくるはずです。
つまり鑑賞は作品を目の前にして始まるのではなく、
家を出てからすでに始まっているともいえます。

そこで、今回のクルーズ(1月17日に実施)では、
作品に出会う前に必ず通過する館内のエントランスを
鑑賞の舞台に設定し、視覚に障害のある人、ない人が
一緒にこの140mの長いエントランスをじっくりと歩き、
互いの見方や感じ方を知り、エントランスの新たな魅力を
発見することを試みました。

題して「140mのちいさな旅」。

参加者21名の内、視覚に障害のある方は6名
(内全盲の方は5名)。2チームに分かれて、
それぞれ教育普及担当の学芸員が付き案内しました。
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また今回は特別に制作したビンゴカード(旅のビンゴ
カードなので「旅(タビ)ンゴカード」と命名)を使用。
そのビンゴカードにはエントランスにまつわる9つの
キーワードが記されています。例えば「ガラス」「三角」
「二重」「ふわふわ」「634」など。
これらのキーワードは点訳し、点字シールにしてカードに
貼ってあります。視覚に障害のある方全員が点字を読めるわけでは
ありませんが、ツールの使い勝手やデザイン性を検証するために
実験的に用いてみました。
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エントランスのツアーは、それらのキーワードにまつわる
ポイントを紹介しながらまわり、実際に柱や壁に触れてみたり、
空調設備の存在を体験的に実感してもらったり、
貸し出しエリアともなるエントランスの使用料を当ててもらうなど
クイズ性も加味しました。
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さらには、館内ばかりでなく、寄り道と称し、屋外にも出て
エントランスの真下にある水辺や過去の展覧会で設置された
建物の修復をテーマにした作品なども紹介しました。
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1時間強をかけてエントランス(とその周辺)を旅した後は、
参加者に今回の旅の様子を振り返ってもらいました。
眼の見えるある方は、
「自分は眼が見えるけれど、見えていないものがたくさんある
ことに気がついた」と
述べてくれました。

一方全盲の男性は、
「自分は中途失明のため以後世界が全く変わってしまった。
眼の見える人との交流はまるで異文化交流のようで楽しかった」と
語ってくれました。

また、ゲストとして参加してくれた「視覚障害者とつくる
美術鑑賞ワークショップ」代表の林建太さんからは、
「作品を見る以外に美術館とのつながりがあったように思う。
美術館の敷居を低くしてくれた」と感想をいただきました。
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見える、見えないに関わらずどの参加者も意識しなければ
見えてこない世界があることを再認識し、
そしてその両者が交流することで互いの世界観が広がるのを
強く実感できた旅となりました。(G)
撮影:細川浩伸
※「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」で用いられている手法