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2018年3月30日

自分をリニューアルしよう!

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2018年3月3日と4日の2日間、
ワークショップ「ネオ・パーティー・キッズ」を実施しました。
その様子をレポートします!

現在、リニューアル工事休館中の東京都現代美術館。
それにちなみ、今回のワークショップでは「リニューアル」をテーマに、
こどもたちが自分自身をリニューアルするとしたら、
どういう自分に変わりたいか? 増やしたい機能は何か? 
自分が変わると世界はどうかわるか? 
などを考えてもらい、オリジナルの仮装衣装やアイテムを制作し、
「パーティー」を開いて発表しました。

「仮装」や「パーティー」という非日常的な経験を通して
創造する喜びや自分が変化していく経験をし、
他者の異なる視点を捉え、自分と世界との関係性を
考えることを目的としています。

企画・講師は、美術家の磯村暖さん。
磯村さん自身、作品の一環としてネパール移民と一緒に自宅で
パーティーを開催したり、パーティーをギャラリー空間内で再構築、
再解釈したインスタレーションも発表しています。

今回、こどもたちのリニューアルアイデアを具現化するために、
磯村さんの仲間でもある特殊造形のエキスパートもスタッフとして動員しました。
制作作業およびパーティー会場は、東京都現代美術館リニューアル準備室を使用。
普段職員用休憩室として使用している和室が、
事前にスタッフの手によってきらびやかでちょっと怪しげなパーティー会場へと改装。
この場所のことは、参加したこどもたちには、
パーティー当日のサプライズとして内緒にしていました。


【ワークショップ1日目/3月3日】
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参加したこどもたちは小4~6年生までの5名。
スタッフを紹介したのち、
磯村さんが犬の着ぐるみで登場。会場は一気に賑やかに。
着ぐるみを脱いで、早速今回のワークショップの内容について
磯村さんから説明がありました。

キーワードは「仮装」と「パーティー」。
「仮装」とは、何かになりきって表現する憑依体験、
あるいは日常の自分とは違う自分を引き出す手段、
変身願望の積み重ねであり、人間を作っていくもの。
「パーティー」は何かを祝う場であり、
いつもより少し開放的で不思議なことが起きる空間。

磯村さん自身のリニューアルとして16歳の頃から
髪の毛を染めはじめ、今は緑色にしているとのこと。
それは人に見られたいという欲望や自分にプレッシャーを
かけるためですと語ってくれました。


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次いで、こどもたちに、まず自分"リニューアル"計画&
自分"リニューアル"デザイン図を作成してもらいました。
リニューアル前の自分はどんな自分で、
リニューアル後の自分はどう変わっているのかを考え、
それを実現するための仮装衣装デザインを描いてもらいました。

ある女の子は、今の自分は要領がなくマイペースである。
それを変えるべく、頭が良くなり、手が勝手に動く。
でもマイペースでいたい。
デザイン画は、マイペースの象徴としてネコに変身し、
頭にはひらめきの電球が光る帽子を被り、
様々な事を同時にこなせる手をもったキャラクターを描いていました。

また、ある男の子は、日頃ダンスを習っているが、まだ有名ではないので、
テレビなどで取り上げられて有名になりたいという願望を派手な飾りで
装飾されたテレビ型の衣装で表現していました。

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こうしたこどもたちの考えたリニューアル後の自分を実現すべく、
特殊造形のエキスパートスタッフが、こどもたちに寄り添いこどもの意見や
アイデアを尊重しながらデザイン画に忠実に制作をサポートしてくれました。

【ワークショップ2日目/3月4日】
2日目は、前日に引き続き、仮装衣装作り。
だんだんと具現化していく衣装にこどもたちのテンションも
徐々にアップ!

昼食をとった後は、衣装を完成させ、それぞれ着飾り記念撮影。
完成した姿をご紹介します。

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「ドラゴンになって空を飛びたい!」

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「頭が良くなり、マイペース!」

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「ダンスで有名になる!」

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「ゴージャスな衣装でファッショナブルに!」

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「天才! なんでもゴザレ!!」

さて、いよいよ発表会を兼ねたパーティーの開催。
磯村さんの誘導のもと事前にスタッフの手で改装されたパーティー会場へ! 
扉を開け部屋の中を見たこどもたちは「わー!すごーい!!」と歓声を上げました。

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今回パーティーをさらに盛り上げるために、
磯村さんは、DJVJのスタッフも用意していました。
DJVJスタッフは、こどもたちの描いたリニューアルデザイン画を
事前にスキャニングし、アニメーション加工を施してくれており、
各自の発表会時に投影し大いに盛り上げてくれました。

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また、グリーンバックの小部屋も用意され、
スタッフが作成したCGの中に入り込めるクロマキー合成の映像も会場内に投影。
このクロマキー合成はこどもたちに大人気で、全員我を忘れて没入していました。

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もちろん、サポートスタッフもこどもたちと一緒にパーティーを楽しみました。

終了後、こどもたちのアンケートには、

「自分が天才だった!」(小4女子)
「みんなで協力したり、楽しく工作したのと、最後のパーティーの会場が
ごうかで楽しかった。」(小4女子)
「作る楽しさや、パーティーなど色々なことができてとても楽しかった。」(小4男子)
「リニューアルをして未来がわかった気がしてとても楽しかったです。」(小5男子)
「来年もやってほしい!」(小6女子)

などと感想が寄せられました。

今回のワークショップは、単に将来なりたいものを思い描くのではなく、
自分をどう変えたいかという今の自分との対話を通じて客観的に自分を見つめ直す
きっかけとなったようです。
そしてパーティーという刺激的な異空間で自分を表出し、互いに交流し、
発散することで、その思いはさらに昇華できたのではないでしょうか。(G)

撮影:中本那由子

2018年3月15日

アーティストの一日学校訪問(秋山さやかさん)レポート1

当館の所蔵作家の方を学校にお連れして授業を行う「アーティストの一日学校訪問」。
引き続き休館中となる平成29年度は、2名のアーティストの方にご担当いただきました。

お一人目は、国内外のさまざまな土地を巡り、そこで出逢ったものや
出来事を縫う行為や手紙などを用いて表現する美術作家の秋山さやかさん。
そしてもうお一人は、「一木造り」という伝統的な日本の彫刻の作り方
によって、少年少女の像を制作している彫刻家の棚田康司さんです。
訪問するのは、一人につき6校。
都内の小・中・高・特別支援学校を対象に実施しました。

まず始めに、秋山さやかさんの授業をご紹介します。
大きなテーマは、「わたしの思い出あなたの思い出」。
普段とは異なる視点で日常に目を向け、選び出した「思い出」を、
他者と交換しながら作品作りをしていく、という内容です。

【1校目】 2017年10月23日(月) 八王子市立高嶺小学校  6年生2クラス54人
テーマ:"あの思い出の宝箱"-他人の思い出を保管する「いれもの」をつくる

事前授業として、こどもたちには、最近一番思い出深かったものを
一人ずつ持ってきてもらい、選んだ理由を紙に書いておいてもらいました。

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当日は、まず秋山さんから手がけている作品についてご紹介いただきました。
国内外の様々な地を訪れて制作している秋山さんのお話にこどもたちは興味津々。

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秋山さんのお話の後はいよいよ制作開始です。
まず最初に行うのは"交換式"。
一人ずつ持参した思い出の品は、紙で覆って見えない状態にした棚に
入れてあります。
自分の思い出の品が誰に当たるのか、そして自分は何を引き当てるのか、
こどもたちはドキドキしながら紐を引いていきます。
こうして引き当てた誰かの思い出と、それに添えられた文章を
良く読んで、思い出の品を保管するための「いれもの」作りを行います。

こどもたちが持ってきた思い出の品は、
ソフトボールのコーチからもらったキーホルダー、お兄ちゃんからもらった
今は使っていない筆箱、友達からもらった手紙など。

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こどもたちは、それぞれの思い出の品にあったいれものを考えて作っていきます。
箱や紙袋などをベースに、コラージュしたり、描いたり、色をつけたりと、
工夫しながら制作を進めていきます。

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完成したら、「思い出の品からどんなことを感じ、どのように作品を作ったか」を
紙に書き、いれものに添えて棚に戻します。
最後に、"返還式"として、「いれもの」に入った自分の思い出の品を受け取りました。

ビー玉を持ってきた子のいれものは・・・
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箱の底に迷路が作られており、このビー玉で遊ぶことができます。

静岡で買ったというキーホルダーは、
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静岡といえば富士山!ということで、富士山をイメージした箱が作られました。

普段の図工では、"自分の作品"を作ることを意識していますが、
誰かのことを考えながら作るという今回の授業は、こどもたちにとって
新鮮な体験となったようです。


【2校目】 2017年11月2日(木) 墨田区立第四吾嬬小学校 6年生1クラス26人
テーマ:"あの思い出の宝箱"-他人の思い出を保管する「いれもの」をつくる

こちらの学校でも他人の思い出をしまうための「いれもの」作りを行いました。
こどもたちは、生活する中で見つけた宝物(気になったものや面白いと感じたもの)
を事前に持参。
事前授業で、お互いに何を持ってたかを紹介しておいてもらいました。

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こちらの"交換式"では、大きな箱が2つ用意され、その中に入った
思い出の品を引きます。
自分の思い出の品が入っていない方の箱から一人ずつ紐を選び、引き寄せます。

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どんな宝物があたったか、何人かに紹介してもらいました。

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お母さんからもらったスマートフォン(紙でできています) や、
思い出がつまった帽子。
その他、おばあちゃんからもらったセーターや小学校生活で
一番悪い点数だったというテストを持参した子もいました。

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思い出の品に添えられた、持ち主の思いをよく読んで、
どんな入れ物を作るか考えます。

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思い出の品を傷つけないように綿をしきつめたり、
相手の好きな色を考えて塗ったり、
一目見て気に入ったというキーホルダーは、中が良く見えるように
透明のケースに入れたりと、相手のことを考えながら作り進めていきます。

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いれものが完成したら、宝物の持ち主に向けたメッセージを書きます。

こどもたち一人ひとりの独創的な発想でできあがった作品の数々。
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悪い点数のテストは、暗い色の箱にしまって"封印"。
海外で買ったというカンガルーのキーホルダーは、草や木、花に囲まれた箱が
作られました。

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学校訪問で取り組んだ作品は、その後さらに手を加え、図工展覧会で展示されました。
(A.T)
(レポート2へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(秋山さやかさん)レポート2

【3校目】 2017年12月4日(月) 都立田無高等学校 高校3年生16人
テーマ:"かさねる手紙"-他人の思い出に自分の思いを重ねる

今回対象となったのは、美術を選択する高校3年生。
担当の先生からは、「高校を卒業したら今後一生美術に触れることは
ないかもしれない。だからこそ今回の学校訪問を通じて、
現代美術の面白さに気づいてほしい!」との思いからお申込みいただきました。

生徒たちの普段の様子なども踏まえ、先生との打合せを通して授業内容を
決めていきました。
今回の授業では、事前に何をやるかは知らせず、学校に持ってきている
カバンを美術室に持参することだけが生徒たちに伝えられています。

秋山さんの自己紹介が終わると、いよいよ今日やることの説明です。
「カバンの中を見て、自分にとって何か思いがあるものを一つ選んでください」と
秋山さんからの指示が。
今回の授業では、カバンの中に何気なく入っているものに目を向け、
そのものの意味をじっくり考えてもらうことに主眼を置きました。

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生徒たちが選んだのは、
キーホルダーやトランプのジョーカー、プラスチックのスプーンなど。
今回は全員に、何故カバンに入っていたのか、そしてそれを選んだ理由を
発表してもらいました。
キーホルダーは、仲の良い後輩からおそろいでプレゼントしてもらったもの。
トランプは、友達と良く一緒にやるから。
プラスチックのスプーンは、先週風邪を引いて休んだ自分に
友達がくれたプリンについていたものだった、との説明がありました。
何気ないものも、それを選んだ理由は人それぞれにあり、興味深いものばかりでした。

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選んだものに紐をつけて"交換式"を行いました。

引き当てたものと、その持ち主に宛てた手紙作りを行います。
表現方法は、言葉でも色でも絵でも何でもOK。
それぞれに工夫を凝らしながら、制作を進めていきます。
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ぬいぐるみのフンワリした質感を、千切り紙を使って表現する人もいれば、
トランプのジョーカーのイラストを、そのトランプの持ち主の顔に似せて
描き変える人も。
それぞれに、そのものと持ち主のことを考えながら、作っていきます。

最後に"返還式"として、完成した手紙を持ち主へと届けます。
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作った人は、一人ずつどんなイメージを持って制作したかを発表しました。
「モバイルバッテリーに制服を着せ、そのジャケットを脱がせると内側に
メッセージがあるようにした」
「プリンについていたというスプーンには、黄色い紙にクレヨンで
茶色く色を塗って表現した」
など、潔いコンセプトですっきりと表現する人もいれば、
じっくり描き込む人、言葉でメッセージを書く人もいたりと
それぞれに変化に富んだ作品ができあがりました。

【4校目】2017年12月11日(月) 港区立御田小学校 3年生2クラス64人
テーマ: "かさねる手紙"-他人の思い出に自分の思いを重ねる

4校目の実施となった御田小学校では、「手紙」をテーマとした授業を行いました。
事前授業として、ここ 1 ヶ月の中で、思い出深かったことを手紙に書き、
ポストを模した箱に投函しておいてもらいました。

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当日は、その箱から1通ずつ誰かの手紙を引くところからスタート。

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ポストから取り出した誰かの手紙をそれぞれじっくり読んだら、
その手紙を入れるための封筒を作ります。

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既存の封筒をベースにして、書かれている思い出の内容を意識しながら
制作を進めます。絵具を使って描いたり、折り紙を使って立体的な造形物を
作ったり。思い思いの方法で表現していきます。

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完成した作品は、再びポストに戻し、手紙を書いた主へと配ります。

作品の一例を紹介します。
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誕生日に大好きなお寿司を食べたという手紙には、
立体的なお寿司がつけられた封筒が出来上がり、
待望の弟が生まれて嬉しかった、という手紙には小さな弟の様子を絵で表現。
こどもたちは、手元にやってきた封筒を嬉しそうに眺めていました。
(A.T)
(レポート3へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(秋山さやかさん)レポート3

【5校目】2017年12月14日(木) 都立大泉特別支援学校 中学部5人
テーマ: 誰かへの「宝箱」

5校目の実施となった大泉特別支援学校は、肢体不自由の障害を持つ
生徒さんたちが通う学校です。
今回の授業では、事前に先生と一緒に学校内を散策し、自分たちが好きなものを
撮影しておいてもらいました。
学校訪問当日に、その写真を入れるための箱作りを行い、最後に誰かに
プレゼントする、という内容で実施しました。
初めに、一人ずつ自己紹介を兼ねて撮影したものを披露してもらいました。

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生徒たちによって選ばれたのは、以下の内容です。
ゲームが好きで良くやっているからと選ばれたオセロやパズル。 
普段から植物に水をあげることが好きな男の子は、ジョウロを。
そして、イケメン好きという女の子は、学校で一番カッコイイ高等部の先生の写真です。

生徒たちは、これらの写真を入れるための箱を選び、様々な素材をコラージュして
彩っていきます。

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生徒のうち4人が車椅子を使用しており、中には手足が動かしにくい子も
見られましたが、教員の方々による絶妙なサポートのもと、それぞれが
思いを込めて、宝箱を作っていきました。

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箱が完成したところで最後に"交換式"を行いました。
クリスマス間近ということで、バックミュージックとしてクリスマスソングが
流れるなか、生徒たちは、完成した作品それぞれにつけられた紐を引きました。

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箱を開けると、中には贈り主の好きな物が入っています。
高等部のカッコイイ先生の写真を引き当てた男の子はちょっと
複雑そうではありましたが、クリスマスムードたっぷりの雰囲気の中、
特別な美術の授業の時間となったようです。


【6校目】2018年1月12日(金) 杉並区立浜田山小学校 5年生4クラス125人
テーマ: 「ことばの宝箱」

秋山さんによる学校訪問授業、最後の6校目は、125人という大人数での実施と
なりました。
今回の授業では、こどもたちは二人一組になって進行します。
まず、事前授業では、ペアになった二人で相談をし、自分達にとって
宝物だと思える言葉を一つ決めます。
二人の共通点や、身近だと思える言葉などから考えていきました。
そして決めた言葉とその言葉を選んだ理由をカードサイズの紙に書いておきます。

授業当日の4校時目は4クラス125人が体育館に集まり、全員で選んだ言葉の
"交換式"を行います。

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体育館の3つの扉からは紐が出ています。
こどもたちは、体育館の外側と内側に分かれ、ペアごとに1本の紐を選び、
手繰り寄せあったペア同士が言葉を交換。

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何人かに、引き当てた言葉を発表してもらいました。
こどもたちが選んだ言葉は、スポーツ、命、クリスマス、水泳、笑顔、協力、
字、必笑など。

昼休みを挟んで、後半の授業は、2クラスずつに分かれ、視聴覚室を会場に制作開始!
こどもたちは、引き当てた言葉から、それを保管しておくための箱作りを行います。

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箱作りのために先生が用紙してくれたのは、カラーペンや絵具、
色紙、紐、お菓子や商品が入っていた空き箱、その他普段の図工の
授業ではあまり使わないような細かいパーツなど。
豊富に用意された材料を使って、ペアで相談しながら仕上げていきました。


完成した箱の一部をご紹介します。
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スポーツ好きな二人のためには、サッカーコートを模した箱を作成。
肉大好き!な二人が選んだ言葉には、焼き肉ができそうな網を表現。

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そして、同じ保育園に通っていたという二人が選んだ保育園の名称には、
彼らが大好きだったという木を表現しました。

制作の続きは先生の方で進めていただき、後日、完成した箱には
言葉の紙を入れて、その言葉を選んだペアに返還されました。


以上の秋山さんが訪問した6校での取り組みは、
いずれも「日常」に目を向けることや、他者の思いを受け止めるということを
意識した内容でした。

互いの思いを往還させながら作品を作るという経験は、普段の授業では
なかなか経験できないことだったようで、こどもたちの感想からも、
新たな発見があったことが伺えるものでした。
「自分が箱をもらったときはとても嬉しかった。そして、箱をあげた人が
喜んでいるのを見ると、作ってよかったと思った」
「今まで誰かのために何か作るという図工をしたことがなかった。
相手が自分のことを良く考えて作ってくれたことが伝わってきた」
「友達が作った作品を見て、こういう作り方もあるのか、ということを学んだ」

独自の発想で作品を手がけるアーティストの方との出会いを通して、
こどもだけでなく、教員の方にとっても新たな視点に気づく機会とも
なったように思います。

最後に秋山さんから寄せられた感想をご紹介します。

 「わたし」という存在ー それは唯一無二だ。ひとりひとり、同じ青色を眺めたとしても、100人居れば100の青のグラデーションがあるだろう。ひとりひとり大事なものを持っている、だけど、本人にとってまばゆいそれは、他人にはくすんで映るかもしれない。
 私は今回、そんな自己の芯の部分を他者と共有したとき、互いにどのような変化が生まれるのか、こども達と体現したく思った。それは、年齢や学校によって少しずつ異なったけれど、おもには、他人の思い出と結びついた宝物を包む『いれもの』をつくる内容だった。
 こども達の制作する姿は、まるで旅をしているみたいで、何だか「宝探し」のようにも、私には見えた。宝物の持ち主の僅かな説明だけを道しるべに、時に迷い、道草し、かと思えば、道を教え合ったり、ぐんぐんと進み、見つけ...、やがてそれぞれゴールへ辿りつく。
 こうして出来上がった『いれもの』は、もうこれは立派な作品であり、宝や思いを包み込み、存在ー していたのだった。きらきらと。

秋山さやか

(A.T)

アーティストの一日学校訪問(棚田康司さん)レポート1

当館の所蔵作家の方を学校にお連れして授業を行う「アーティストの一日学校訪問」。
続いてご紹介するのは、彫刻家の棚田康司さんによる授業の様子です。

【1校目】2017年10月20日(金)  新渡戸文化高等学校 1年生美術コース8人
テーマ:粘土のかたまりから自分を彫り出そう

今回の授業では、粘土を付け加えて造形していくプラスの仕事(モデリング)に対して、
粘土の塊から彫り出していくマイナスの仕事(カービング)を通して
立体を捉える感覚と向き合います。
はじめに、棚田さんからご自身の作品についてご紹介いただいた後、
今回の授業で取り組む内容の説明がありました。

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今回のために用意された粘土の量は、なんと一人20kg! 
生徒は一人ずつ粘土の重みを感じながら自分の机に運びます。
今日はこの粘土を使って、「自分の頭部」の制作に取り組みます。
"粘土を通して、客観的な視点で自分を捉える"ために
このテーマが選ばれました。

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巨大な粘土の塊を叩いたり、手やひじを使って押したりしながら
頭部を作り出すためのベースを作っていきます。
これだけの分量の粘土を使うことはなかなかありません。
一人ずつ苦労しながらも、大きく形を捉えていきます。

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「感覚でやるのではなく、形を意識するために粘土にデッサンしてごらん」
「作品から離れて大きな構成を考えよう」
「いろいろな方向から視点を変えてみることが大切」
棚田さんは一人ひとりに丁寧にアドバイスをしていきます。

約1時間30分に及ぶ制作を経て、20㎏の粘土の塊は
生徒一人ひとりの頭部へと生まれ変わりました。
完成した頭部は実物よりも大きなものばかり!


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最後にみんなで1点ずつ作品を鑑賞し、棚田さんからコメントをしていただきました。

粘土の塊を通して自分と向き合い、表現された形は、どれも個性に溢れるもの
ばかりでした。
これらの作品は、後日学校の授業で制作を進め、文化祭で展示されました。


【2校目】2017年10月26日(木)  板橋区立板橋第六小学校 6年生2クラス64人
テーマ:巨大な先生の顔をつくろう!

今回の授業は、個人制作ではなく、友達と協力しながら大きな立体物を
作り上げるというダイナミックな感覚を体験してもらうことを目的に実施しました。

6年生2クラスは、クラス別に2時間ずつ実施。
それぞれ8名程度のグループに分かれて制作に取り組みました。

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棚田さんご自身の作品紹介では、制作の過程で出てきた
クスノキの木屑が用意され、こどもたちはクスノキ独特の香りも
味わいながら、話を聞きました。
中には初めてクスノキの香りをかいだ、という子も!

今回取り組む「巨大な先生の顔」作りのために、担任や支援の先生に加え、
なんと校長先生までがモデルを務めてくれました。
事前に作り方はレクチャーせず、どうやって顔を大きく立体的に作るかを、
こどもたち自身に考えてもらう過程を重視しました。

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校長先生の顔を良く観察して、デッサンするグループ。
こどもたちは棚田さんからアドバイスをもらいながらも、自分たちで
試行錯誤しながら制作を進めていきます。

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顔のパーツを手分けして作るグループもあれば、
みんなで相談しながら全体的な設計図を考えるグループも。
それぞれが勝手に進めていくのではなく、グループ内で声を掛け合ったり、
確認したりとみんなで協力して一つの作品を作り上げていきます。

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大きなダンボールをベースにして、発泡スチロールを目や鼻に見立てたり、
廃材のダンボールのカーブをうまく生かして顔の立体感を表現したり。

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今回の授業では、こどもたちがじっくり考えて作品と向き合う時間を
重視したため、完成までは行き着きませんでしたが、
校内展覧会で展示をしたいという希望があったため、
制作の続きは、図工の先生の方で進めてもらいました。

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展覧会に展示された作品の数々。
色がつけられ、それぞれの先生らしさが増した作品が完成しました。
(A.T)
(レポート2へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(棚田康司さん)レポート2

【3校目】2017年11月30日(木)  東京女学館小学校 6年生1クラス36人
テーマ:大きな先生の首像を作ろう

3校時から6校時まで、4時間続けての実施となった東京女学館小学校。
残念ながら、インフルエンザにより当日は1クラスが参加できませんでしたが、
参加したこどもたちは、元気いっぱいに取り組んでくれました。

今回は、先生をモデルに、ダンボールや紙類、テープなどを駆使して、
実際よりも大きなサイズの首像作りに取り組みました。
当日は、担任の先生以外にも、さまざまな教科の先生が来てくださり、
こどもたちはグループ内でどの先生の顔を作るか相談。

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モデルとなる先生が決まったら、まずはどのようにして顔のベースを
作り出すかを考えていきます。
大きな袋に新聞紙を丸めたものをつめたり、発泡スチロールの箱をけずって
丸みをつけていったりと、大きく捉えて形作ることに向き合います。

ベースとなる形ができたところで、お昼休み。
給食を食べて、英気を養ったら、再び午後から制作スタートです。

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グループ内で手分けをしながら髪の毛や耳など、顔のパーツ制作に取り組みます。

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棚田さんはグループを回り、色々なアドバイスをしていきます。
「手元でばかり作業をしているのではなくて、ちょっと離れて全体を見てごらん」
「先生を良く観察しよう。人を見るということは、自分を見ることに通じるよ」

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完成した作品をみんなで鑑賞しました。
このチーム(右写真)がモデルに選んだのは棚田さん!
全体の雰囲気だけでなく、髪の毛のディテールにもこだわって作っていました。

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髪は黒、皮膚は肌色などといった既成概念に縛られず、
先生らしさを表現する為にカラフルな髪の毛を選んだグループも。
グループごとにオリジナリティあふれる工夫を凝らしています。
みんなで協力することによって、一人では考え付かないようなアイデアも出たりと、
こどもたちにとって多くの発見に溢れた授業となったようです。


【4校目】2017年12月8日(金) 都立調布特別支援学校 中学部2年生3クラス10人
テーマ:一緒に彫刻をつくろう!

「一緒に彫刻をつくろう!」と題し、棚田さんご自身が手がけたトルソを
型取りしたものに、生徒たちが色をつけていく、という内容で実施しました。

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教室に用意された2体のトルソ。生徒たちは5人ずつのグループに分かれ、
それぞれのトルソを彩っていきます。

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まず始めに使ったのは、色鉛筆やクーピーといった細い描画材料。
生徒たちは臆することなく、それぞれ関心のある場所に手を伸ばし、
塗ったり描いたりしていきました。

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ある程度、線や形が加わったところで、一端手を止めてみんなで鑑賞。
続いて、カラーマジックやポスカなどの太いペンに持ち替え、制作を進めます。
線的な表現から、だんだんと面的な表現となるよう、進捗状況にあわせて、
描画材料を変えながら進行していきました。

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再び手を止めて、鑑賞会。
色が重なっていくことによって、下の色が浮き出て見えてきたり、
線と面とが混じりあったりと、より複雑な表情が現れてきました。

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今度は、トルソをマスキングするために、自由にテープをつけていきます。
大きくダイナミックにテープをつける子もいれば、小さく千切ったテープをつける子も。
テープで保護した上から、アクリル絵具で色付けしていきます。
絵具を用いて、大胆に色をつけていくことによって、トルソの印象が
ガラリと変わってきます。

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ある程度進んだところで手を止め、マスキングをはがすと、
下からこれまでに描き重ねた線や色が出現。
最後にトルソを展示台に載せて、全員で鑑賞会を行いました。

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生徒たちは一人ずつ前に出て、自分が頑張ったところを指で示します。
「筆をがんばった」「虹色をがんばった」など、それぞれに
気持ちを込めて取り組んだ部分を伝えてくれました。

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これらの作品には、棚田さんによって《12月のトルソ》とタイトルがつけられました。
先生からは「長時間ではあったが、生徒一人ひとりが集中し、夢中になって
取り組んでいた。普段の授業では見られない姿があった」
とのコメントがありました。
(A.T)
(レポート3へつづきます)

アーティストの一日学校訪問(棚田康司さん)レポート3

【5校目】2018年1月19日(金) 都立文京盲学校 高等部1~3年生11人
テーマ:大切な人を作ろう

普段の学校の授業では粘土を良く使っている、という話を受けて、
文京盲学校では「木」を用いた取り組みを行いました。

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用意されたのは、一人20cmほどの高さの木材。
クスノキやヒノキなど、棚田さんご自身が制作に用いている種類の木を
ご用意いただきました。

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棚田さんからご自身の制作についてお話いただく場面では、
特別に用意した作品を触察する時間も。
生徒たちは、優しく触りながら鑑賞していきました。

今回、木を素材にして作るのは「大切な人」。
この言葉から想像したものを、具体的な形として表しても良いし、
抽象的なイメージで表しても良し!
まずはこの言葉から想像する人や形を一人ずつ考えていきます。
どんなものをつくるか決めたら、木に向き合い制作スタート。

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木を造形していくために使うのは、ノミやノコギリ、ヤスリなど。
ノミを使うことが難しい生徒は、棚田さんと、アシスタントとして来てくれた
彫刻家のお二人が、生徒からの具体的な要望に沿って削ります。

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木が削り出されていくに従い、教室の中には、木の香りがどんどんあふれていきます。
生徒たちは、ノミを使うのは初めてでしたが、アーティストや先生方の
サポートを受けながら、上手にノミを振るっていました。

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ここは!という部分については、プロの彫刻家の出番。
素早く、どんどん形作ってくれます。

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削った部分を触って確認しながら、作り進めていきます。

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完成までは行き着きませんでしたが、最後に一人ずつ
どんな思いを持って作品を作ったか発表しました。
「大切な人はお母さん。見えないけど、声がきれいで優しい。
ニコニコした笑顔のお母さんをイメージした」という生徒もいれば、
「人ではなくて、小学1年生の頃から飼っている犬を選んだ」という生徒もいました。
学校訪問授業実施後も、引き続き制作を行っていきました。


【6校目】2018年1月23日(火) 日野市立東光寺小学校 5年生2クラス59人
テーマ:身近なもので先生の頭部をつくろう!

いよいよ最後の訪問校です。
こちらの学校で取り組んだのは、身近なものを使った先生の頭部作り。
図工室の椅子を支持体に、さまざまな素材を用いて制作します。

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棚田さんの作品紹介では、クスノキの木屑のにおいをじっくり堪能。
「すげーいいにおいがする!」という声もあがっていました。

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続いて棚田さんから今日やることの説明です。
2クラス混合で、3~4人で1グループになったら、どちらの組の
担任の先生を作るか相談。そして、図工室の椅子に先生の頭部を
どう表現するかをみんなで考えていきます。

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「正面や側面から見たときの目や鼻の位置、大きさなどをよく見てみよう」
棚田さんから、先生の顔をよく観察するようアドバイス。
細かいパーツから作りがちですが、まずは対象を大きく捉えることが大切です。

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プチプチの緩衝材を髪の毛に見立てたり、豆腐が入っていた
パッケージを使って目をつくったり、軽量スプーンが鼻に様変わりしたり。
こどもたちは、先生の特徴をええながら、身近な素材を使って表現していきます。

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完成した作品の数々。
作品にはどんな様子の先生を作ったか、タイトルをつけました。
「おどろいているS先生」「笑っているH先生」「何かをさけぶS先生」など、
それぞれの先生の雰囲気が良く出ています。
これらの作品は、2週間ほど図工室前の廊下に展示をして、
みんなに見てもらったそうです。


棚田さんが訪問してくださった6校での実施は、それぞれにバラエティに
富んだ内容となりました。
実施後に送られてきたこども達の感想には、
「何もない所から作る喜び、楽しさを学んだ」
「顔を作るには難しいと思った材料でも、やってみたら面白かった」
「グループで大きな1つの物を作るという楽しさは、いつも1人で
作る作品とは違った楽しさを味わうことができた」
などとあり、どの学校でも普段の図工や美術の授業とは異なる楽しさや
発見のあるひと時となったようです。

最後に、今回の学校訪問を担当してくれた、棚田さんから寄せられた
メッセージを紹介します。

―彫刻の仕事は僕にとって人間を見つめることでもある。―
学校訪問を終えて感じることは、今回関わった全てのこどもたちは表現者であり
未来でもあった。彼らの眼差しはそのままむき出しの純粋性を持ち、『自分』という
可能性を見つめている。僕は彼らの視線にやられてしまう。美し過ぎるのだ。
それに現場の先生が美術制作に対する熱い情熱と深い愛を持ってこどもたちに
接していらしたのが強く印象に残った。学校の先生ならそんなことは当然と
綺麗事のように思い込んでいた。しかし自分の概念が現実を目の当たりにして
変化していく。両者から人間の深いところでの繋がりが感じられるのだ。
現場の先生方は本当に懸命によく動いて下さる。そんな先生方を見ながら
つくづく教育は『生き物』だなと思った。美術教育は生き物と生き物の
ぶつかり合いの中で強さや逞しさ、ある時は汚なさをも伝えながら、諭しながら、
こどもたち本人に新たな自分を発見させていくのだろう。
僕はその一瞬に参加できて彫刻家として幸せな時間を過ごせた。
このような素晴らしい仕事をご一緒できた東京都現代美術館の学芸員の皆様に
心から感謝している。
棚田康司

(A.T)

2018年3月 7日

小笠原小学校との文通その5(最終回)

昨年5月から開始した小笠原小学校との
文通プロジェクトもいよいよ最終回(5回目)です。
毎回こちらからお題を出して、そのお題にまつわる写真を
こどもたちと学芸員が撮影するのですが、
最後のお題はこどもたちみんなで考えてもらいました。
決定したお題は、「イチオシの海」! 
文通1回目のお題が「空」でしたので、
空から始まり海で終わることになりました。

こどもたちの「イチオシの海」を紹介する前に、
前回のお題「ワクワクするもの」について学芸員3名の写真を紹介します。


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題《ポイント大好き!》
「僕はスーパーのポイントカードやお店のスタンプカードが大好きで、
たくさんのカードをもっています。
ポイントやスタンプがどんどんたまっていくとワクワクします!
なぜなら、ポイントやスタンプがたまると商品券がもらえたり、
品物が買えたり、いろいろなお得だからです!」


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題《ここではないどこかへ》
「私は旅をすることが好きです。自分の知らない場所や国に行って、
人と出会ったり、町なみを見たり、ごはんを食べたりすることに
とてもワクワクします。どこか遠い場所へと運んでいってくれる飛行機を見ていると、
世界が広がっていく気がします。
みなさんは、どんなところに行ってみたいですか?」


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題《スイスイ泳ぐイルカ》
「元気のない時は、水族館に行ってイルカを見に行きます。
鳴き声を聞きながら泳いでいる様子を見ると、
落ち込んでいる自分が小さく感じ、悩み事もたいしたことではないと思えます。
島では、どのような魚や動物を見かけますか。」


学芸員の写真にこどもたちは、
「あ~、ポイントカードか!お金!お金好きなんだ!」
「あ、飛行機わざと小さく撮って、世界の広さを表したのか!」
「なんか海で見るより長いね。何イルカだろう。」
と、コメントをくれました。良く見てくれています。

さて、
文通最終回こどもたちが考えてくれた最後のお題は「イチオシの海」です。
やはり小笠原のこどもたちにとって海は日常そのものであり、
生活の中に溶け込んだ存在なのだなと送られてきた写真をみて感じました。
では、コメントと一緒にいくつかご紹介します。(原文ママ)


11 ゆうじ (300x225).jpg
題《ぼくの遊び場》
「ここは家の近くの海です。ほぼ毎日この風景を見ています。
なのでここをえらびました。みんなにはどう見えますか?」


19 えみ (300x225).jpg
題《サメの朝!》
「私は、サメが好きなので『イチオシの海』にぴったり!と思ってとりました。
私は、この海が大好きです。夜や朝ここに「サメいるかなあ」と思ってよくきます。
みなさんはどう思いますか?」


22 かける (300x225).jpg
題《あけがたの海》
「あさおきてさんぽに行った時にとおりかかってきれいだなと思ってとりました。
なぜいちおしにしたかというと山と海と川がうつるからです。」

約1年間の写真のやりとりを通じて、
こどもたちの写真の構図や視点には、明らかに変化がみられました。
日常のものの見方を変え、身近な風景を観察したり楽しんだりする姿勢を育む
という目的は充分に達成されたように思います。(G)

2018年1月30日

小笠原小学校との文通その4

順調に交換が進んでいる小笠原小学校との
文通プロジェクトも4回目を迎えました。
毎回こちらからお題を出して、そのお題にまつわる写真を
小学生と学芸員がお互いに撮影して船便で送り交換しています。

さて、3回目のお題は「見立ての風景」でしたが、
学芸員3名が撮影した「見立ての風景」の写真はこちらです。


お題③「見立ての風景」郷 (300x210).jpg
題《実物大のドールハウス》
「まちを歩いていると、古いお家をこわしている途中の現場を見かけます。
僕はそれを見るといつもドールハウスみたいだなと思います。
そこに住んでいた人が、どんな生活をしていたのだろう? 
と想像すると楽しいです!」


お題③「見立ての風景」鳥居 (300x217).jpg
題《空にうかぶてるてるぼうず》
「今年の2月に仕事でおとずれたスウェーデン北部のまち。
実はこれ、朝の9時ころの光景です。
太陽は低く、あつい雲におおわれ、そして気温はマイナスで川はこおっています。
そんな空を見上げると太陽の光がてるてるぼうずのように見えました。
まるで空全体が、青い空を期待しているかのように感じました。」


お題③「見立ての風景」成田 (300x225).jpg
題《夜に現れるロボット》
「いつも買い物に行くスーパー近くで発見しました。
不動産屋の建物の窓と入口がロボットの顔のように見えます。
歯が上下に8本、大きな口を開けて何かを叫んでいるように感じます。」

それぞれの学芸員の写真にこどもたちは、
「題名がいい!」「アイデアがスバラシイ!」
「私にはショートケーキに見えます」
などとコメントをくれました。

さて、
4回目のお題は「ワクワクするもの」です。
これまでのテーマとはちょっと違って、自分の内面を表すものを
探し出して撮影するというもの。ちょっと難しかったようですが、
それぞれの「ワクワク」が伝えてくれる写真が届きました。
今回もこどもたちが撮影した「ワクワクするもの」の写真を
こどもたちのコメントと一緒にいくつかご紹介します。(原文ママ)


2 かんな (300x225).jpg
題《百人一首》
「自分が好きな、百人一首をやっていると、
次に何が読まれるのか、ワクワクするのでとりました。」


6 みずき (300x225).jpg
題《大好きな食べもの》
「ぼくは、からあげを食べると元気になります。
理由はいいニオイだからです。
この写真をとった理由は大好きなからあげのニオイは最高だからです。」


7 みのり (300x225).jpg
題《かわいいミニブタ》
「私は動物が好きなのでこれにしました。
動物の中でも一番"ブタ"(ミニブタ)が好きなので"ブタ"にしました。
みなさんは何の動物が好きですか。
"ブタ"と"ミニブタ"はどっちの方が好きですか。」


8 あつひと (300x225).jpg
題《エアコン》
「すずしいからワクワクするのでとった。
すずしいよ。いいね。
これは5年教室をとったよ~。
みるだけでワクワクするよ。」


9 なごみ (300x225).jpg
題《いつも元気な「まんたまる」》
「いまは、元気じゃないけどいつもは元気で、
おちこんでいるとき、『まんたまる』を見ると元気になるから
『まんたまる』のことをとりました。
『まんたまる』とはブルドックの名前です。」

「ワクワクするもの」の写真を通じて、
こどもたちの内面を垣間見られた気がします。

次回5回目の文通のお題が最後になります。
どんなお題かはお楽しみに!(G)

2018年1月 9日

65歳からはじめよう! 映像でつくるエンディングノート

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第56回目のMOT美術館講座は、
現在当館が休館中のため
同じ江東区内にある古石場文化センターと連携し、実施しました。
企画は初心者・経験者を問わず誰もが映像を制作することのできる
ワークショップを行ってきた団体remo
(NPO法人記録と表現とメディアのための組織)の
松本篤さんにお願いしました。

テーマは「もうひとつのエンディングノート」。
対象は、65歳以上の方。
通常、エンディングノートは文章で残すものですが、
今回は、動きや表情、空気感などより多くの情報を
記録できる映像で制作し、参加者の人生を振り返り掘り下げ、
生きることに向き合うことを目標として
2日間(2017年11月23日、12月9日)実施しました。

参加者は映像でつくるエンディングノートに興味がある方や
旅行で撮った映像を編集しDVDを50枚以上制作している方、
昔、スキューバーダイビングで写真を撮っていた方など
普段から活動的な方々でした。

2日間の活動内容は、「気になる風景」、「人生の最初にみた風景」、
「遺影」と「人生の最期にみる風景」を撮影し、
鑑賞するという内容でした。

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撮影の際には、何を撮りたいのか
鑑賞者に明確に伝えることができるremo考案の
リュミエール・ルール(撮影条件)を使用しました。

このルールは、世界最初の実写映画を制作したとされる
リュミエール兄弟が「工場の出口」を撮影した際の条件に倣い、
ズーム無しの固定カメラで、1分間、無音で撮るという条件です。

なお、講師から2日目開催までに
「人生の最初にみた風景」と「人生の最期にみる風景」の
説明文を書いてくることが宿題として出されました。

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2名の方のエンディングノート作品を紹介します。
1人目は70代の男性。
「人生の最初にみた風景」は、
戦時中に見た北朝鮮やそこから引き揚げた際に
舞鶴で見たと思われる青空と雲、

「遺影」は、亡くなった奥様の横に置くため古石場文化センター
の入口にある松林で撮影したもの、

「人生の最期にみる風景」は、
風になびく枯れた植物を撮影し、大きな自然の摂理の一部として
人の一生があることを表そうとしたもの、でした。
宿題の説明文では、短歌5首で映像の世界観を表現していました。

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2人目は、60代の女性。
「人生の最初にみた風景」は、
お宮参りで初めて外に出て見た場所の象徴としての神社、

「遺影」は、植物好きの兄姉で持っている"金のなる木"を写りこませ、
兄姉が見たときに喜ぶと思い撮影したもの、

「人生の最期にみる風景」は、
若山牧水の短歌を引用し青空に飛んでいる飛行機と
ニュージーランドの天の川の写真をフェードインさせ、
死後は天の川の星の一つになって家族を見守り続けていきたいと願うもの、でした。

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今回は映像で記録しているため、
1分間という短いようで長い時間の経過をどのように表現するか、
動く雲や船などを映し、試行錯誤している様子が見受けられました。

「遺影」といえば一般には、本人がメインで背景が抜けている
写真が多いですが、参加者が撮影した「遺影」は
自分と一緒に映りこむものやそれを見る人のこと、
自分の思いを写し込む様子がみてとれました。

また、時代背景が色濃く表れているものや
テーマから考えたイメージを限られた条件の中で具現化するなど、
想像力豊かな映像になっていました。

参加された方からは、
「限られた時間の中でテーマに沿った場所を探すのは、
難しかった。エンディングノートをつくるという課題を持ち、
今後もこの経験を活かしていきたい。」

「2日間、内容が濃く、やることがいっぱいで勉強することもいっぱいと思った。」

「自分のスキルをアップさせるワークショップだった。
自分なりのエンディングノートを考えていく第一章だった。
エンディングノートは時代と共にどんどん変わっていくと思うから、
これから活かしていきたい。」
といった感想をいただきました。

2日間に及んだエンディングノート制作は、
映画がはじまった頃の手法を使用し、
映像作りを通し、それぞれの人生を考え、
死生観を表現し、これからどのように生きていくのか
前向きに捉えた講座となりました。(N.M)