展覧会概要

 古代ローマでは花と豊饒の女神をフローラと呼んで大切に敬いました。ボッティチェリの名画にあるように、地上の春(プリマヴェーラ)はまさにフローラの先導なしでは決して訪れてはくれないからです。
 西洋の画家たちはそのフローラの身にまとう花や植物の神秘を、光と色彩描写で忠実に画面に再現することによって解明しようとしました。15世紀フランドルの油絵の完成者ヤン・ファン・エイクからその自然の探求が始まり、中でもレオナルド・ダ・ヴィンチは科学的精神をもって自然研究に挑戦し、一本の草花にも広大な宇宙と同じ生命が宿っていることを優れたデッサンによって知らせてくれます。そして19世紀、産業革命と自然破壊の時代、人間の都市生活は自然からますます離れるのに反比例して、〈反・文明〉の象徴としての花と田園の表現がさらに大きく美術の主題となっていきます。印象主義の登場がそこに人間の資格の領域を拡大する決定的な役割を果たしました。モネやルノワールやピサロは都市と田園を往復しながら、人間を取り巻く緑豊かな環境こそが、もっとも効果的に光を反射しうる絵画の至上の楽園であることに気づいたのです。モネにとってのジヴェルニーの睡蓮の池がそのことを物語ってくれます。こうして20世紀を迎え、画家たちはさまざまなアプローチで身の回りの花と緑を自らの造形表現に引き入れることによって、鑑賞する私たちの心を、あたかも暗闇から光の世界に導くように慰め、豊かにしてきました。
 本展は19世紀中ごろから20世紀前半の40人の画家による近代フランス絵画の名品70点余りを、6つのテーマに構成いたしました。詞華集をひもとくような楽しい気分でご鑑賞いただければ幸いです。

【展覧会構成】
プロローグ:アルカディアの庭
1章:田園の抒情詩
2章:花の素顔
3章:モネ-水辺と緑
4章:街の麗花と緑
エピローグ:楽園の花と緑

            展覧会監修:井出洋一郎(美術評論家・東京純心女子大学教授)

展覧会情報

会期 
2004年7月17日(土)-9月26日(日)
休館日 
月曜日(ただし7月19日、9月20日は開館、7月20日は休館)
開館時間
10:00-18:00(入場は閉館の30分前まで)
観覧料
当日)一般1,000円、学生800円、中高生・65歳以上500円、小学生以下無料
前売)一般800円、学生640円
20名以上の団体は当日料金の2割引
主催 
財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館/ 読売新聞社
後援
フランス大使館
協賛
大日本インキ
協力
日本航空
企画協力
アプトインターナショナル


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