
ゼロ年代のベルリン ―わたしたちに許された特別な場所の現在(いま) アーティスト
サーダン・アフィフ|Saâdane Afif
[1970年/ヴァンドーム(フランス)生まれ]
アフィフは、制作したオブジェと共に詩やリリック、音楽を同時に展示する作家である。それらは、オブジェから得たインスピレーションをもとに、アーティスト、文学者や批評家、音楽家に制作してもらったものである。本展では、人とのつながりの中で作品を生み出してゆく彼の制作手法を、虹色に輝くひとつのオブジェ《これがあなたとわたしの世界のはかり方》(2008年)を中心に、リリックや楽曲とあわせて紹介する。
ネヴィン・アラダグ|Nevin Aladağ
[1972年/ヴァン(トルコ)生まれ]
トルコ人の家系に生まれ、幼少の頃にドイツに移住。アラダグはドイツ都市部におけるトルコ人の文化的アイデンティティや、それに対するダンスと音楽などのサブカルチャーの影響をテーマに映像作品を制作している。《心ゆくまで騒ごう》(2007年)は、東西ベルリンの境界にあったビルの屋上で、ハイヒールを履いた女性たちがヘッドフォンでそれぞれが異なる音楽をききながら踊り、音楽が身体をとおしてステップの音に変わる様子を描いた作品である。本展では、本作を中心とした映像コンピレーションを展示する。
ヨン・ボック|John Bock
[1965年/グリッボーム(ドイツ)生まれ]
ボックの活動は、乱雑としたインスタレーションの中で彼自身が「レクチャー」と呼ぶパフォーマンスに集約される。そのグロテスクでコミカルに誇張されたナンセンスな世界観は、時に鑑賞者を巻き込みながら即興的に作り上げられるが、その中では日常品などキッチュな事物から作られたオブジェが中心的な機能を果たしている。本展では、東京を舞台にした新作を撮影、映像インスタレーションとして展示する予定。
ジェイ・チュン & キュウ・タケキ・マエダ|Jay Chung & Q Takeki Maeda
[ジェイ・チュン: 1976年/マディソン、ウィスコンシン州生まれ|キュウ・タケキ・マエダ: 1977年/名古屋生まれ]
2001年からコラボレーションを開始。2010年に刊行されたハンス・ウルリッヒ・オブリスト(キュレーター)のインタビュー集の翻訳と出版をアート・プロジェクトとして行った。《ダムネイション》(2004年)は、2004年ハウス・デア・クンスト(ミュンヘン)で開催された展覧会「ユートピア・ステーション」の際に行ったパフォーマンスの記録映像である。「パフォーマンスはできない」と舞台恐怖症ともとれる発言と共に映像を流して、その場を立ち去るパフォーマーに対する躊躇、困惑する観客の姿が克明にとらえられている。
フィル・コリンズ|Phil Collins
[1970年/ランコーン(イギリス)生まれ]
パレスチナ人の雇われた若者が疲れ果てるまで踊り続ける《they shoot horses》(2004年)やインドネシアなどで開催されたザ・スミスの楽曲を熱唱するカラオケ大会の記録映像《the world won’tlisten》(2004-5年)などコリンズの映像作品の多くは、グローバル化時代における特定の地域に内在する政治的、文化的事象を背景に制作されている。出品作《スタイルの意味》(2011年)においても、マレーシアにおけるスキンヘッズのグループに焦点を当て、いかに文化が受容され、変化していくかを詩的な映像や叙情的な音楽を用いながら表象し、「スタイル」の意味を問い直している。
オマー・ファスト|Omer Fast
[1972年/イェルサレム生まれ]
ファストは、代表作《Spielberg’s
List》(2003年)の作例にみられるように、歴史がどのように語られ、それを人がどのように内在化してきたかを、映画的手法を用いて体現する。出品作《キャスティング》(2007年)は、一人のアメリカ兵から聞き出した2つの物語が、インタビューの風景とそれを再現した映像で映し出される。しかし、この制作はアメリカ兵のインタビューを撮ることから始められながらも、ファストは彼の言葉を精緻に撹乱し、編集することでドキュメンタリーとしての性格を希薄化させている。
フジ・リユナイテッド(サイモン・フジワラ & カン・フジワラ)|Fuji Re-United(Simon Fujiwara & Kan Fujiwara)
[サイモン・フジワラ: 1982年/ロンドン生まれ]
サイモン・フジワラは日本人の父親とイギリス人の母親との間に生まれる。ケンブリッジ大学で建築を学んだ後、美術を学ぶ。フジワラは自分自身あるいは他者の個人史に架空の物語、しばしば同性愛者の視点から作られた物語を挿入することにより、私たちが受容している歴史がどのように構築されてきたかを明らかにする。その語りの手法はレクチャー形式のパフォーマンス、インスタレーション、彫刻や小説といった形式をとる。本展覧会では建築家である父親カン・フジワラとの日本での再会を題材とした新作インスタレーションを発表予定。
イザ・ゲンツケン|Isa Genzken
[1948年/バート・オルデスローエ(ドイツ)生まれ]
ゲンツケンは、個人の関心と社会のトレンドを絶妙なバランスで作品に取り込みながら、変化をし続ける作家である。公私ともに大きな影響を受けたゲルハルト・リヒターと出会ったデュッセルドルフ芸術大学で彫刻を学んで以来、ニューヨーク、ベルリンと移り住み、硬質で洗練されたミニマルな彫刻や写真から脆くてキッチュなインスタレーションまで、表現の幅を広げてきた。本展では近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエの高層ビル案に着想を得た《ベルリンのための新しい建築》(2001年)を出品。
カタリーナ・グロッセ|Katharina Grosse
[1961年/フライブルグ(ドイツ)生まれ]
グロッセは、これまで壁面に直接筆とエアブラシを用いて、グラフィティを連想させるような作品を描いてきた。その鮮やかな色彩とスプレーを駆使したダイナミックな造形は、表現主義的な強さと洗練された雰囲気を併せ持っている。近年では教会などの公共空間に、彩られた巨大なパネルを設置するような活動も展開しているが、本展では重層的に色彩が重ねられたキャンバスの作品に焦点をあてて、新作を公開する。
クリスチャン・ヤンコフスキー|Christian Jankowski
[1968年/ゲッティンゲン(ドイツ)生まれ]
ヤンコフスキーは、通販番組やオーディション番組など一般的に受容される典型的なテレビ番組をモデルに映像作品を制作し、マスメディアが繰り返し生産してきたイメージと現代社会における信仰が生み出す価値の真偽を批判的かつユーモラスに問いなおす。本展では、バチカンの司祭らが審査員となり、キリストのイメージに最もふさわしい俳優をオーディション形式で審議する映像作品《キャスティング・ジーザス》(2011年)を公開する。
アリシア・クワデ|Alicja Kwade
[1979年/カトヴィツェ(ポーランド)生まれ]
アリシア・クワデは、蛍光灯、時計あるいは鏡などミニマルな形態のファウンド・オブジェを効果的に組み合わせた作品を制作してきた。例えば、左右対称の同位置に傷がついた車をまるで鏡像のように提示する《ニッサン》(2009年)が彼女の代表作として挙げられる。本展では、ファウンド・オブジェクトの29体の陶器でできた人形がデュエットを組んで踊る様子を描いた新作インスタレーションを発表する。
シモン・デュブレー・メラー|Simon Dybbroe Møller
[1978年/オーフス(デンマーク)生まれ]
メラーは、20世紀における様々な芸術モデルに言及するコンセプチュアルな作品を制作する。彼の特徴は、作品とタイトル、あるいは文学表現から影響を受けたステイトメントを関係づけながら展示に組み込んでゆくことにある。本展では、カラフルなネットがキャンバスを覆う《The Catch》(2011年)シリーズから4点、ノートや本の表面にペインティングを施した《PILE》(2010年)シリーズの中から1点を出展する。
キアスティーネ・レープストーフ|Kirstine Roepstroff
[1972年/コペンハーゲン(デンマーク)生まれ]
レープストーフは、歴史的な資料から現代の広告などのポップなイメージ、新聞や書籍の政治色の強い写真まで幅広く収集したイメージを用いたコラージュを制作する作家である。カラフルなテキスタイルなどを織り交ぜた、複雑で繊細にイメージと素材が交錯する作品は、《1人の独裁者》(2007年)、《王は死んだ》(2008年)などのタイトルが示すように、しばしばイメージが持つ政治的意味合いを色濃くうつしだす。
アンリ・サラ|Anri Sala
[1974年/ティラナ(アルバニア)生まれ]
アンリ・サラは、イメージと音を効果的に組み合わせながら、自国アルバニアや旧東欧圏における歴史や、政治的問題から出発し、現在の世界の状況を鋭く批評する映像作品を制作する。出品作品《入り混じる行為》(2003年)では、屋上でDJが次々と曲をつないでいく様子が映し出されており、彼の背景となる空には様々な色の閃光が飛び交っている。それは祝祭の花火とも、戦火とも見え、見る者の想像力を掻き立てる。
マティアス・ヴェルムカ & ミーシャ・ラインカウフ|Matthias Wermke and Mischa Leinkauf
[マティアス・ヴェルムカ: 1978年/ミーシャ・ラインカウフ: 1977年。いずれも旧東ベルリン生まれ]
パフォーマンスを行うヴェルムカと、それを記録映像として撮影するラインカウフによる二人組のアーティスト・グループ。
信号で止まっているバスや電車の窓をゲリラ的に「無許可で」掃除する《Thanks Anyway》(2006年)やベルリン市街地の地下鉄網を入念に調査した後、違法で線路に侵入しトロッコで巡る《In-Between》(2007-8年)のように、ユーモラスを含みながらも都市に介入するパフォーマンスを行っている。出展作品《ネオンオレンジ色の牛》(2005年)は、ベルリンの地下鉄の線路内や橋の下などの様々な場所でブランコをゲリラ的に設置、こぐ様子を記録した映像作品である。
ミン・ウォン|Ming Wong
[1971年/シンガポール生まれ]
第53回ヴェネチア ビエンナーレにおいて審査員特別賞を受賞、2011年には原美術館で日本初の個展を開くなど、現在国際的に最も注目される若手映像作家。ミン・ウォンは、ワールドシネマの古典を用いて、社会のあるべき概念や慣習に無意識の内に縛られる現代人の心にさざ波を立たせる。本展では、イタリア映画の鬼才パゾリーニ監督の「テオレマ」(1968年)の主要な登場人物をすべて一人で演じる《明日、発ちます》(2010年)を発表する。
ヘギュ・ヤン|Haegue Yang
[1971年/ソウル(韓国 )生まれ]
ベルリンとソウルに在住のヤン・ヘギュは、プラスチック製のブラインドやネオンなどの大量生産品を用いながら、一貫して私的な記憶や個人と社会の関係性を作品のテーマとしてきた。本展では、情報保護封筒の地紋を切り取ってコラージュし、プライベートとパブリックの関係を問いかける《信頼できるもの》(2011年)シリーズから18点をインスタレーションとして展示する。
プロジェクト展示
1.空間実験研究所(オラファー・エリアソン設立)|Institute for Spatial Experiments (founded by Olafur Eliasson)
ベルリン芸術大学の教授を務めるオラファー・エリアソンが、大学の協力を得て2009年に自身のスタジオ内に設立した実験的な研究所。「空間」というテーマに対して領域横断的なアプローチを行っている。科学者、エンジニア、哲学者、建築家など様々な領域の専門家を招きレクチャーやワークショップを行っているが、ここでは、先生と学生の関係に従来のヒエラルキーはなく、対等の立場で活発な議論を展開する。映像や学生によるプロジェクトによりその活動を紹介する。
2.ベルリンの若手写真家によるベルリン・ライフ紹介
グラフィティ、公園、建築、ガーデン、クラブ等、ベルリン在住の若手写真家が撮ったベルリンの風景を通して、そのライフスタイルを紹介する。
企画: Institute for Arts and Media Administration, Freie Universität Berlin