展覧会概要

 「林檎の礼拝堂」や「こんぴらさん」の再生プロジェクトで知られる美術家、田窪恭治(1949年-)の、東京では初めてとなる包括的な個展を開催いたします。

 1968年に多摩美術大学絵画科に入学した田窪は、1970年代前半のパフォーマンスを経て、1980年代半ばまで、廃材を窓や扉の形に構成した作品を、画廊や国際展(1984年のヴェネチア・ビエンナーレ等)などさまざまな美術展で発表していました。
 しかし1987年に、再開発の進む都心のごく普通の木造住宅を構造部分まで解体し、板ガラスを張り、その上を歩くプロジェクト《絶対現場》(建築家の鈴木了二と写真家の安齊重男との協働)を実施後、フランス、ノルマンディー地方に移り住み、10年にわたり、廃墟と化していた礼拝堂の再生に取り組みます。この「林檎の礼拝堂」のプロジェクトは、すでにある建物の構造を活かした技法や風景に根付いた主題、そして住民との協働により、作品と享受者、出資者、所有権をめぐる芸術の新しいあり方を示すものとなりました。そして1999年の帰国から現在までは、四国、金刀比羅宮(こんぴらさん)の聖域全体を対象とする「琴平山再生計画」に取り組んでいます。複合的な文化遺産と長期にわたり関わる中で田窪は、「自分より長い時間を生きるであろう、特定の現場の風景を表現の対象とした仕事を『風景美術』。作家がいなくなった未来においても生き続ける表現の現場を『風景芸術』」と呼び、そのような空間的にも時間的にも開かれた活動を目指すようになりました。
 本展は、近年の二つのプロジェクトを、現地で実現したものとは別の、東京ヴァージョンというもうひとつの再生として展示し、田窪の現在の活動を紹介するとともに、出発点や転換期の仕事を通してその軌跡を紹介するものです。この展覧会が、多様な場とかたちで展開する現代の創造のひとつのあり方に触れる契機となることを願っております。

「田窪恭治展」見どころ

待望された、東京での個展
1970年代から活躍してきたにも拘わらず、この20年ほどは再生プロジェクトに関わってきたため、近年の仕事を東京で目にする機会は殆どありませんでした。ノルマンディーや琴平など、都市から距離をおく地域社会に移り住み、十年単位でひとつの仕事を実現させ、作品を享受する地元の人との交流を深めながら展開してきた活動の軌跡を紹介します。

もうひとつの再生プロジェクト
「林檎の礼拝堂」のプロジェクトで、現地では実現できなかった敷地の整備プランを、当館のアトリウムに実寸で、東京ヴァージョンとして展示します。また、「琴平山再生プロジェクト」では、自らデザインした新しい茶所(レストランとカフェ)に、磁器板による壁画を手がけましたが、本展では、墨による同スケールの新作壁画を展示します。インスタレーションはいずれも、鉄と鋳物を床に敷き詰めますので、錆色の床を踏みしめたときの独特の感触と音を通して、静かにたちあがる新たな場を堪能いただけます。

現在進行中の仕事
琴平山で2005年から手がけているオイルパステルによる襖絵は、円山応挙と伊藤若冲による襖絵のある二つの書院の間にある白書院を飾るものです。本展では田窪による襖絵《ヤブツバキ》を、現地の書院と同じ構造の建具の中に組み立て、椿の自生する庭を視野に入れた書院空間を創ります。また、琴平山の来訪者のために現在構想中の「神椿ブリッジ(仮)」のプランも紹介します。

絵画の実験
田窪は礼拝堂の壁画に取り組むにあたり、地下水からの湿気や結露を避けるため、石壁の内側に二重壁をつくりさらに鉛を貼り、何層にも重ねた顔料をノミで掻き出すという独自の技法を、探り出しました。久しく封印されていた絵画制作の扉が様々な色の線描の集結によって開かれたのです。また琴平山の緑豊かな山腹の茶所では、光を反射する白い磁器板に青い線描による葉の繁茂する壁画を有田焼の手法で実現しています。本展を期にノルマンディーのアトリエから里帰りした、壁画の模索過程を証する習作と、近年、有田で手がける磁器タイルによる絵画を展示します。

「風景芸術」まで
大学屋上での石膏によるドローイングや画廊で発表したイヴェント、過渡期に制作された手型を刻印したレリーフ、そして都市空間の中で進行した《絶対現場1987》など、制度や社会との関係を模索しながら「風景芸術」に至るまでのプロセスを紹介します。

*本展では鋳物やコルテン鋼を敷き詰めた作品の上を歩いてご鑑賞いただくため、ピンヒール等ではなく、歩きやすい靴でのご来場をお勧めいたします。

田窪恭治《多摩美術大学屋上でのイヴェント》1971 写真:田窪恭治
田窪恭治《巨船アルゴー》1983
金箔、蜜蝋、石膏、鉄、木
草月美術館蔵・東京都現代美術館寄託
鈴木了二・田窪恭治・安齊重男
《絶対現場 1987》1987 写真:安齊重男



田窪恭治《みかん》1998 顔料、鉛、板 小田原市蔵 写真:河村圭一 ©Kyoji Takubo 2011
田窪恭治《林檎の礼拝堂 習作》1996 顔料、鉛 作家蔵  写真:田窪恭治 ©Kyoji Takubo 2011
田窪恭治《林檎の礼拝堂》1999 写真:河村圭一 ©Kyoji Takubo 2011
田窪恭治《ヤブツバキ》2005- 金刀比羅宮白書院襖絵、オイルパステル
写真:河村圭一 ©Kyoji Takubo 2011



田窪恭治《神椿》2006 金刀比羅宮新茶所壁画、有田焼磁器
写真:河村圭一 ©Kyoji Takubo 2011

展覧会情報

会 期
2011年2月26日(土)~5月8日(日)
休館日
月曜日 *ただし3月21日は開館, 翌22日は休館
開館時間
10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
*電力需給状況によって開館時間等が変更となる可能性がございます。
会 場
東京都現代美術館 企画展示室 1F、B2F
主 催
公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館
特別協力
金刀比羅宮、新日本製鐵、株式会社オーク構造設計
後 援
在日フランス大使館
協 賛
清水建設、SHISEIDO
協 力
株式会社サカコー、千曲鋼材株式会社、株式会社ショウエイ、有限会社KANEHON、泉鋼業株式会社、岡山鋳物センター、
株式会社エイデン、エプソン販売株式会社、 富士フイルム株式会社、株式会社資生堂パーラー 、I B LICHTATELJEE、
深川製磁、picassoduo
観覧料
一般1,200円(960円)/ 学生・65歳以上900円(720円)/ 中高生600円(480円)/ 小学生以下無料
*( )内は20名様以上の団体料金、本展のチケットで「MOTコレクション」もご覧いただけます
同時開催の「MOTアニュアル2011」との共通券もございます
一般1,600円 学生・65歳以上1,300円 中高生800円

同時開催
「MOTアニュアル2011 Nearest Faraway|世界の深さのはかり方」
「MOTコレクション」


関連イベント

田窪恭治 公開制作
企画展示室地下2階、書院の展示室にて田窪恭治氏が襖絵の公開制作を致します。
この機会に是非ご覧ください。
制作期間:2011年5月3日(火・祝)~8日(日)
時 間 :13:00~16:00

対談 田窪恭治×宮本亜門(演出家)
日 時: 2011年4月9日(土) 14:00~16:00
会 場: 田窪恭治展 会場(企画展示室1階、地下2階)
参加費: 無料(ただし本展のチケットが必要です)
対談の様子はこちら 

ガイドスタッフによるギャラリー・トーク
日 時: 4/2(土)、3(日)、10(日)、16(土)、17(日)23(土)、24(日)、29(金・祝)、30(土)
5/1(日)、3(火・祝)、4(水・祝)、5(木・祝)、7(土)、8(日)の15時~
*3/20(日)から予定をしておりましたギャラリー・トークは地震の影響により4/2(土)から実施予定です。
参加費 無料(ただし展覧会チケットが必要です)

フロア・レクチャー
本展インターンによるフロア・レクチャー

日 時 :2011年4月15日(金)15時~
集合場所:「田窪恭治展」会場入口
参加費:無料(ただし展覧会チケットが必要です)

当館学芸員によるフロア・レクチャー     
日 時 :2011年4月22日(金)15時~
集合場所:「田窪恭治展」会場入口
参加費:無料(ただし展覧会チケットが必要です)


アーティスト

1949
愛媛県今治市で生まれる
1968
多摩美術大学絵画科入学
1971
同年より73年まで、個展シリーズ「イメージ裁判」を都内の画廊で5回開催
1972
多摩美術大学卒業
1975
第9回パリ・ビエンナーレに参加
1984
個展(フジテレビギャラリー、同画廊では86年、90年、96年にも個展を開催)
第41回ヴェネチア・ビエンナーレに日本代表として参加
1987
《絶対現場1987》 建築家・鈴木了二、写真家・安齊重男との協働
1989
ロンドンのアルメイダ劇場にて上演のオペラ「ゴーレム」の舞台美術を担当
フランス、ノルマンディー地方ファレーズに移住し、サン・ヴィゴー・ド・ミュー礼拝堂の再生プロジェクトに着手
1999
礼拝堂再生プロジェクトで「村野藤吾賞」を受賞、帰国
2000
礼拝堂再生プロジェクトに対し、フランス共和国政府より、芸術文化勲章(オフィシエ)を受賞
香川県琴平町に住み、文化顧問として「琴平山再生計画」に着手
2001
個展(愛媛県立美術館)
2004〜
金刀比羅宮の遷座祭を機に、旧社務所を高橋由一の作品の常設展示室とするなど、金刀比羅宮蔵の美術作品の調査や修復、公開を進めると共に、2005年から白書院の襖絵の制作に着手、2007年には新茶所のため、磁器による壁画《神椿》を制作すると共に建築デザインを手掛ける。
2008年にはパリ国立ギメ東洋美術館で同宮の名品展「海の聖域展」の総合プロデュース、自身の作品も展示する。2009年から「神椿ブリッジ(仮称)」のデザインと周辺の景観を整備中。


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