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オスカー・ニーマイヤー展 SANAA西沢立衛氏による作品解説⑦イビラプエラ公園

⑦イビラプエラ公園
※以下N:西沢立衛氏、H:長谷川祐子(当館チーフキュレーター)

H:それでは次は、今回の一番の目玉となりますイビラプエラ公園のモデルの方に移動いたします。

途中のブリッジにあるビデオは今回特別につくりました、「私のニーマイヤー」と題し、5人のクリエーターの方がお話しになっています。西沢さん、安藤忠雄さん、石上純也さん、藤本壮介さんといったような一流の建築家の方々、それとスタイリストでニーマイヤーファンの祐真朋樹さんにお話し頂いています。

これが大きなアトリウムの空間を活かしました、今回のインスタレーションの目玉のひとつである、サンパウロのイビラプエラ公園の30分の1の模型です。これは1954年に、市から委託を受けてニーマイヤーがデザインしたもので、もともとブーレ・マルクスが公園のデザインをするはずだったのですが、色々な意味でそれが実現できず、ニーマイヤーが複数の建物を配置する形になりました。一番重要なのがこの屋根です。柱によって支えられたキャノピー(屋根)があり、この下をみなさんが歩いたり、ローラースケートしたり、小さなキオスクが出来たり、素晴らしい場所となっています。今回パブリックな場所をつくるということに対し、建築家の役割は何であるのか、をテーマのひとつにしています。それをみなさんに共有して頂くということで、この大きな30分の1模型をつくり、グーグルマップをカーペットに転写して風景にするという大胆な方法をとっています。どのように抽象化しながら、全体の形をみなさんに共有して頂けるのか考え、靴を脱いで上に上がって頂ける趣向にしました。西沢さん、お願いいたします。


⑬ニーマイヤー.jpg

イビラプエラ公園模型(縮尺1/30)
"オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男"展示風景, 2015
撮影:江森康之

N:ニーマイヤー展に関わるというお話をいただいたときに僕が最初に思い付いたのがイビラプエラ公園で、それをこのアトリウムで作るということでした。イビラプエラ公園には何度か行きましたが、僕も妹島さんも、オスカーの建築で一番好きな建築です。カノアスの邸宅ももちろん素晴らしいですが、それ以上に好きです。やはりひとつには、イビラプエラ公園は、彼の度量の大きさというものを感じるのです。あらゆる人を包むような大きな屋根で、彼の度量の大きさ、寛容さというものが建築になっています。サンパウロのようなブラジルの大都市というのは、治安も日本ほど良くないのですが、その中でもこの公園と屋根は、人々がくつろぎ楽しむ、大切な憩いの空間になっています。

デザインとしては、カーブするコンクリートの屋根が、諸建築を繋いでいます。屋根付き公園というべきかもしれません。柱が少なくて、大スパンです。屋根はダブルストラクチャーになっていて、ものすごく分厚く、かつごついのです。重量はそうとう重く、それを安定させるために入り口あたりに大きなブレースがあって、ちょっと不自由そうというか、あと屋根が大きいので屋根の下は暗く、蛍光灯を並べていたりして、デザイン的に言っていろいろ気になるところはあるし、施工的にもいろいろ問題はあるのですが、しかし屋根は、緑の中に入って行って、どんどん高くなっていって、まるで飛行機が離陸していくような雄大さがあります。雨漏りとか蛍光灯とかブレースとか、デザインとか、そういうことは小さいことだと言わんばかりに、大きくのびやかに飛躍していく屋根で、スケールの大きさ、寛大さというものを感じます。屋根の下で子供達が遊んだり、若い人たちがデートしたりするのを見ていると、人間のための建築というのでしょうか、そういうことを感じます。見るたびに勇気付けられるし、感動する建築です。ということで、僕としてはオスカー・ニーマイヤーのなかで一番の建築で、ただそれは、やはり実際に訪れていただかないことには、よくわからないであろうと思います。

⑨ニーマイヤー.jpg
イビラプエラ公園模型(縮尺1/30)
"オスカー・ニーマイヤー展 ブラジルの世界遺産をつくった男"展示風景, 2015
撮影:江森康之

H:屋根の下には2000人の人型がいます。それから500本の木の点景が植えてあります。
このイビラプエラ公園というのは、植物の公園としても信じられないくらい生物学的多様性を持っています。そういうものをひとつに包み込むような大胆な公園というのは、何度も私も行きましたが、素晴らしい体験です。
ここはアートの祭事が沢山行われるところでもあります。一番向こうにあるのが産業館です。サンパウロビエンナーレが行われる大きな会場です。
真ん中のお椀を伏せたような形の、オッカと呼ばれる建物は3階構造になっていて、それぞれの階が六角形になっていたり、真ん中が細くなっている変形四角形になっていたり、さまざまな床の形をとりながら、独特で魅力的な形のスロープによってつながっていて、その中で展覧会を見るというユニークな体験ができるよう構成されています。向こうにある、赤い舌が出ているような建物がありますが、あれが講堂です。壁に赤い天井の写真がありますが、ブラジルに移住された日本の作家トミエ・オオタケさんとの大胆なコラボレーションが実現されています。
ひとつひとつの要素、それをつないでいくキャノピー、西沢さんは屋根付き公園とおっしゃっていましたが、とても民主的で文化的な刺激に満ち、かつ自然と交流することが出来る、ある意味で人々を守る公園。そういう多様な意味を込めて展覧会の中心にこの公園を据えたということは、ひとつのキュレーションの意図としてご理解頂ければと思います。
このキャノピーでの体験がどういうものかということは、そこで撮影された映像が奥の壁にありますので、ぜひご覧下さい。

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