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65歳からはじめる"映画"つくり!!

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2017年に65歳以上を対象に「エンディングノート」を
映像で表現するワークショップを実施しました。
高齢者の方々の生き生きとしたクリエイティヴな発想と想像力に直面し、
ぜひ、映像を用いたワークショップの続編を実施したいと思いました。

そこで、前回同様大阪のNPO、remo(特定非営利活動法人
記録と表現とメディアのための組織)に講師をお願いし、
今回は「映画をつくる」ワークショップを実施しました。
(実施:2018年12月8日、9日、16日全3回)

【1回目】
場所は、現代美術館が休館中のため
同じ江東区にある古石場文化センターで実施しました。
1回目は、参加者の自己紹介からスタート。
映画にまつわる思い出や参加動機などを伺いました。
「待ち合わせ場所はいつも映画館」
「終戦直後に学校の校庭で映画を見た」
「幼少の頃は一日中映画館で過ごした」
「自分で撮影した映像をDVDにまとめているがもう一歩踏み込みたい」
「芭蕉を紹介する映画をつくりたい」など、
みなさん映画好きということや映像を個人で撮っていることなどがわかりました。

続いて「映画って何だろう?」という話から本題がスタート。
そもそも映画とは映像によって作られた世界であるということや、
監督、脚本、カメラなどの役割分担があるということ、
そしてつくり方について講師のremoから説明がなされました。

その後、実際の映画つくりに欠かせない、構成表の作成について説明。
構成表とは、映画の設計図のようなもの。
シーンナンバー、テロップ、あらすじ、せりふ、役名、撮影場所などを決め
構成表に書き込んでいきます。
この構成表に基づいてシーンナンバー順に撮影していきます。
また、「みんなで決め」「時間を守り」「全員が出演し」「アドリブと再撮影は禁止」
という今回の撮影のルールが伝えられました。
もうひとつの特徴として、
撮影は順番に撮影していく「順撮り」という技術を使用します。
つまり、後で編集はせず撮影した順番に映像がつながって完成する仕組みです。
撮り直しをしないため失敗してもそのまま記録されます。

そして、今回の映画の大テーマが発表されました。
それは「家族」。
これは小津安二郎縁の地で実施していることから
小津映画の一貫したテーマである「家族」に由来しています。

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2チームに分かれ構成表作成の作業に入ると、
この「家族」をめぐる様々な思いが語られ、
初めて会った方々ですが、そこは人生経験豊かな参加者のみなさん、
それぞれに意見を出し合いながら時に熱い議論を交わしながら進んでいきました。
各自の役割や配役、テーマやあらすじも大方決定し、1回目が終了。

【2回目】
2回目はいよいよ撮影に取りかかります。
「緊張して眠れませんでした」「早めに家を出てきた」という方や、
家族に初回の話をしたらびっくりされたという方もいました。
また、周到に小道具を多数用意してきたつわものも!

プログラム前半は、会場となっている文化センター内の会議室や和室など
撮影に使用できる各部屋を見学したのち、
前日作成した構成表にさらにせりふなどを書きこんで
ストーリーを完成させていきました。

2チームそれぞれのストーリーを紹介すると、
ひとつは3人がそれぞれの家族の過去を振り返り、
もしも生まれ変わったらどういった人生を
やり直したいかを語るドキュメンタリー風の物語。
もうひとつは、紆余曲折あって夫婦になった後、
最後は宇宙で散骨するSF恋物語。
どちらも「死」を意識したテーマが盛り込まれているところが共通しています。
実際の撮影に入る前に講師のremoからカメラの使い方の説明があり、
その後早速撮影開始。

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リハーサルを繰り返しながら、
一発本番に望む参加者のみなさん。
緊張しながらも覚えたセリフを言い終わると、
ほっと安堵の顔に。
撮影が進むにつれ、また自分の出番が終わるとお互いに
カット割りや構図などをアドバイスする余裕も出てきた様子。
最後のシーンの撮影が終了するとどちらのグループも
自然と拍手が沸きあがりました。
完成した映画のおひろめは次回3回目のお楽しみ。

【3回目】
一般の方々にも公開し完成試写会がスタート。
講師のremoから制作に費やした2日間のワークショップの様子が
記録写真などを交え説明された後、いよいよ上映開始。

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その前に、映画つくりに携わった参加者が紹介され、
「見るのがはずかしい!」「今の自分と違う自分になりきって楽しめた」
「自分の体験からストーリーを考えた」など、
それぞれから映画を作り終えた感想が語られました。
2つの映画が上映されると、会場からは「おー!」
という驚きの声や時折笑い声がまじり盛況のうちに終了しました。

その後、一般の来場者から、「どちらの作品も胸がキュンとした」
「新しいことに挑戦しているのは素敵」「信頼関係が築かれているのを感じた」
「話し合いはどのように進められたのか?」など映画をみた感想や質問が飛びかいました。

上映会終了後は、ワークショップ参加者のみで振り返りを実施。
まず講師のremoからは、「これまでも映画つくりのワークショップをやってきたが、
死や人生の生き直しのプロセスをテーマにしたものは無かった」
「ひとつのものをあえて"みんなで"つくるプロセスを楽しむ主旨は伝わったのではないか」
とコメントがありました。

参加者からは、
「65歳以上というチラシのタイトルを見て応募した。まだまだ色々な事をしたい」
「映画にはあまり興味はなかったが65歳以上にひかれて申し込んだ」
「向上心や好奇心はまだまだあり、今やっていることを楽しんでいる」
「私たちは人生経験という色々な素材や物語を持っている」などの発言があり、
あらためて今回の応募動機や高齢者である自身の考え、
実態などリアルなご意見をうかがい知ることができました。

また、参加者からは
「美術館はただ作品を見るだけの場なのに、
なぜこうした高齢者を対象にしたプログラムを美術館が行うのか?」
という質問がありました。
社会教育機関としての美術館は、単に作品を見る場だけではなく
日頃から様々な方たち、特に今後は超高齢社会を見据え、
高齢者などにもアートに触れてもらえるきっかけとなるような
プログラムを実施していますとお伝えしました。

美術館の再オープン後も、
高齢者の方々の豊かな人生経験を活かす
プログラム作りを実施していきたいと思います。(G)

※今回のワークショップで制作した2つの映画を公開しています。

「もしも生まれ変わったら」(字幕付き)
https://youtu.be/v6azVQDDfI0

「2050年夫婦の旅」(字幕付き)
https://youtu.be/04tx2k6upqg