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2018年12月28日

みんなでつくろう!てんらんかい

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毎年11月頃になると小学校では、
図工の成果を発表する校内展覧会が方々で開催されます。
一般に、校内展覧会は体育館をメイン会場とし、
こどもたちの作品を各学年で区分けしてひとつのテーマでまとめ
展示されることが多く、展示作業もほとんどが教員の手によって行われます。

しかし、この展覧会を作るという行為そのものを授業の一環で扱い、
こどもたちが企画・展示・運営するという授業にチャレンジしたいと
依頼を受けた学校があります。
江戸川区立下小岩第二小学校です。対象は6年生39名。
(実施期間:2018年10月22日~11月26日 展覧会11月29日~12月1日)

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授業初日に学芸員が展覧会の種類や展示テーマの立て方など
実際の美術館での展覧会の作り方の概要をレクチャーしました。
次に、全校生徒の作品をくじ引きで各班に割り当てました。
この偶然手元に来た作品を見ながら展示の構想を各班で練っていきます。
実は、この学校では昨年卒業した6年生も同様に自分たちで展覧会を作る授業を
やっており、その時の展示の様子(展覧会の年ではないので、
色々な空き教室を使って展示しました)を去年5年生だった彼らは見ています。
そのためか、どの班もテーマやストーリーなどがどんどん思い浮かぶようでした。
初回に出てきたテーマは、「電車の旅」や「ウサギの恋物語」、
「天国と地獄」そして「感情」など。

次の授業でも、引き続きテーマを掘り下げストーリーや
展示の構成、作品の配置順などの話し合いを続けていきました。
また、6年生が担当する体育館展示の展覧会タイトルも
『下二100点満展』(100の00の中には目玉が描かれる)に決定しました。
見る人も楽しめ、みんなで100点満点の内容を目指す意気込みを感じます。

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さて、本格的な展示作業に入る前に、再び学芸員が作品の配置の仕方、
特に絵画作品の並べ方をレクチャー。
下揃え、上揃え、センター揃えなどを意識するときれいに見えるなど
アドバイスしました。
これまでの作業は図工室で行っていたのですが、ここからは実際に作品を展示する
体育館に場所を移し、班ごとに空間を把握し、展示で使用する演示具
(体育館にある跳び箱や平均台などの道具類も活用)なども確認しながら
再び展示ストーリーや構成を検討していきました。

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展示作業も本格的にスタート。
作品の飾り方もこちらが伝えた展示の工夫などを意識しながら配置していました。
また、体育館にある備品、例えば、平均台や跳び箱も上手く活用して展示台として
利用していました。
板段ボールも大量に用意されており、それらもフル活用していました。

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床には来場者を誘導する導線として線路の模様をかいたり、
キャラクターや手形を作ってはったりといろいろな工夫が見られました。
また、参加体験型のアイテムとして、占いやおみくじ、
顔出し看板で写真が撮れるコーナーも用意するなど
来場者を楽しませる工夫も随所に盛り込まれています。
なにより、グループでの話し合い、意見を出し合って協力しながら
活動している様子は、まさにアクティブラーニング。
展覧会当日までにコーナー解説や展示を補足するアイテムも必要。
準備はまだまだ続きます。

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さて、待望の展覧会当日、実に多くの来場者でにぎわっていました。
6年生によるギャラリートーク(展示案内)が始まると、
さらに人が集まり展示ブースごとにトークが展開されました。
展示コンセプトを語るグループもあれば、体験型のアイテム
(顔出し看板や占い、おみくじコーナーなど)に誘導する児童、
質問にも丁寧に答えている児童などあちらこちらで積極的に
案内している姿が見受けられました。
来場者も実に楽しそうに展示をめぐっていたのが印象的でした。

学校長からは「長年教員をやってきてこんなに楽しい展覧会は初めて」
というコメントをいただきました。

展覧会終了後のこどもたちからは、
「お客さんをどう楽しませるかを考えるのが難しかった」
「感動したといってくれる人もいて飛び回りたいほど嬉しかった」
「質問してくれるお客さんもいて、真剣に展覧会を見てくれているんだと思った」
などの感想があり、自分たちで作った展覧会への手ごたえを様々に感じとったようです。

また、来場した保護者や学校教員からは、
「他校と違い展示に一体感があった」
「6年生が企画・設計・運営をしたことに驚いた」
「学年を混ぜた展示方法が良い」
「大人が不必要に介入しておらずこどもたちの作品だと感じた」
「色んな世界が見られて楽しかった」
などの感想があり、こどもたちが作り上げた展覧会への評価は非常に高いものとなりました。

今回の展覧会を作るという授業は、最高学年である6年生が、
自分達の作品を含めた全児童の作品を扱い、テーマや構成を考え、展示作業、
当日の展示案内(ギャラリートーク)までを行ったとても大変な授業でした。
こうした校内展は、あまり類をみません。
もちろん学校内での管理職や他教員の理解や協力も不可欠です。
こどもたちでもここまでできるという例を示すことができ、
図工という授業の可能性をさらに広げることができたのではないでしょうか。(G)

2018年12月21日

第57回MOT美術館講座を開催!

「MOTサテライト 2018秋 うごきだす物語」の
関連プログラムとして2回にわたり、第57回MOT美術館講座を開催しました。
(当館は現在休館中のため、会場はTHE FLEMING HOUSE (10月27日)と
リトルトーキョー(11月10日)で行いました。)

1回目は、10月27日(土)に、
「アート×落語―交わることで生まれたもの」と題し、
ヂョン・ヨンドゥさん(MOTサテライトの参加作家)の
映像作品に登場する三遊亭歌司師匠の落語上演と対談を行いました。

はじめは、落語。演目は古典落語の「死神」。
演目のまくら(導入部分)では、ヨンドゥさんの作品にも出てくる小噺や
清澄白河の町に関する話なども披露され、
師匠の巧みな話芸に観客は聞き入っていました。

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落語上演後、一旦休憩。次いでヨンドゥさんと歌司師匠による対談。

まず、司会のMOTサテライト担当者から
ヨンドゥさんの活動やMOTサテライト出品作と関連がある
作品《ワンダーランド》、《A Girl in Tall Shoes》などの説明があり、
ヨンドゥさん自身からも作品の特徴について話されました。

今回、ヨンドゥさんは商店街の店主や地元小学校の児童などを
リサーチして作品を制作しており、
作品に落語を取り入れた理由や
制作過程のエピソードなども語られました。


その他、ヨンドゥさんからは歌司師匠が「死神」の演目を選んだ理由として、
「ろうそくの煤で描いた自身のドローイング作品に関連しているのではないか」など
様々なコメントをいただきました。


一方、歌司師匠からは、
ヨンドゥさんから出演の依頼があったときのエピソード紹介や
落語で複数の人物を演じるときの声の出し方の実演などがあり、
終始、和やかな雰囲気の対談となりました。


実施後にいただいたアンケートでは
「アートに対する興味が増しました。展示会場にもう一度行ってみます!!」
との声をいただき、今回の講座によって作品に興味を持っていただけたことがうかがえました。
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2回目は、11月10日に、
「MOTコレクション―保存しながら見せるということ」と題し、
MOTコレクション(東京都現代美術館収蔵作品)についての
レクチャーを開催しました。

講座では、当館事業係長が講師となり、
東京府美術館(1926年開館、1943年に東京都美術館と改称)から
移管してきたコレクション作品のことや作品の収集、修復、保存や
それに関わるエピソードなどについて作品や休館中の活動の様子を
スライドで見せながら話しました。

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修復活動の例として、宮島達男の作品
《それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く》
を挙げ、LEDで作られている作品の特徴や専門家が行った
修復作業の様子について現代美術作品特有の事例を
具体的に紹介しました。


開催後にいただいたアンケートには
「作品を保存することの苦労、様々な問題とそれらに対する取組など
おもしろいお話がきけてたのしかったです。美術館に行くたのしみが増えました!!」、
「保存にとても苦労している事を知った。美術作品をその苦労も考えながら
見たらおもしろいと思う。様々なタイプの作品があると知った」、
「東京都現代美術館にまたいこうと思えた」などの声をいただき、
作品を保存することや当館について関心をもってもらえたようです。


なお、講座では試験的に手話通訳を導入し、
実際に聴覚に障害のある方も数名参加され、
運営やアクセシビリティーについてのご意見も
頂戴することができました。

今回の講座で現代美術の作品やMOTコレクションを深く知っていただく機会となりました。(N.M)

2018年12月 3日

あたり前を見つめて

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現代美術の作品の中には、日用品を素材にしたものや、
当たり前と思っている事象を別の視点から見つめなおし、
新たな気づきや発見を促すといったものが多くあります。

今回、目黒区立烏森小学校で行った出張授業では、
そうした現代美術の表現を通じて、想像力や観察力を高め、
自分なりの見方や感じ方を深めることをねらいとしました。

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対象は6年生。2クラス合同の授業。
場所はランチルームで実施しました。
初めに東京都現代美術館について説明した後、
収蔵作家である、白髪一雄、冨井大裕、
ヤノベケンジの代表作品を紹介し、
足で絵を描く人がいることや、
スーパーボールやストロー、自動車など
日常使用するものが作品の素材となることなどを
レクチャーしました。
次いで、当館の収蔵作家である泉太郎の映像作品を上映し、
その作り方や仕掛けを考えてもらいながら鑑賞しました。

鑑賞が苦手といっていたこどもたちでしたが、
積極的に想像したことや気がついたことなどを発言してくれ、
特に泉太郎作品では、どの作品でも笑い声が上がり、
その制作方法にも関心を寄せていました。

休憩を挟み、後半の授業では、
泉太郎作品《ナポレオン》にならって、
自分たちでも同様の手法をもちいて映像作品を作ることに挑戦しました。
《ナポレオン》は、泉氏がフランスの街中を散策し
目の前の人物や木の切り株、落書きなど見つけたものに手を伸ばし、
グッとにぎってカメラの前で手のひらを広げるとそれらが
手のひらに描かれており、目の前の対象をつかみとるように見える作品です。
この作品は、あらかじめつかみ取りたい対象を手のひらに描いておくのがミソ。
あとは、あたかも対象をつかまえたかのように手をにぎったり広げたりするだけ。

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こどもたちはグループにわかれて友達同士をつかまえる感じで
映像作りをおこないました。
方法は理解していても、実際にやってみると
つかみ取るタイミングや対象との距離をとる工夫が必要で
なかなか思うようにはいきません。
しかし、だんだんと要領を得てうまく撮影が進んでいきました。

最後、完成した全作品をみんなで鑑賞。
泉氏の撮影方法にはなかった、つかみ取った後に人物が画面から消えたり、
着ていたTシャツの柄がなくなったりといったトリックめいた技を
駆使しているグループもありました。
短時間ですがあたり前に見つめている日常を変える経験ができたようです。

現代美術とこどもたちとの相性は良いと日ごろから感じています。
丁寧に現代美術の世界を伝えることで、
こどもたちはあっというまに自分たちのものとすることができます。
こうした柔軟性は、やはり小学生ならではの得意技なのではないでしょうか。(G)