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65歳からはじめよう! 映像でつくるエンディングノート

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第56回目のMOT美術館講座は、
現在当館が休館中のため
同じ江東区内にある古石場文化センターと連携し、実施しました。
企画は初心者・経験者を問わず誰もが映像を制作することのできる
ワークショップを行ってきた団体remo
(NPO法人記録と表現とメディアのための組織)の
松本篤さんにお願いしました。

テーマは「もうひとつのエンディングノート」。
対象は、65歳以上の方。
通常、エンディングノートは文章で残すものですが、
今回は、動きや表情、空気感などより多くの情報を
記録できる映像で制作し、参加者の人生を振り返り掘り下げ、
生きることに向き合うことを目標として
2日間(2017年11月23日、12月9日)実施しました。

参加者は映像でつくるエンディングノートに興味がある方や
旅行で撮った映像を編集しDVDを50枚以上制作している方、
昔、スキューバーダイビングで写真を撮っていた方など
普段から活動的な方々でした。

2日間の活動内容は、「気になる風景」、「人生の最初にみた風景」、
「遺影」と「人生の最期にみる風景」を撮影し、
鑑賞するという内容でした。

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撮影の際には、何を撮りたいのか
鑑賞者に明確に伝えることができるremo考案の
リュミエール・ルール(撮影条件)を使用しました。

このルールは、世界最初の実写映画を制作したとされる
リュミエール兄弟が「工場の出口」を撮影した際の条件に倣い、
ズーム無しの固定カメラで、1分間、無音で撮るという条件です。

なお、講師から2日目開催までに
「人生の最初にみた風景」と「人生の最期にみる風景」の
説明文を書いてくることが宿題として出されました。

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2名の方のエンディングノート作品を紹介します。
1人目は70代の男性。
「人生の最初にみた風景」は、
戦時中に見た北朝鮮やそこから引き揚げた際に
舞鶴で見たと思われる青空と雲、

「遺影」は、亡くなった奥様の横に置くため古石場文化センター
の入口にある松林で撮影したもの、

「人生の最期にみる風景」は、
風になびく枯れた植物を撮影し、大きな自然の摂理の一部として
人の一生があることを表そうとしたもの、でした。
宿題の説明文では、短歌5首で映像の世界観を表現していました。

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2人目は、60代の女性。
「人生の最初にみた風景」は、
お宮参りで初めて外に出て見た場所の象徴としての神社、

「遺影」は、植物好きの兄姉で持っている"金のなる木"を写りこませ、
兄姉が見たときに喜ぶと思い撮影したもの、

「人生の最期にみる風景」は、
若山牧水の短歌を引用し青空に飛んでいる飛行機と
ニュージーランドの天の川の写真をフェードインさせ、
死後は天の川の星の一つになって家族を見守り続けていきたいと願うもの、でした。

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今回は映像で記録しているため、
1分間という短いようで長い時間の経過をどのように表現するか、
動く雲や船などを映し、試行錯誤している様子が見受けられました。

「遺影」といえば一般には、本人がメインで背景が抜けている
写真が多いですが、参加者が撮影した「遺影」は
自分と一緒に映りこむものやそれを見る人のこと、
自分の思いを写し込む様子がみてとれました。

また、時代背景が色濃く表れているものや
テーマから考えたイメージを限られた条件の中で具現化するなど、
想像力豊かな映像になっていました。

参加された方からは、
「限られた時間の中でテーマに沿った場所を探すのは、
難しかった。エンディングノートをつくるという課題を持ち、
今後もこの経験を活かしていきたい。」

「2日間、内容が濃く、やることがいっぱいで勉強することもいっぱいと思った。」

「自分のスキルをアップさせるワークショップだった。
自分なりのエンディングノートを考えていく第一章だった。
エンディングノートは時代と共にどんどん変わっていくと思うから、
これから活かしていきたい。」
といった感想をいただきました。

2日間に及んだエンディングノート制作は、
映画がはじまった頃の手法を使用し、
映像作りを通し、それぞれの人生を考え、
死生観を表現し、これからどのように生きていくのか
前向きに捉えた講座となりました。(N)