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2017年8月30日

小笠原小学校との文通その2

5月からはじめた小笠原小学校との文通プロジェクト。
毎回こちらからお題を出して、そのお題にまつわる写真を
小学生と学芸員がお互いに撮影して交換するというものです。

さて、1回目のお題は「空」でしたが、
図工担当の教員によると、学芸員3名が撮影した都会の空に、
こどもたちは、かなり興味をもったそうです。

学芸員3名が撮影した「空」の写真はこちらです。

「鏡空」ブログ用 郷写真(小笠原小)) 006 (300x225).jpg
題《鏡空》
「全面ガラスばりのビルの壁は鏡のようになっています。
良く晴れた日には、そのガラスに空がくっきりとうつりこみ
ビル全体が空と一体になって見えます。
まるでビルの中に空があるように見えて不思議な感じがします。」


★空ブログ用_鳥居 (300x225).jpg
題《光のカーテン》
「私は夕方の空が好きです。なぜなら、
季節によって空がさまざまな色に変化するから。
ある日の夕方、多摩川の土手に行ってみると、
雲の合間から光のカーテンが広がっていました。」


ブログ用「空」吉崎(300x225).jpg
題《ふたつの塔》
「この空は、僕が住んでいるマンションの屋上から見たものです。
ここから見た景色が大好きで、疲れているときにこの空をみると、
みんなこの空の下で生活しているんだ、と思ってほっとすることがあります。
ここからは東京タワーとスカイツリーが見えますが、見つけられますか?」

こどもたちは、東京タワーやスカイツリーを探したり、
「これ○○橋だ!おばあちゃんの家の近く」「発想がいい!」など
みんなで言い合いながら、うなずきあったりしながら楽しく鑑賞してくれたそうです。

さて、
2回目のお題は「動物の目線」です。
動物になったつもりで日常を見直してみると
どんな風景がみえるでしょうか?
普段とは違った世界が発見できるかもしれません。

こどもたちが撮影した「動物の目線」の写真をこどもたちのコメントと一緒に
いくつかご紹介します。(原文ママ)

1けいた (300x225).jpg
題《図書室のどうくつ》
「この写真をとったところが図書室のすみで、
人間からみたらちっぽけかもしれないけれどクモやゴキブリからみたら
どうくつみたいだと思ってこの写真にしました。」


20げんた  (300x225).jpg
題《虫から見た世界》
「人から見たら小さく見える葉は虫から見ると大きく見えます。
ぼくはコオロギの目線になってみました。
コオロギにのって葉の上をとびたいと思いました。」


5だいき (300x225).jpg
題《人の目せん》
「ぼくは、人の目せんにしました。父島の町が見える所からとりました。
いつもぼくが見ているふうけいです。はれているときれいです。」


14ようすけ (300x225).jpg
題《アノールの目線》
「この写真はアノールの目線になってとりました。
アノールがこの葉っぱのすきまをよく通るのでさつえいしました。
中学校のフェンスでとりました。」
※アノール:グリーンアノール。小笠原諸島と沖縄諸島に生息する外来種のトカゲ。


16なつみ (300x225).jpg
題《海の生き物の目線》
「海の沖でいるかを見にいったときにおよぎながらとりました。
地上で見ているよりちかくに見えて海の生き物はこんなふうに
見えているのかと思いました。」

こどもたちは2回目のお題を心待ちにしていたようで、
お題が提示されると「待ってました!」と、
すぐに校内に散って写真を撮りに出かけたそうです。
こうした反応は、嬉しい限りです。

今回の動物の目線の写真をみると、あきらかに1回目の時よりも
構図や何を撮影するかをしっかりと一人ひとりが意識し、
考えながら撮影している様子が見て取れます。

一人ひとりのこどもたちの写真に学芸員がコメントを書いて、
学芸員が撮影した「動物の目線」の写真と一緒にまた送り返します。

そして、次回のお題は・・・それはまだヒミツです!(G)

2017年8月22日

全国盲学校図工・美術研究会に参加(2日目)

ブログ盲学校教員研修会 003 (300x235).jpg

前回に引き続き、全校盲学校図工・美術研究会の2日目の報告です。

この日は、午後から会場を東京都美術館に移し、
現在開催中の展覧会「杉戸洋 とんぼとのりしろ」を
視覚に障害のある方と一緒に鑑賞するワークショップを実施しました。
講師は「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」のみなさん。

盲学校での美術の鑑賞の授業となると触察が主ですが、
今回は、あえて作品には触らずに、言葉のやり取りだけで鑑賞してみました。
「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」のみなさんが日頃行っている鑑賞は、
メンバーでもある視覚に障害のある方を進行役にして、
作品の色や形や大きさなど「見えていること」、そして感想や雰囲気などの
「見えていないこと」という2つの視点で参加者同士が互いに言葉を交わしながら
見ていきます。

ブログ盲学校教員研修会 004 (300x225).jpg

終了後、教員の皆さんからは、

「みんなで話しているうちに見方が変わった」
「作品には言葉を生み出す力がある」
「相手を肯定することが大切」
「同じ面白さを味わうことができる」

などの感想がでました。

しかし、実際の授業で同じようにやるとなると、
難しい点もありそうです。
そもそも学校は、作品を見たい児童・生徒ばかりが
集まってくるわけではありません。
また、視覚以外の障害も抱えている重複障害の児童・生徒もいて
発話が困難な子もいます。
ですので言葉だけでのやり取りでは限界もあり、
言葉を中心としたこうした鑑賞方法が向かない場合もあるでしょう。

2日間の研究会では、各学校での実践事例紹介もあり、
一人ひとりの障害の度合いや状態を把握し、
その子にあった授業内容の組み立てが必要であるということも実感できました。

今回の研究会は、昨年教員になったばかりの若手から
来年定年を迎えるベテラン教員が一緒に参加しており、
それぞれの経験や悩みなども共有でき、
何よりも視覚に障害のある児童・生徒に対する教員の皆さんの
熱意と暖かい眼差しを感じることのできた2日間となりました。(G)

全国盲学校図工・美術研究会に参加(1日目)

ブログ盲学校 001 (300x198).jpg

この日(8月9日)東京は37℃の猛暑日!!
そんな中、全国の盲学校の図工・美術の教員のみなさんが集まり、
8月9日と10日の2日間、研究会が開催されました。
北は山形県、南は熊本県から19名の参加がありました。
場所は、都立文京盲学校。

東京都現代美術館では、スクールプログラムの一環で、
学校にアーティストが出向いて授業を行う、
「アーティストの一日学校訪問」を実施しています。
昨年は、美術家の淺井裕介さんを講師に土を使った泥絵制作や
マスキングテープを用いて絵を描く授業を展開しました。
訪問した学校のひとつに都立八王子盲学校があり、
視覚に障害のある中高生にマスキングテープを使って
いろいろな「感情」をテーマに絵を描いてもらう授業を行いました。
そうした経緯から、今回この研究会で実践事例報告を
させていただきました。

授業の流れや当日の様子、参加した生徒や教員の感想などを紹介した後、
研究会の教員の方々にも実際にマスキングテープを使用して授業でやったのと
同じ要領で絵を描いてもらう体験をしてもらいました。

ブログ盲学校教員研修会 002 (300x225).jpg

体験した教員の皆さんからは、

「小さい頃の落書きを思い出した」
「いろんな視点が広がった」
「夢中になることを実感できた」
「何をやっても正解。素材のゆるさが良い」
「全盲の子への声がけの工夫や、発達段階に応じたテーマ設定が必要」
「自分だけでやるのではなく、他の先生も巻き込んでやってもいい」
「大人数でできるのが良い」

などの感想や意見がでました。

ちなみに、授業でマスキングテープを使用する場合の
利点として次のようなことがあげられます。

1)汚れない
2)やり直しが可能
3)色に左右されない
4)はみだしても気にならない
5)線だけでなく、まるめたりすることで立体にもなる
6)一方を持ってのばすことで、つながっている安心感を生む

こうしたことなども実感していただけたようです。

この日は、他校での実践事例も紹介され、
外の暑さと同じくらい熱気に満ちた研究会となりました。(G)

2017年8月18日

こだわる仕事-美術館、学芸員、そして展覧会

ブログ都立片倉高校 01(300x225).jpg

夏休みに入る前、八王子にある東京都立片倉高等学校から
学芸員の出張授業の依頼があり、出かけました(7月11日実施)。

都立片倉高等学校には、造形美術コースがあり、
美術館で働く人や展覧会の作り方など、
美術館業務のあまり知られていない裏側を
生徒に教えることも重要との考えから、
今回の授業を頼まれました。

授業では、
美術館の機能や役割、そこである種の「こだわり」を
持って働く専門職員・学芸員の仕事についてのレクチャーを行い、
また「こだわり」をもって展覧会を作るというプロセスも
あわせて紹介しました。

レクチャーの後は、質疑応答。
「学芸員になるために必要な勉強は?」「給料は?」
「作品収集予算は?」「おススメの作家は?」などが出ました。

受講した生徒さんたちからの感想を一部抜粋してご紹介します。

「学芸員という職業を初めて聞いて、たくさん知れてよかったです。」
「自分が思ってたより大変な仕事をしてらっしゃって、
すごいと思ったのと同時にまわりの人に興味をもってもらうように
企画などを考えていてやりがいのある仕事をしていることがわかりました。」
「学芸員の仕事の一つに今日のような教育普及があるのに驚きました。
美術館に行った時もっといろいろ工夫を意識して見てみたいと思いました。
美術の世界と見る人をつなぐ めちゃくちゃイイ仕事ですね。」

授業終了後、担当の美術科教諭からは、バリエーションに富む話内容だったため、
どの生徒も飽きることなく真剣に聞いており、反応も大変に良かったと
感想をいただきました。

普段はあまり意識することない学芸員の仕事について、
興味関心をもってもらえ、お話させていただいたこちらも
嬉しい限りです。(G)