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(真の)セルフポートレートとは何か?

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昔から美術の主要なテーマとなってきた「顔」。
美術の歴史は、顔の歴史と言っても過言ではないほど、
美術館は顔であふれています。中でもセルフポートレートは、
これまで多くのアーティストが取り組んできたテーマであり、
本人の「らしさ」が思いがけない形で現れる表現形態です。


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今回は、イメージの歴史を題材にしつつ物語的想像力を生かした作品を制作し、
また古い写真の研究も行っている美術家の村上華子さんを講師にお招きし、
「イメージの物質化」を通して、美術史の主要テーマである
「セルフポートレート」を再考し、「(真の)セルフポートレートとは何か?」に
ついて考えるワークショップを行いました。
(実施日:2016年5月14日、対象:高校生以上~一般、参加人数:12名)


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参加者には、あらかじめ写真や絵などセルフポートレートを持参してもらい、
自己紹介で発表してもらいました。
その後、村上さんから様々な画像を用い、絵で描いたポートレートと、
写真で撮ったポートレートの違いは何か? 絵で描いた自画像と
最近の「セルフィー」の違いは何か? といった問いを通じて、
絵画と写真を貫く「うつす」というテーマについてレクチャーがありました。

後半は、このワークショップの要である、セルフポートレート「顔拓」作り。
絵でも写真でもなく、自らの脂分で「顔」のイメージを写し取ります。
村上さん自身、日頃からお化粧の際に使用しているあぶらとり紙に吸い取られる
自分の顔の脂を見るたびに、聖ヴェロニカの聖骸布(キリストの顔が布に浮かび上がった)
の話を思い出すとか。
そこで、このあぶらとり紙に写しとられる顔も「自画像」ではないかと思うように
なったそうです。


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小さなあぶらとり紙をのりでつないで大きな面にして、
顔面のあぶらを写しとる「顔拓」を自ら実践し、やり方を説明してくださいました。


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その後、参加者のみなさんもまずは、あぶらとり紙をつないで大きな面にして、
各自「顔拓」に挑戦しました。顔に張り付いたあぶらとり紙に脂分が染み出て、
顔が浮き出る瞬間は、ちょっとしたホラーでもあり、自分では見ることが出来ず、
その様子を見ているまわりの参加者からは驚きの声があがっていました。
自分の顔のはずなのに、なんだか違和感があり、
でもしっかりと浮かび上がっているセルフポートレートにびっくり。


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全員の「顔拓」が完成後、それらを鑑賞。
脂の出方にも個性があり、なかなか味わいのある「顔拓」がそろいました。

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鑑賞後は、美術館の普段は入れない館外で
完成した「顔拓」を使ってポートレートを撮影しました。

参加者の皆さんのアンケートには、
「セルフポートレートを通して、自分を考えるきっかけになった」
「皮脂で顔拓をするという奇想天外な試みでしたが、
これは紛れもなく自分自身の一部であり、今日という私の顔の一瞬を
とらえたものだと感慨深いものがある」
「皮脂には意思があるのではないかと他の方や自分の顔拓を見て感じました」
など、今回の顔拓体験からセルフポートレートへの考えが深まったと同時に
自分自身と改めて向き合っている様子が伝わってきました。

最後に村上さんは、自分で描いたり、撮影したりしたものばかりが
セルフポートレートなのではなく、これが私のセルフポートレートだと
感じたものが全てセルフポートレートなのかもしれませんと締めくくり
和やかにワークショップは終了しました。

参加者一人ひとりがこの体験をもとに、セルフポートレートとは何か?を
考え続けていってほしいと思います。(G)

記録撮影:川瀬一絵