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2016年5月27日

(真の)セルフポートレートとは何か?

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昔から美術の主要なテーマとなってきた「顔」。
美術の歴史は、顔の歴史と言っても過言ではないほど、
美術館は顔であふれています。中でもセルフポートレートは、
これまで多くのアーティストが取り組んできたテーマであり、
本人の「らしさ」が思いがけない形で現れる表現形態です。


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今回は、イメージの歴史を題材にしつつ物語的想像力を生かした作品を制作し、
また古い写真の研究も行っている美術家の村上華子さんを講師にお招きし、
「イメージの物質化」を通して、美術史の主要テーマである
「セルフポートレート」を再考し、「(真の)セルフポートレートとは何か?」に
ついて考えるワークショップを行いました。
(実施日:2016年5月14日、対象:高校生以上~一般、参加人数:12名)


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参加者には、あらかじめ写真や絵などセルフポートレートを持参してもらい、
自己紹介で発表してもらいました。
その後、村上さんから様々な画像を用い、絵で描いたポートレートと、
写真で撮ったポートレートの違いは何か? 絵で描いた自画像と
最近の「セルフィー」の違いは何か? といった問いを通じて、
絵画と写真を貫く「うつす」というテーマについてレクチャーがありました。

後半は、このワークショップの要である、セルフポートレート「顔拓」作り。
絵でも写真でもなく、自らの脂分で「顔」のイメージを写し取ります。
村上さん自身、日頃からお化粧の際に使用しているあぶらとり紙に吸い取られる
自分の顔の脂を見るたびに、聖ヴェロニカの聖骸布(キリストの顔が布に浮かび上がった)
の話を思い出すとか。
そこで、このあぶらとり紙に写しとられる顔も「自画像」ではないかと思うように
なったそうです。


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小さなあぶらとり紙をのりでつないで大きな面にして、
顔面のあぶらを写しとる「顔拓」を自ら実践し、やり方を説明してくださいました。


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その後、参加者のみなさんもまずは、あぶらとり紙をつないで大きな面にして、
各自「顔拓」に挑戦しました。顔に張り付いたあぶらとり紙に脂分が染み出て、
顔が浮き出る瞬間は、ちょっとしたホラーでもあり、自分では見ることが出来ず、
その様子を見ているまわりの参加者からは驚きの声があがっていました。
自分の顔のはずなのに、なんだか違和感があり、
でもしっかりと浮かび上がっているセルフポートレートにびっくり。


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全員の「顔拓」が完成後、それらを鑑賞。
脂の出方にも個性があり、なかなか味わいのある「顔拓」がそろいました。

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鑑賞後は、美術館の普段は入れない館外で
完成した「顔拓」を使ってポートレートを撮影しました。

参加者の皆さんのアンケートには、
「セルフポートレートを通して、自分を考えるきっかけになった」
「皮脂で顔拓をするという奇想天外な試みでしたが、
これは紛れもなく自分自身の一部であり、今日という私の顔の一瞬を
とらえたものだと感慨深いものがある」
「皮脂には意思があるのではないかと他の方や自分の顔拓を見て感じました」
など、今回の顔拓体験からセルフポートレートへの考えが深まったと同時に
自分自身と改めて向き合っている様子が伝わってきました。

最後に村上さんは、自分で描いたり、撮影したりしたものばかりが
セルフポートレートなのではなく、これが私のセルフポートレートだと
感じたものが全てセルフポートレートなのかもしれませんと締めくくり
和やかにワークショップは終了しました。

参加者一人ひとりがこの体験をもとに、セルフポートレートとは何か?を
考え続けていってほしいと思います。(G)

記録撮影:川瀬一絵

2016年5月26日

休館前最後の学校団体鑑賞

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本日(5月26日)、休館前の最後の学校団体鑑賞の受入れが終了しました。
今日来てくれたのは、台東区立蔵前小学校の6年生です。

この子たちは、4年生の時から現代美術館に来てくれています。

引率の図工の先生から、
「こどもたちは、現代美術館は面白い刺激をたくさんもらえる
場所だという認識が高いようです。
帰校中、『あーしばらくみられないのかぁ』と残念がる声があがっていました」
というコメントが届きました。

こどもたちも現代美術館が休館になることを知っていて、
残念がっているのは、こちらも心苦しい限りです。

学校側もこどもたちの楽しんでいる反応を見て、
自由時間を延長し、ゆっくりと展示室で過ごす時間を
確保してくださいました。

お気に入りの作品を見つけては、
友達同士で、あれこれと意見を交し合う場面があちらこちらで見られました。
われわれ学芸員が介在しなくても、こうして積極的に会話が
はずんでいるのは、何度も来館している成果なのだと思います。

学校関係者の皆様、リニューアル後も当館を鑑賞活動の場として
ご活用くださいますようよろしくお願いいたします。(G)


2016年5月25日

自分たちなりの鑑賞の仕方で

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休館前最後の1週間、館内は大変賑わっています。
展覧会は5月29日までということもあり、
学校団体の鑑賞希望も、休館前の駆け込みで、
4月、5月は例年の3倍の学校数に達しています。

そのような状況の中、今日(5月24日)は現代美術館の近所にある
江東区立元加賀小学校の3年生のみなさんが、
団体鑑賞に来てくれました。

この小学校は学校の方針で3年生以上が、
現代美術館に団体鑑賞で来ることになっています。

ご近所さんということもあり、ほとんどの子が現代美術館の存在を知っています。
でも、クラスのみんなで鑑賞する体験は今回が初めて。

あれは何だろう?これはどうなっているの?
離れてみたり、近づいてみたり、
ひっくりかえって逆さまにみたり、
自分たちなりの鑑賞の仕方で、
どんどん作品の世界に入っていきます。

そうしたこどもたちの好奇心を程よく刺激してくれるのも
現代美術のもつ力なのかなと感じます。

美術館が再開した時、成長したこどもたちに
また会えるのを楽しみしています!(G)

2016年5月 7日

芸術に会いにきた!

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4月22日と4月26日の2回に分けて、
港区立青山小学校の4年生と2年生が
それぞれ美術館の団体鑑賞にきてくれました。

学校には、昨年10月に学芸員の出張授業で訪問しており、
全校児童を対象に校内にある「自分が芸術だと思うものをさがす」授業を行っています。
今度は実際に美術館の"芸術作品"に会いにきたというわけです。

芸術さがしの印象が残っているようで、美術館に到着するや否や、
建物の外観や館内の三角形の柱、色とりどりのソファなどに反応し、
「芸術だ!かっこいい!!」とすでに大興奮。

いつものように、教育普及担当の学芸員と一緒に
MOTコレクションの作品を数点みてまわりました。

上の写真は、4年生にカーテンの奥に展示してある作品をちらっと見せている様子です。
「早く見たい!」「赤い光が見えた・・・怖い!」と、
展示室に入る前に中の作品を想像し気分が高まります。

作品一つひとつと対峙するごとに歓声を上げてくれ、
その反応にこちらもうれしくなります。

鑑賞の最後には、4年生も2年生も野外にあるアンソニー・カロの
《発見の塔》にのぼって帰ってもらいました。
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2年生は学校に帰ってから絵日記を描いたそうで、
図工の担当教員からこどもたちの絵日記が送られてきました。
このカロの作品にのぼった様子がたくさん描かれていました。

美術館から学校へ戻る帰り道、
こどもたちは、空を見上げて雲の形や建物の陰などにも反応し、
「芸術だね~」と楽しそうにおしゃべりしながら
美術館体験の余韻にひたっていたそうです。

訪問授業、そしてこの美術館での鑑賞体験がきっかけとなり、
芸術に関心をもつ気持ちがいつまでも続いてほしいと思います。(G)