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2014年12月24日

気になると、体が動く

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12月24日(水)、江戸川区立船堀第二小学校5年生の皆さん144名が来てくれました。
2014年も年の瀬。今年のミュージアム・スクールを締めくくる学校です。

100人を超える大型校なので、全体を大きく二つに分け、
教育普及スタッフによるMOTコレクション(常設展)のギャラリートークと、
先生の引率による企画展「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」展の見学の、
前後半入れ替え制で鑑賞してもらいました。

写真は、MOTコレクションを鑑賞中の様子。
うずくまって、何をしているのでしょうか?

そこは、鉛筆やシャープペンシルなどの無数の線で描いた関根直子の絵画の展示。
実は、部屋の一角で、作品にまつわる、ある"音"が流れているのです。
周囲が静かでないと気がつかないような、どちらかというと微かな音。

「何か、聞こえる...!」と、気づいたこども達。
音の正体を確かめようと床にしゃがみこみ、スピーカーの音に耳を傾けていました。

「気になる!」、「知りたい!」という内なる声にしたがって、素直に体が動く様子は、
まさに、好奇心が旺盛な証拠。
つい人目を気にしてしまう大人と比べると、羨ましくも感じます。

こども達と展示室を巡ると、些細なところでたくさんのこども達の良さと出会います。
来年も、こういった出会いや発見を楽しみにしています。
多くの皆さんのご来館を、心よりお待ちしています!
(G.I.)

※記事で紹介した"音"の正体は、ぜひ展示室で確かめてみてください。
この展示の会期は2015年1月4日(日)まで。
1月2日・3日のお正月特別開館では、なんとMOTコレクションが無料!
(12月28日~1月1日は年末年始のため休館します)

2014年12月13日

手話ナビゲーターとめぐるギャラリークルーズ

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12月13日(土)、聴覚障害のある方もない方も参加できるツアー、
「手話ナビゲーターとめぐるMOTコレクションギャラリークルーズ」を開催しました。
聴覚障害のある方10名、ない方11名の計21名が集まりました。
本企画は「美術と手話を考える会議」の皆さんのご協力の下、準備を進めてきました。

このツアー最大の特徴は、「手話ナビゲーター」の存在。
いわゆる通訳者とは少し異なる、独特な役どころです。
音声や手話で、参加者同士のコミュニケーションサポートをしつつ、
ツアーを進行します。
今回は「美術と手話」メンバーであるお二人の手話通訳士が務めました。


2グループで、MOTコレクション(常設展)の4つの作品を鑑賞。
音声や手話、身振りなど、様々なコミュニケーションの方法で鑑賞を行いました。

また、各作品に一つずつ、鑑賞の"手話キーワード"を紹介しました。

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藤本由紀夫《EAR WITH CHAIR(MOT)》での手話キーワードは〈おと〉。
まずは各自、パイプ状の作品を耳に当てて作品を体験。
聞こえてくる音や振動など、体験して得たイメージをジェスチャーで表現しました。
参加者の感想:
「あえて聞く作品で驚いたが、振動や皆のジェスチャーなどで伝わることも沢山あった。」
「〈おと〉が聞こえたので、体中がひびくような感じがした。」

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続いて、デジタルカウンターが明滅する宮島達男の作品。
ここでは、自分の身体を使って作品とリンクすることを試みました。
手話キーワードは〈脈〉。
1から9までのカウントを繰り返し続ける無数の数字は、そのスピードも様々。
各自、脈を取りながら作品と向き合い、自分の脈と同じスピードの数字を探しました。

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手話ナビゲーターの合図で、一斉に自分の見つけた数字を指差し!
参加者の感想:
「キーワードが全く想像もつかないものだった」
「視覚的に楽しめた」 「自分に身近な感じがしました」

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アンディ・ウォーホル《マリリン・モンロー》の手話キーワードは〈表情〉。
参加者に、一枚ずつ表情のマークが描かれたカードが配られます。
それぞれの表情カードは、笑っていたり、泣いていたり、怒っていたり...
カードの表情にもっとも当てはまると思う、マリリン・モンローを選んでもらいました。
その後、選んだ理由をグループ内で話し合い、互いの見方を共有しました。
参加者の感想:
「自分の気持ちや好みにハッと気づいた。自分を顧みることのできる鑑賞ってすごいと思った」

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最後の、サム・フランシスの抽象絵画は、2グループ合同で鑑賞しました。
手話キーワードは〈一緒〉。
各グループ、全員で協力して作品を身体で表現しました。
ツアーを締めくくる即興パフォーマンスとなりました!
参加者の感想:
「身体を使ってみると作品が違って見えてくる。その不思議さを体験できて良かった」
「初めて会った方々と話し合って身体表現。障害に関わらず作品として全員で表現できた」

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最後に、参加者の皆さんには記念品として"特製しおり"をプレゼントしました。
ツアーで登場した手話キーワードのイラスト入りです。
4つの手話、ぜひ覚えて使っていただければと思います。

終了後、参加者の皆さんからは、
「手話を通して、ろう者も含め、様々な見方ができる楽しみに気づくことができました」
「ワークショップ風で刺激になりました。楽しかったです!!」

「他者の存在を認めることは人の暮らしやすさにつながる。そういったことをグループワークを通してあらためて実感した」
「きこえる、きこえない関係なく参加できるところにも意義があったと思う」
「手話ができない人は参加者同士のコミュニケーションが難しそうだと思った。筆談用のボードを配っても良いと思った」
など、たくさんの感想・ご意見をいただきました。

様々な立場の人が集うことで生じる創造的な営みを大切にしつつ、
今後も、多くの方に楽しんでいただけるよう、企画に取り組んでいきたいと思います。
(G.I.)

2014年12月 5日

「カロ展を語る―カロをめぐる写真と美術館」

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今回のMOT美術館講座は、
「開館20周年記念 MOTコレクション特別企画 第2弾 コンタクツ」展の
関連イベントとして行いました。
展覧会のなかでは「彫刻とカメラの対話―アンソニー・カロ×安齊重男」
と題し、カロの作品と安齊による写真を展示しています。

アンソニー・カロ(1924-2013)は、1995年に東京都現代美術館で
個展を行った最初の作家でした。
20世紀彫刻を代表する力強く色鮮やかな作品群が企画展示室や
屋外にも展示され、安藤忠雄のディスプレイ・デザインとともに
大きな話題を呼びました。
そのときに展示された《シー・チェンジ》や《発見の塔》は、
当館の代表的なコレクションとなっています。

安齊重男氏は、1970年以降現代美術の作家や作品に寄り添い、
写真に留め、それを広く伝える仕事を続けています。
なかでも1990年からカロの依頼により
その作品を世界各地で写真におさめており、
当館でのカロ展の折にも多数の記録を残しています。
「コンタクツ」展では、こうしたカロと安齊氏の関わりを紹介しています。

1995年の当館でのカロ展を担当したのが、齊藤泰嘉氏でした。
齊藤氏は、当館の前身にあたる東京都美術館時代から
「今日のイギリス美術」展をはじめとする数多の企画展や
コレクション形成に携わるほか、現在は筑波大学で、
東京府美術館や、近・現代彫刻に関する研究を継続しています。
当日は、安齊氏と齊藤氏の対談により、多数の資料映像を交え、
「カロ展への道」、「映像でみるカロ展」、「アンソニー・カロ、人と作品」
について、語られました。

齊藤氏は、東京府美術館建設に貢献した佐藤慶太郎氏が
常設展示のある美術館を望んでいたこと、
それは、東京都現代美術館へと引き継がれ、
世界に肩をならべる美術館として、大規模な国際展や
現代美術の常設展示を行うことが使命であったことを述べました。
そうした理念が、世界に誇れるよい美術館を造ろうとする
多くの人々の協力により、「カロ展」の実現に至ったと語りました。

安齊氏は、カロとの出会いや制作現場での様子、
各地で目にした作品の魅力を語り、
自身もアートドキュメンタリストとして仕事をされるなかで、
日本の現代美術を常設展示することの重要性について強調しました。

当館でカロ展が開催されてから20年。
客席には、若い世代の方も多く見受けられました。
カメラを通してみたカロとその作品、
さらに美術館という場とカロの作品との関係について、
当事者の視点から語られたこの対談は、これまで美術館が辿ってきた
歴史とその課題を再確認し、次世代へとつなぐ貴重な機会となりました。
(事業係・F)