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2013年7月21日

地域連携と美術館への案内役“かかし”

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美術館のある深川資料館通り商店街では、
毎年「かかしまつりが」開催(9月上旬)され、
住民手作りのかかしたちが商店街を彩り、
地域住民や通りを散策する人々の目を楽しませてくれます。

また、昨年、教育普及係のキャラクター「MOTちゃん」のかかしを
高校生ボランティアに作ってもらい、商店街に設置し、商店街と美術館を
結ぶ案内看板としても機能しました。

現在開催中の企画展「オバケとパンツとお星さま」では、
タイトルにも掲げているとおりこどもたちが好きそうな
「オバケ」「パンツ」「お星さま」がキーワードとなっています。
「オバケ」をアニメーション作家の松本力さんが、
「パンツ」を画家のはまぐちさくらこさんが担当しています。

そこで、今回のワークショップでは、参加者に展覧会をより親しみをもって
楽しんでもらうことと、美術館と商店街との連携を深め、商店街から美術館に
来館するまでの道案内もかねると同時に展覧会の宣伝効果も狙い、
松本さん(下写真右)、はまぐちさん(下写真左)の両名が指導者となり、それぞれが担当する
「オバケ」と「パンツ」をテーマに、かかしを制作しました。
(2013年7月13日実施)

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今回参加してくれたのは、小学生以上のお子さんのいる18組の家族。
応募の動機をみると「家族でひとつの事に取り組める良いチャンス」
「こどもたちは“かかし”というものを知らないので、この機会に伝えたい」
「地元商店街に関われるのは、地域に暮らすものとして嬉しい」など、さまざま。

ワークショップでは、初めに展覧会場に移動し、松本さん、はまぐちさんの展示室で
それぞれから作品についてのレクチャーを受け、しばし作品鑑賞。
かかし作りのテーマとなる「オバケ」や「パンツ」のイメージを膨らませてもらいました。 

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次いで展示室から講堂に戻り、いよいよかかし作り開始。
はまぐちさん、松本さんも参加者にアドバイスやお手伝いを
しながら完成の行方を見守ります。

はじめは家族同士でどんなかかしにするか話し合うも、
様々な材料を用いながら手を動かしているうちにだんだんとかたちが明確になり、
お子さんの考えるイメージに近づけようと必死になっている親子もいれば、
親の方が真剣になって、お子さんよりも熱くなって制作に励む姿が見受けられました。

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時折、松本さんはお得意の工作で段ボール製の帽子を作って、
かかしのアイテムを提供してくれました。
はまぐちさんも参加者一人ひとりに優しく声をかけながら、
よりかわいらしくするヒントを与えていました。

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約3時間後、それぞれのかかしが完成し、参加者どうしでお披露目。
松本さん、はまぐちさんもそれぞれのかかしの完成度の高さにビックリしながら、
コメントをしてくれました。

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終了後、参加者のアンケートをみると今回の満足度は100%!
「家族での良い思い出になった」「良い雰囲気でとても楽しめた」
「商店街のかかしはこれまでもみてきたが、今回は自分たちの手で
かかしを作れて楽しかった」「道具や材料も豊富でたくさんのアイデアが
浮かんだ。あっというまに時間が過ぎた」「作家の方たちと作品を見て
からかかしを作ったのでとても楽しくできた」などなど満足な様子が伝わってきました。

今回の美術館と地域連携のプログラム。
みなさんの作ってくれたかかしが橋渡しとなり、
商店街も美術館も賑わうとよいなと思います。(G)

写真撮影:後藤武浩

2013年7月17日

鑑賞授業の可能性を考える

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7月11日、東京都教職員研修センターの教員向け研修会、
「各教育団体との連携研修 図画工作科ⅠⅡ」の一環で、
現在開催中の「オバケとパンツとお星さま」展を活用した鑑賞授業を行いました。
テーマは「図画工作科における表現と鑑賞の指導〜美術館との連携を通じて」。
授業者は、台東区蔵前小学校の図工担当教諭、堀江美由紀先生です。
堀江先生は、昨年こどもたちを現代美術館に連れて来て鑑賞授業を行っています。

なぜ、この「オバケとパンツとお星さま」を使って鑑賞授業をすることにしたのか?

一般に学校団体などが美術館に来た際の鑑賞方法として、
作品の前にこどもたちをつれていき、トーカーとよばれる人とこどもたちが
作品についてあれこれ話しながら見る、いわゆる「対話式」による鑑賞が
近年の主流となっています。

しかし、この展覧会は、1点1点の作品が独立してあるのではなく、
空間全体がひとつの作品(インスタレーション)になっているため、
じっくりと一つの作品の前で見るという鑑賞方法には正直不向きです。
しかし、そんな展覧会だからこそ、対話式以外の鑑賞方法の可能性を
探ることができるのではないか。
堀江先生との事前打ち合せでそんな提案を行いました。

また、堀江先生は展覧会のサブタイトル「こどもが、こどもで、いられる場所」という
テーマにも非常に興味を示してくれました。

それは、今回美術館でのルールを緩やかに解放し「さわったり」「はしゃいだり」を
許可しており、これによって、通常の美術館でのルールとは異なる展示室内での
こどもたちのありのままの姿、振る舞いを伺い知る事ができるのではないかということ。
これは、こどもが鑑賞するということを考える上でとても大切なことであり、
美術館と学校双方の思いが合致した点です。
(ちなみに、上記写真は、突然始まった星座ごっこ)

これらの理由から、本展覧会で鑑賞の授業を行う事になりました。

授業の内容は、実にシンプル。
3年生(68人)を美術館に引率し、初めに展示空間内で簡単なギャラリートークを行った後、
こどもたちに自由に本展覧会を鑑賞してもらうというもの。

研修に参加している先生(小・中・高・特別支援)は、鑑賞しているこどもたちの様子を見学し、
そこでのこどもたちの発言や振る舞いを観察し、こどもたちの表情や行動から
「作品に興味をもち、楽しもうする関心、意欲、態度」、
「作品や友達の感じ方のよさや面白いさに気付こうとしてるか、
自分らしい見方や感じ方を見付けているか」などを探ります。

展示室内に解き放たれたこどもたちは、一気に方々へちらばっていき、
その後を追いかける研修に参加している先生の表情も初めは困惑気味でしたが、
目の前に展開するこどもたちの自由でそして創造的な振る舞いに、
いつしか真剣な眼差しでこどもたちの様子を観察していたのが印象的でした。

今回の展覧会は、最後の部屋で大量の布をつかって自由に衣装をつくれる
(展覧会の印象を身体感覚によってフィードバックしてもらうことを狙っています)
変身コーナーを設けています。そこでも、こどもたちは思い思いに変身していました。

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授業終了後、本授業の内容について話し合う協議会と文部科学省の教科調査官、
岡田京子氏による講評が行われました。

協議会では、どこもたちを観察した様子として、
「ドキドキ、わくわくがつながっていた」「非日常を楽しんでいた」
「友達との関わりが見えた」「変身コーナーでは、自分を造形化していた」
「こどもの気持ちを解放していた」などの意見が出ました。

また授業をみることで生まれた自分の中のひらめきや感想については、
「変身コーナーの大量の布が魅力的」「中学生には幼く感じさせる展示内容かもしれない」
「カメラをもたせて、気に入ったポーズをとらせ何を感じたかみてみたい」(本展は一定条件で
撮影が可能です)などの意見がでました。

講評で、岡田氏は、
「こどもの心と身体を動かす企画であった。
こどもの興味や動きを想定した企画内容で、学校の授業作りにも似ている。
変身コーナーでは、最終的に何か作りたくなる図工室のような設えになっており、
見てきたこと(鑑賞)が作ること(表現)につながっている」と
評してくれました。

また、一見すると「ただ美術館で遊んでいるだけじゃないの?」と見えるかもしれないが、
それが「こどもにとってどんな意味があったのかを考える」ことが重要であるとも。

確かに、今回の鑑賞の授業はたからみるとこどもが楽しくはしゃいでいるだけとも見受けられますが、
こどもの振る舞いの一つひとつには必ず意味があります。
それがどのような意味があるのかを意識的に考える事は、
教員側も美術館側も非常に重要であるのはいうまでもありません。

そして最後に「評価」につても触れ、
「たくさんの評価の場面を設定して、評価に追われては意味が無い」と
おしゃっていました。

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今回の研修会は、鑑賞授業の組立て方を学ぶというよりも、こどもたちが美術館にくると
どのように振る舞い、作品と対峙するのかをダイレクトに見て感じてもらう内容でした。

一人ひとりがこども達の振る舞いを通じて、
いろいろなことを考えさせられた一日となりました。
今後、この授業を通じて、鑑賞授業の可能性がひろがっていけばよいと思います。(G)

2013年7月10日

美術館のルールを緩やかに解放!?

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もうじき夏休み。
と、その前に今月もたくさんの学校団体の鑑賞予約が入っています。
今日(7月9日)は、江東区立東川小学校4年生のみなさんが来てくれました。
現在開催中の企画展「オバケとパンツとお星さま」そして、
MOTコレクションの両方を鑑賞してくれました。

「オバケとパンツとお星さま」はこのタイトル通り
3つのキーワードで構成された展覧会。
しかも、美術館での通常ルール「はしらない」「さわらない」「さわがない」を
緩やかに解放し、さわったり、はしゃいでもOK!
(でも、MOTコレクションは、通常ルールでお願いします)

初めの展示室は、「変身コーナー」。
壁にぶら下がっている布のオブジェや、つけヒゲの中から
一つだけ選んで身に着けることができます。(選んだアイテムはプレゼント!)
写真は、変身アイテムを選んでいるところです。
みなさんいろいろな布にワクワク・・・。

お気に入りのアイテムを身につけて、
元気に展示室をめぐってくれました。
そんな楽しげな様子をみていて、小さなオバケたちが展示室いっぱいに
あふれでたようで、こちらも楽しくなりました。

今回の展覧会は、逆説的に美術館でのルールをこどもたちに
知ってもらおうという意図があります。

ですので、MOTコレクションと両方を体験することで、
一人ひとりがなぜ美術館には鑑賞のルールがあるのだろう?
と考えてもらえるとよいなと思います。(G)