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2012年5月30日

アーティストの一日学校訪問(山川冬樹さん)レポート

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昨年12月から今年3月にかけて、2011年度の「アーティストの一日学校訪問」を
都内6校(小学校3校、中学校1校、高校1校、特別支援1校)で実施しました。
訪問したのは、当館の収蔵作家でホーメイ歌手/アーティストの山川冬樹さん。
いったい、どんな授業となったのでしょうか。


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最初に、スクリーンに大きく映された「パ」の文字。
登場した山川さんは、
「今日、僕はこの“ハにまる(〇)のついた音”を使わずに授業をします。」
と語り始めました。

実はこれ、現在、山川さんが行っている『「パ」日誌メント』というパフォーマンス。
自分が発声する「パ」という音節をアートコレクターに100万円で売ってしまったため、
この授業中はもちろん、普段の生活でも山川さんは「パ」と言えないのです。
「不便じゃないの?」「なんでパなの?」
開始早々、次々と質問が飛んできます。質問に一つずつ丁寧に答えながら、
「あえてひとつの音を発しないということも、ひとつの表現になり得る」と語る山川さん。

その後、様々な機材も用いながら、“もっとも身近なメディア”、身体にまつわる音の
パフォーマンスが次々と展開されました。


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モンゴルの隣、トゥバ共和国に伝わる「ホーメイ」の実演。(左)
馬頭琴に似たイギルという楽器を手に、二つの声を同時に出す歌声が非常に特徴的です。
つづいて、ホーメイを電気的に進化させたパフォーマンス。(右)
骨伝導マイクを使い、手で額を叩く音や歯を鳴らす音をパーカッションのように響かせて
ホーメイを歌うと、思わずどよめきが聞こえてきました。


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そして、生徒の皆さんもホーメイに挑戦!
耳に手をあてて、ホーメイの技法の一つである「川のせせらぎ」の音を、自分の声から
聴きとる練習をしました。ピントを合わせるようにして注意深く自分の声に耳をすませると…
あちこちで「聞こえた!」という声が上がりました。


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心臓の鼓動をつかったパフォーマンス。(上段左)
電子聴診器で鼓動の音を増幅させ、電球の明滅とリンクさせます。
その音と光に、一同、息を飲んで見入ってしまいます。

山川さんの実演のあと、生徒の皆さんにも体験してもらいました。
ある学校では、生徒の鼓動に合わせてギターをかき鳴らし始める山川さん。
思いがけないセッションとなりました。(上段右)
またある小学校では、男の子が体育館を走って一周。(下段左)
すると、鼓動の明滅はいっそう力強くなりました。(下段右)


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二人の声を分離・合体する実験。(左)
ホース状のマイク付き装置を使って、一人が「あ~」と発声しながら、
もう一人が口パクで口を動かすと、二人の声から一つの声が生まれます。
先生の声も合体!(右)

授業の中で、「“表現”つまり表に現す前に、まずは世界をよく見ることやよく聴くことが大事」
と語っていた山川さん。
つまり、“感覚をひらく”ことが、今回の学校訪問を通して、山川さんが伝えたいことでした。

生徒の皆さんは、はじめて体験する音や光に圧倒されつつも、もっとも身近であり、そして
様々な可能性が潜む、身体を用いた表現の魅力を実感していたようです。

そうした実感をともなう授業だったためか、後日寄せられた感想にも、山川さんの表現活動
について直感的な理解を感じさせる深いコメントがたくさん見受けられました。

そして、時折「授業」という形式を超えて、まるでパフォーマーが観客と一緒につくる
「ステージ」のような一体感のある盛り上がりが印象的だった、2011年度の学校訪問でした。
(G.I)


※山川さんの『「パ」日誌メント』は、ブログ形式でウェブ上に公開されています。
http://pa-nisshi.net/blog/
(授業の様子は、2012年2月14日、27日、28日、3月2日などの記事で紹介されています)